契約書

契約書が読みづらい原因

~契約書内での曖昧な表現、ハッキリしない箇所の放置はトラブル直結!!

ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。日頃は、ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。

1.はじめに

・契約書って何が書いてあるか分からない!
・契約書って読む気にならない

読者の皆さんも「もっと契約書が読みこなせたらなあ」と思われることはないでしょうか。

かくいう私自身も、契約書にかかわる仕事をはじめて20年になりますが、当初は「契約書の読みづらさ」に辟易していました。しかし、契約書が読みづらい原因に気づいて、それを解消すべく自分なりに努力をして、少しずつ読めるようになってきました。

今回は、契約書が読みづらい原因について考えてみましょう。

2.契約書は「何のために」あるのか

契約書は「何のために」ある文章でしょうか?

良く言われることとして、
・言った言わないのすれ違いがないようにするため
・トラブルを防止するため
・裁判での証拠にするため
…etc

それぞれにおいて正しいですが、一側面に過ぎません。

まず、世の中にある色んな文章の辞書的な意味から。

【小説】
人の生き方や社会、科学、芸術など、いろいろなテーマについて、作者の考えを物語の形で書きあらわした、散文体の文学作品。

『三省堂国語辞典(第8版)』

【新聞】
新しいニュースや読み物などを(大きな)紙にぎっしり印刷して、定期的に〔おもに、毎日〕発行するもの。また、その内容をインターネットで配信するもの。

『三省堂国語辞典(第8版)』

【契約】
法律上の効果を持つ約束。

『三省堂国語辞典(第8版)』

ざっくりと意訳すれば、

小説=心に訴えかけて主に感動を与える文章
新聞=事実を正確に伝える文章


といったところでしょうか。

一方、契約書はどうでしょうか。小説とは全く異なるものですし、新聞のように事実を伝えるという面では似ていますが、たくさんの人に伝えるための文章ではありません。

思うに、契約書は、
「当事者間で疑義が生じないようにするための文章」

「事実を伝える」に+αの要素があるのです。

3.契約トラブルの原因

「当事者間で疑義が生じないようにするための文章」をもう少し分かりやすく言い換えれば、
「商談成立時のお互いの気持ちを凍結保存しておくための文章」となるでしょうか。(これでも分かりづらかったらすみません。)

「疑義」難しい言葉ですね。辞書的な意味を確認しておきましょう。

【疑義】
文章などの内容や意味についてはっきりしないことがあること。

『三省堂国語辞典(第8版)』

「ハッキリしないことを無くすこと」これが契約書の目指すところです。

したがって、「契約書文法」とも言えるような、独特の構文、文章表現が使われているのが、上述の読みづらい原因となっているように思われます。

例えば、

「甲は乙に対して、『きれいな』本件商品を『できるだけ早く』納入する」

という文章が契約書の中にあったとしましょう。

何が問題か。

『きれいな』『できるだけ早く』何となくの雰囲気は掴めます。しかし、「何をもってきれい」とするのか、「できるだけ早くとは具体的にいつなのか」その基準が不明確です。ハッキリしていません。

・売主:『きれいな』本件商品を納入したじゃないか!
・買主:いや『きれいな』本件商品を納入したと本気で思ってんの??

(発注日が4月1日として…)
・売主:『できるだけ早く』は今月末の4月30日です
・買主:いや何言っちゃってんの?『できるだけ早く』は明日4月2日だ!


笑い話ではなく、こういったやり取りが引き金になって、契約トラブルに発展してしまうことが、非常に多いのです。

4.「契約書文法」の独特さ

契約書では、人によって解釈が異なる箇所を徹底的に排除します。
上述を「契約書文法」を使ってリライトすると、以下のような文章になります。

「甲は乙に対して、別紙仕様書で合意した内容の本件商品を4月30日までに納入する」

「きれいな」の内容について別紙仕様書で事細かに定義するとともに、納期についてもキッチリと書いておく。やや「まどろっこしさ」があるもののこれが非常に重要です。

日本語は感覚的な表現に優れた言語のように思います。特に形容詞、副詞的な表現がたくさんあり、たいていのことは事細かに言わなくとも「だいたい」伝わります。

しかし、契約書の世界、特に大きなお金が動くビジネスにおいては、この「だいたい」はトラブルの元。絶対にNGです。

契約書を読み込むコツとしては、上述を踏まえまして、目の前の取引が「正確に」言語化されているものだとご理解いただき、契約書の表現と、現実の取引とを都度照らし合わせて、実地で理解していくことが、急がば回れではありませんが、一番の近道のように思います。

5.「甲」「乙」が難しい

やや裏技的な話にはなるのですが、契約書で双方当事者の略称として使われている「甲」「乙」
これを例えば「当社」「お客様」などに、置き換えると驚くほど読みやすくなります。

ワープロソフトの一括変換の機能を使えば、一発で変換できますから、ものは試しでぜひやってみてください!

6.音声解説

stand.fm(スタエフ)「契約書に強くなる!ラジオ」にて音声解説をしております。こちらにつきましてもぜひお聴きください!

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