契約書

「契約書に強くなる」には?

ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。
ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。

1.はじめに

このブログのタイトル「契約書に強くなる!」は、色々な方から「契約書に強くなるためのコツを教えてください!」というご質問をいただくことが多いため、そこからとっています。
先に結論を申し上げれば
「とにかく契約書に触れる機会を増やす」
「一つ一つの契約書をよく読み込む」

これに尽きると思います。

2.「契約書に強い」とは?

ここで「契約書に強い」とはどういう状態を指すのか?
私が思うに、まず、自社(自己)が契約書の素案を作成するシーンでは、
・自社にとって有利な契約書を作成できる

逆に、相手から契約書の素案が提出されてくるシーンでは、
・(契約書独特の言い回しを含め)正確に解釈ができ、
・自社(自己)にとって有利か不利かを見極められ
・対案を作成できる

こういったことを指すのではと考えています。

3.ポジションによって有利な条件はこれだけ違う!

契約書は何が難しいかといえば、同じ条項でも「ポジション(お金をもらう側、お金を払う側)」によって、有利な条件が全く異なることです。

読者の皆さんにとって身近なところで言えば、物品の売買基本契約における「受入検査」の条件は一般的に以下のような条件になっています。

第●条(受入検査)
買主は、売主が本件商品を納入する都度、受入検査を実施するものとする。

例えば、これを売主(お金をもらう側)にとって有利な条件とするには、通常は以下のような対案とすることとなります。

第●条(受入検査)
1.買主は、売主が本件商品を納入する都度、受入検査を実施し、数量過不足または不合格品を発見したときは、5営業日以内に売主に通知するものとする。なお、当該期間内に買主から何らの通知がないときは、売主が納入した本件商品の受入検査は終了したものとみなす。
2.受入検査の対象、方法、合否の基準等検査に関する詳細事項は売主が定めるところによる。

売主(お金をもらう側)としては、
・受入検査の期間を明確にする(上記では5営業日)
・期間内に買主から何らの通知が無い場合には、受入検査終了とみなせる(≑請求書を発行できる)

最低限このことについては触れておきたい。
なぜならば、売主(お金をもらう側)としては、「現金を早めに振り込んで欲しい!」と思うのが普通ですので、上記については、できるだけ疑義がないように詳細に定めたい。

逆に、買主(お金を払う側)にとって有利な条件は、通常は以下のようになります。

買主は、売主が目的物を納入する都度、速やかに受入検査を実施し、数量過不足または不合格品を発見したときは、直ちに売主に通知するものとする。この場合、受入検査の対象、方法、合否の基準等検査に関する詳細事項は買主が定めるところによる。

買主(お金を払う側)としては、「マイペース」で検査をしたい、支払いたい(下請法について議論は除外)と思うのが通常ですので、売主(お金をもらう側)とは逆に、できるだけ曖昧にしておきたい。

以上のごとく、売主、買主といった「ポジション」によって、同じ条項でもニーズが全く異なるのです。

ちなみに、市販の契約書に関する書籍等では、上述の「受入検査」についての解説がスルーされてしまっていることが多いのですが、上述の通り、企業経営において生命線ともいえる「キャッシュフロー」に多大な影響を与える契約条件ですので、実務上極めて重要です。

「ちゃんとした製品を納期に納めているのに、なぜか儲からない」原因が、ここらへんにあることが多いので、キャッシュフローと重ね合わせて契約条件を練っていくことが重要です。

4.「契約書に強くなる」ための近道は?

上記の「ポジション」を意識し、
「とにかく契約書に触れる機会を増やす」
「一つ一つの契約書をよく読み込む」

ことを繰り返していくことなのではないか?と思われます。

これに加えて、契約書を「レゴブロック」のようなものと捉え、色々な契約条件を「ブロック」として蓄積していく、イメージを持たれると良いかもしれません。
個別案件に向き合う際、ストックした「ブロック」を頭の中から自由自在に引っ張り出して来られるようになれば、もはや契約書博士です。

いずれにせよ、「近道は地道な積み重ね」といったところでしょうか。

私自身も、まだまだ契約書博士にはほど遠いと認識しておりますので、謙虚に学び続けていきたいと思っております。

5.音声解説

stand.fm「契約書に強くなる!ラジオ」では上記についての音声解説をしております。
文字だけでは表現できない微妙なニュアンスを気取らずにお伝えできるのが音声配信の魅力です。
「ながら視聴」でも知識を得ていただけるようにお話ししておりますので、一度お聴きいただければ幸いです。

最後まで、お読みくださりありがとうございました。

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