ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)のほか、コミュニティFM局の構成作家兼パーソナリティとしての活動もさせていただいております。
「製作」と「制作」
契約書は「あとあと疑問や異議が生じない」表現が求められますので、言葉の用法についても厳格さ、厳密さが求められます。
とりわけ、同音異義語には留意する必要があります。
最近、契約書のチェックをしていて気になったのが「制作」と「製作」。
弊所では、法律用語に関しては、
『契約用語使い分け辞典』日本組織内弁護士協会監修(新日本法規)
法律用語ではない言葉は、用字用語集としてはポピューラといわれている
『記者ハンドブック』(共同通信社)に準拠し、上記2冊に掲載が無い場合には、『大辞林』(三省堂)に依っています。
前置きが長くなりましたが…「制作」と「製作」。
上記『記者ハンドブック』を紐解きますと、
=制作〔主に芸術的・ソフト的なもの〕絵画・工芸品の制作
『記者ハンドブック』第14版 p.295
=製作〔主に具体的・実用的なもの。量産する場合〕機会・器具の製作
となっています。
ですので、
▼IT、コンテンツ系の契約書は「制作」
○ソフトウェア制作委託契約書
○コンテンツ制作委託契約書
▼製造業系の契約書は「製作」
○試作品製作委託契約書
○量産品製作委託契約書
こういう棲み分けになると思われます。
「業界用語」には注意!
以前、映画関係の契約書の起草をしたとき、コンテンツの話なので自信をもって「制作!!」で統一したところ、
ご依頼者様から、
「ウチの業界では『せいさくは衣』だよ。『制作委員会』は『製作委員会』とするのが一般的」
とのご指摘。
ふたたび、上記『記者ハンドブック』によりますと、以下の通りのとおりの注意書きが。
〔注〕放送番組は「制作」、映画は「製作」が一般的。「○○製作(制作)委員会」など固有名詞は名称通り書く。
『記者ハンドブック』第14版 p.295
この「映画業界『製作』事件」以来、業界用語について、神経質なくらいご依頼者様や辞書、業界団体などの信用のおけるWebサイトで確認するようになりました。
ご依頼者様との間で業界用語を深掘りディスカッションしていくと、当該業界特有のリスクが浮き彫りになるなど、より良い契約書作成のためのヒントが見つかったりすることが多いので、この事件からの怪我の功名でしょうか。
ちなみに「制作」と「製作」について『新明解類語辞典』(三省堂)にて「周辺の言葉」を拾ってみますと、
「文芸」
『新明解類語辞典』
創作
制作
著作
著述
述作
…
「製造」
『新明解類語辞典』
量産
多産
増産
減産
国産
製造
製作
作製
作成
製する
…
ということで、上述の
IT、コンテンツ系の契約書は「制作」
製造業系の契約書は「製作」
のざっくりとした区分けでOKそう。
「制」か「製」か迷わないように『製造の製』と覚えておけばよさそう。
以上、契約書に関するマニアックな話でしたw
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