~取引は「生き物」結びっぱなしの契約書はトラブルの元!!
ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。日頃は、ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。
1.はじめに
行政書士として契約書を作成する際に、「締結済み契約書」(ハンコが押してあったり、サイン済みの契約書)を拝見する機会も多いのですが、
・ずいぶんと昔に取り交わした契約書だな…
・契約書の書いてあることと、実際の取引で行われていることは果たして一致しているのだろうか…
と感じることも多いです。
「結びっぱなしの契約書」
これがもたらすデメリットや解決方法などについて考えてみたいと思います。
2.結びっぱなしの契約書がもたらすデメリット
「締結済み契約書」は、
契約書を取り交わした日(契約締結日)のお互いの共通認識
が取りまとめられているものです。その時のお互いの気持ちをビジネス上の約束として「凍結保存」しておくために、契約書という形式を採用したと言い換えられるかもしれません。
一方、現実に行われる取引は「生き物」です。
お互いの担当者が変わったり、何より、昨今の激変するビジネス環境下では「取引のしかた」も日々刻々と変わりゆくというのが通常です。
結びっぱなしの契約書がもたらすデメリットとしては、
・取引実務が円滑に行われなくなる可能性が生じる
・「契約書に書いてあることは絶対に守らなければならない」が大原則のため、解釈をめぐってトラブルに発展する
などが考えられます。
したがって、円滑な取引やトラブル防止のため、契約書は結びっぱなしにせず、適宜アップデートするのをオススメします。
3.契約書のアップデートの方法
契約書のアップデートの方法としては、主に、
①契約書を結び直す(巻き直す)
【メリット】
管理しやすい 等
【デメリット】
相手や自社内での調整に時間がかかる
印紙代が再度発生する 等
②現状の契約書はそのままにして、アップデートする箇所に特化した変更契約書(覚書の形式を採ることもある)を取り交わす
【メリット】
「現状の契約書の枠内」での話なので相手や自社内での調整が比較的容易
印紙代の節約に繋がることが多い 等
【デメリット】
「現状の契約書」と「変更契約書」の2つを付き合わせないと現状の契約内容の全容が
把握できず、管理が大変 等
が考えられます。
上記の通り、それぞれに良し悪しがありますので、
・アップデート箇所はどのくらいあるのか
・アップデートに伴う取引実務への影響度
などから鑑み、ケースバイケースで判断していくこととなります。
4.具体的なアップデートのポイントは?
・アップデートの必要性が生じやすい箇所
・メンテナンスの具体的方法
その他
につきましては、音声配信アプリstand.fmの「契約書に強くなる!ラジオ」にて解説しております。
こちらもぜひご参照ください。
5.おわりに
契約書は「凍結保存」のツールでもあり、取引実務の視点ではお互いの「ルールブック」でもあります。
ルールと現実の不一致を放置すると「歪み」となり、その歪みを放置すると、お互いの担当者の不満の原因となり、それが蓄積して会社同士でのトラブルに発展してしまうケースもままあります。
契約書は、相手との間で円滑に取引を行い、良好な関係を継続していくことでお互いのビジネスを発展させていくために取り交わすものともいえるのではないでしょうか。
そのためにも、契約書の内容を法的にも取引実務的にも一致させるておきたいところです。
上記をご参考に、定期的な契約条件のアップデートを心掛けるようにしていただければ幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。