印紙を貼り忘れると3倍のペナルティーが科されることも!
ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。日頃は、ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。
1.はじめに
行政書士として、また、契約書関係のセミナー・研修として、「印紙」に関するトピックに対する関心の高さが伺えます。
契約書を製本する際に実際に手を動かす箇所であることから
「契約書=印紙が必要」
と思われている方も多いようです。
2.契約書への印紙は200円でOK?
「契約書への印紙は200円でOK」
こう思われている方も結構いらっしゃいます。果たしてそうでしょうか?
この問いに関しましては、当方が執筆しました、NPO法人さいたま起業家協議会の「起業家コラム」にまとめておりますので、以下のリンク先をご参照ください。
3.印紙税の歴史
上記リンク先でも触れましたとおり、印紙は「税金」です。これが歴史のある税金なのです。興味深い記事がありましたので、ご紹介します。
世界で初めて印紙税を導入したのは1624年のオランダ。スペインとの独立戦争で財政が逼迫し、税務職員、ヨハネス・ファン・デン・ブルックが発案。その後、欧州各国に広がった。日本では1873年に導入された。近代日本が「輸入」した税制の第1号とされる。米国は英国植民地時代の印紙税導入が「代表なくして課税なし」との反発を生み、ボストン茶会事件などの独立運動につながった。英国は今も不動産購入時に印紙税があるが、ドイツは1992年に撤廃した。オランダも廃止済みだ。たばこなどの嗜好品に類似の税を課す国もある。印紙税が残る国でも課税対象は限定的で、日本のように20種類もの幅広い文書に課税する例は珍しい。
日本経済新聞2021年5月16日付朝刊
印紙税が日本に導入された1873年は、和暦で言えば明治6年!
実に歴史のある税金です。
ちなみに「20種類もの幅広い文書に課税する」とあるところの20種類については、こちらのリンクをご参照ください(国税庁ホームページ/『印紙税額一覧表』)。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
4.デジタル化と印紙
上記日本経済新聞の記事に興味深い記載がありました。
日本百貨店協会によると会員企業(74社、179店舗)全体の税負担は年20億円程度。担当者は「個人の生活に付随した文書まで課税する国は稀有(けう)だ」と話す。
日本経済新聞2021年5月16日付朝刊
銀行通帳にも印紙税がかかる。銀行業界全体で少なくとも年600億円以上の負担で、みずほ銀行が新規の通帳発行1冊につき1100円の手数料導入を決めた背景の一つに税負担がある。デジタル通帳なら印紙税は不要だ。アナログへの”ペナルティー”のような税がデジタル化を後押しする皮肉な構図がある。
「紙」で契約書を作ると印紙を貼って印紙税を納めなければならないというきまりのため、デジタル化(電子契約)が進んでいるという側面もあるようです。弊所でも、電子契約導入のご相談がここ最近増えてきています。
5.さいごに
本稿では印紙に関する基礎知識をまとめてみました。
印紙を貼り忘れてしまった場合のペナルティーは重いです(3倍)。
印紙による納付の方法によって印紙税を納付することとなる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち不納付税額の3倍)に相当する過怠税が徴収されることとなります。
『印紙税の手引(令和3年5月)』(国税庁)p.16
以下リンク先にある国税庁発行の『印紙税の手引』を参照するなどして、慎重に対応していきたいものです。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/tebiki/01.htm
なお、こちらの『印紙税の手引』はしばしば更新されますので、上記リンク先にかかわらず、最新版を参照するようにしてください。
6.音声解説
上記につきましては、音声配信アプリstand.fmの「契約書に強くなる!ラジオ」でも解説しております。
こちらもぜひご参照ください。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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