書評

落合博満講演会2022(日本青年館ホール)

~「1+1=2」じゃなくて「=2」をどれだけ教えられるかが大事!

ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。日頃は、ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。

先日、超久々に会場開催(リアル)の講演会に行ってきました!
それがこちら。

その時のことについて、備忘録も兼ねてまとめておきたいと思います。読者の皆さんの何かの参考になれば幸いです。
落合博満さんは言わずもがなの著名人。念のため、wikiのリンク。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%BD%E5%90%88%E5%8D%9A%E6%BA%80

1.この講演会に行こうと思ったきっかけ

この講演会が開催されたのは2022年5月15日(日)
日本青年館ホール。
地下鉄銀座線の外苑前駅からは徒歩。

道すがらこういうのが目に入っちゃう私は、大のスワローズファン(ファン歴25年)。

さらに歩くと神宮球場。

この日、スワローズは広島遠征中。
日本青年館ホールは神宮球場の道路を挟んで対面にあります。
神宮球場の一塁側~ライトスタンドからもよく見えますね。

それはさておき。
「落合博満さんという人物」は選手時代から大好きで、何より有言実行の人。「契約の履行責任」の鬼。優勝請負人を地で行く方。
監督になってからも契約書に書いてあることに拘る姿勢は、私の心を捉えて放しませんでした。
野球解説も独特の着眼点で勉強になるし。そんな中、最近、出会ったのがこちらの本。

この表紙を見て、買わずにいられなかった本!!

2.『嫌われた監督』

この本の著者の鈴木忠平さんは、落合さんがドラゴンズの監督に就任された当初からずっと密着して取材を続けてこられた方。
ドラゴンズは新聞社が親会社の球団。
鈴木さんが当時所属していた会社はその親会社ではないので、なかなかドラゴンズの監督には近づけないような雰囲気があったよう。
そんな「末席記者」の鈴木さんに、落合監督がおもむろに話しかけるこのシーンが私としてはとても印象的。

 だから突然、落合が隣にやってきたことに、私の頭の中は真っ白になっていた。
 落合は私の動揺など気にもしていないかのように言った。
「ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。それを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか、わかるはずだ。そうしたら、俺に話なんか訊かなくても記事が書けるじゃねぇか」
 落合はにやりと笑うと、顔を打撃ゲージへと向けた。
 視線の先には森野がいた。

『嫌われた監督』鈴木忠平(文藝春秋)p.74

 森野のバッティングが終わると、落合は背をもたせかけていたフェンスから身体を起こした。
「一年間続けてみろ。そうしたら選手のほうからお前に訊きにくるようになるはずだ。僕のバッティング、何か変わっていませんかってな」
 落合は末席の記者にそう言い残して去っていった。

『嫌われた監督』鈴木忠平(文藝春秋)p.75

私なりのこのシーンからの学びを一言で言えば「定点観測の重要性」
スワローズファンとしての落合監督のイメージは、ベンチの同じ位置に顔色変えず、表情を殺してじっと座っているイメージ。たとえ自チームのバッターがホームランを打っても同じ。次に何を仕掛けてくるのかという恐怖感…言葉は悪いが、独特の不気味さ。

この本を読み進めていくと何となく察しがつくのですが、表情を殺してずっと「定点観測」していたんですね。
この観察眼でもって、根拠をもって、レジェンドの立浪選手をレギュラーから外す決断をしたり、「アライバ」の守備位置のコンバートをしたり…野球好きなら気になるエピソードの裏側が落合監督目線で詳細に書かれている本。
2021年の11月頃に読んだのですが、読み始めたら止まらず…2021年私が読んだ本ランキングで、ぶっちぎりの1位。
これまでの人生で読んだノンフィクション本でもベスト3。本当にオススメです。

落合監督が鈴木記者に言った「そうしたら選手のほうからお前に訊きにくるようになるはずだ」というのは思い当たる節があります(立場は違うけどシチュエーションが似ているという意味で)。
大学生の頃、私自身、ちょっとは真面目に勉強しないとと考えた時期があって、履修していたすべての大教室の講義を、教卓の前の席(一番前)に座って受けていた時期がありました。
夏休みが明けたころになると、先生の方からおもむろに私に近づいてきて
「今日の授業分かりやすかった?」
「どのように改善したらいいかな?」
と訊きにきてくださるようになり、色々とコミュニケーションしたことが今の礎になっている部分もあるなと。
当時は、先生に訊かれた時に備えて、おこがましながらも「改善点」を常に考えるようにしていたことが、契約書はもとより、セミナーやラジオの「コンテンツづくり」に役に立っています。

この私の「勝手に定点観測グセ」は今も続いていて、(人間関係ができ上がっている場合には)時折フィードバックさせていただいたりすると感謝されたりもするので、今後も「定点観測」を大事にしていきたいと思い至った次第です。
契約書関連の仕事をする上でも「定点観測」は非常に重要ですし。

3.講演会での学び

前置きが長くなりすぎました…読者の皆さん、すみません。
TOKYO FMのラジオCMで知り、落合さんの話をリアルで聴くことにより、上記のような定点観測手法、観察眼の一端を何か感じられるのでは?と思い、速攻申込み。

ビジネスにも応用できるのでは?と私が感じた話の中から、3つほどピックアップしてみます。
録音を取っているわけではないので一言一句合っているわけではありません。
「こんなお話をされていた」という感じで受け取ってください。

なお、野球界の面白話が多数。例えば近ごろ話題沸騰の某審判に対する見解など。ただ、この講演会は、まだ続編があり、ネタバレになってはいけないので、この場では控えます。ご興味のある方は個別にご質問くださいw

さて、ビジネス系の話にまいりましょう。

チームから暴力がなくなるまで「5年」、オレの野球に対する考えがチームに浸透したなと感じたのは辞める直前だから「8年」かかった。教育ってこういうものじゃないの?時間がかかる。

2022年5月15日落合博満講演会(日本青年館ホール)より

あの球界のレジェンド落合さんをもってしても、組織全体にトップの考えを浸透させるのには長い時間がかかるんだーと感慨深く。

監督・コーチは練習内容やアドバイスが、本人に合っているのか常に考えないといけない。
「1+1=2」じゃなくて「=2」をどれだけ教えられるかが大事なんじゃないか?引き出しを多くするために選手以上に勉強しないとダメだよ。

2022年5月15日落合博満講演会(日本青年館ホール)より

これは少し補足をすると、「=2(イコール2)」を導く式(プロセス)は、
1+1、0+2
4-2、10-8
2✕1
4÷2
…と無限に考えられる。
「1+1=2」は、コーチにとってはベストなプロセスかもしれないが、選手(教えられる側)にとっては、そうではないかもしれない。
選手に求められるのは「結果」(=2)だけなので、選手の「生活権」を守るためにも、監督・コーチは勉強をし続けて、引き出しを多く持つ責務があるというお話。
なるほどなーと、このお話が一番刺さりました。
『嫌われた監督』を読んだときも感じましたが、落合さんって本当に優しい方なんだなーと。

ペナントレース143試合、「4勝3敗ペース」でいったら、最終的にどうなる?
そう。貯金20くらいになる。普通の年なら優勝できる数字。
7試合で貯金1。そう考えれば野球楽にならない?
全部勝つなんて、プロの世界では無理なんだから、足し算引き算で考えないと。

2022年5月15日落合博満講演会(日本青年館ホール)より

この「目先のことにとらわれるのではなく、中長期的に冷静かつ俯瞰的な視点で捉える考え方」は、ビジネスにおいても大事だし、こういうことを忘れると、致命的な失敗を犯すなと。

4.さいごに

ご参考までに、この講演会での私の手元メモの一部

・モリシゲさんとはアマ時代に交流有り
・打順は4番から決める。アメリカでは3番or2番最強説があるが、私(落合さん)の頭はこの点は進化しておらず、4番はスーパースターじゃなきゃダメ
・選手を嫌いになることはない(勝つために支配下選手をいかに上手に使うかしか考えてない)
・キャンプから「6勤1休」ペース。マスコミから批判されたが、キャンプからレギュラーシーズンと同じスケジュールでやらないで、秋口の勝負所で体力もつ?結局最後は体力勝負
・監督は選手の「ちゃんと練習やってる」をジャッジする人。誰かがジャッジしないと選手も頑張れない
・最近の選手はストライクを振らない。ストライクを待てない?
・プロ野球で活躍できたのはたまたま

手元メモ

この講演会の後半は、森繁和元ヘッドコーチ(のちドラゴンズ監督)と川崎憲次郎さんを交えたトークセッションも。
モリシゲさんウイットに富んだユーモア。周囲への気遣い。一気に魅せられました。
モリシゲさんは、コワモテな風貌らしからず(失礼)、選手からの人望が厚く、特に外国の選手から慕われてることは知っていましたが、わかりますねー。
モリシゲさんが登場されると、会場がパッと明るくなるし、落合さんもとても楽しそうにお話しされる。第三者では分かり得ないお二人の信頼関係なんでしょうね。
こういうのはリアルじゃないと感じられないので、行ってみて本当に良かったです。落合さん差し置いて、モリシゲさんのファンになっちゃいましたw

最後まで、お読みくださりありがとうございました。

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