※本記事は、実務でのご相談内容や取引環境の変化を踏まえ、
2025年12月30日に内容を見直し、加筆修正した【2026年版】です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.なぜ同じ契約書なのに「有利・不利」が分かれるのか?
- 2.契約書の強さは「定義付け」で9割決まる
- 3.「一切」「適切」「業務一式」が招くズレ
- 4.定義とは「解釈の幅を凍結する作業」
- 5.秘密情報の定義でここまで変わる
- 6.定義を制する者が、契約を制する
- 7. 定義力は一朝一夕では身につかない
1.なぜ同じ契約書なのに「有利・不利」が分かれるのか?
- 同じような契約書なのに、なぜか揉める
- 条文は入っているはずなのに、現場が回らない
- 「そこまで想定していなかった」と後から気づく
こうしたトラブルの多くは、
条文の有無ではなく「定義の差」から生じていることが多いという現実があります。
2.契約書の強さは「定義付け」で9割決まる
先に端的に結論を言います。
強い契約書かどうかは、用語の定義付けで9割決まります。
どれだけ立派な条文を並べても、
前提となる言葉の意味が曖昧であれば、
その契約書は「使えない契約書」です。
3.「一切」「適切」「業務一式」が招くズレ
実務でよく見かける表現です。
- 「本業務一式」
- 「一切の情報」
- 「適切に対応する」
日本語としては自然ですが、
契約書の世界では危険な言葉です。
なぜなら、
読む人によって解釈が変わる余地が大きすぎるから。
4.定義とは「解釈の幅を凍結する作業」
契約書の役割は、
「トラブルを防ぐこと」ではありません。
より正確には、
当事者間で解釈のズレが生じないようにすること
です。
私はよく、契約書をこう表現します。
契約書とは、商談成立時の認識を“凍結保存”する文章
そのために不可欠なのが、
用語の定義付けです。
5.秘密情報の定義でここまで変わる
たとえば、秘密情報条項。
▼ 定義を丁寧にしている例
甲及び乙は、本契約に関連して双方が開示する営業上又は技術上その他一切の情報のうち、
相手方に対して秘密である旨明示して開示した情報及び、
性質等に鑑みて通常秘密情報として取扱われるべき情報
(以下「秘密情報」という。)を、
善良な管理者の注意をもって保管・管理するものとする。
この場合、
- 何が秘密情報か
- どのように表示すべきか
が比較的明確です。
▼ 定義を雑にした例
甲及び乙は、本契約に関連して双方が開示する営業上又は技術上その他一切の情報
(以下「秘密情報」という。)を、
善良な管理者の注意をもって保管・管理するものとする。
一見シンプルですが、
- 「一切の情報」が秘密情報になる
- 受領側の管理負担が極端に重くなる
など、実務上はかなり厳しい契約になります。
このように、
定義次第で、有利・不利は簡単に入れ替わる
のが契約書です。
6.定義を制する者が、契約を制する
- 契約書は条文の数で強くなるわけではない
- 曖昧な言葉を放置した契約書は、必ず揉める
- 定義付けとは「言葉の解像度」を上げる作業
言い換えれば、
定義を制する者が、契約を制する
ということです。
契約書とは、
取引の解像度を上げ、
ビジネスを前に進めるためのツール。
その出発点が、
用語の定義付けにあります。
7. 定義力は一朝一夕では身につかない
契約書を「つくる」仕事に携わって約23年
(法務部11年+行政書士12年)。
実感として言えるのは、
定義力は一朝一夕では身につかないということです。
ネット上には便利な情報が溢れていますが、
正確性と明確性が求められる契約書では、
出所のはっきりした辞書や書籍に触れ続けることが、
遠回りに見えて、最も確実な近道だと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。











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