ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. はじめに
- 2. 「金の切れ目が縁の切れ目」──残念ながら…本当です
- 3. 基本原則:「個人間でお金の貸し借りはしない」がベスト
- 4. それでも貸す必要があるなら「必ず書面で残す」
- 5. 念書とは?契約書とは何が違うの?
- 6. 念書を作るときの注意点【3つのポイント】
- 📄 念書のひな形(ややカジュアル版)
- 📄 念書のひな形(フォーマル版)
- 📑 簡易な金銭消費貸借契約書(貸主・借主の双方で締結)
- 7. さいごに:信頼しているからこその書面!
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
- 「ちゃんと返してもらえるのかな…」
- 「後で“借りてない”って言われたらどうしよう…」
- 「親しい間柄なのに契約書なんて仰々しくて気が引ける…」
たとえ相手が親しい友人や家族でも、お金が関わると関係がギクシャクすることがあります。
この記事では、個人間でお金を貸すときに注意すべきポイントや、念書・契約書をどう書けばよいかについて、法律や契約書に詳しくない方にもわかりやすく解説します。
2. 「金の切れ目が縁の切れ目」──残念ながら…本当です
よく言われる言葉ですが、実際にこの言葉どおりのトラブルは少なくありません。
たとえば…
- 「返すって言ってたのに、何年も放置されている」
- 「お金を渡した瞬間から、電話に一切出ない、LINEも既読スルー」
- 「証拠がないだろ!と開き直られて、結局泣き寝入りするしかなかった」
「貸したのに返してもらえない」こうしたケースは、書面を交わしていなかったことが原因であることがほとんどです。
3. 基本原則:「個人間でお金の貸し借りはしない」がベスト
貸した側が、何も落ち度がないのに「信頼していたのに…」「あんなに親しい間柄だったのに…」とショックを受けるケースはとても多いです。
純粋に「助けてあげたい」という気持ちから、家族や友人にお金を貸そうとする場面もあるかもしれません。
しかし、個人でお金を貸すことには、以下のようなリスクがあることを理解しておく必要があります。
- 相手に本当に返済できる能力があるのか分からない
→ その場の勢いや事情だけで判断してしまうと、後から「返せない」と言われる可能性があります。 - 書面を交わしていないと、貸したことを証明できない
→ 現金の手渡しや口約束だけでは、後になって「そんな約束はしていない」と言われるおそれがあります。 - 金銭が絡むと、感情がこじれやすい
→ 親しい関係だからこそ、「返してくれない」という事態が起きたときの精神的なダメージが大きくなります。
こうした事情から考えると、個人でお金を貸すことは相手との信頼関係をかえって壊してしまうリスクがあるとも言えます。
そのため、もしご自身が不要不急と判断するのであれば、「貸さない」という選択が、お互いの関係を守るうえで最も安全なのです。
4. それでも貸す必要があるなら「必ず書面で残す」
どうしても断れない場合や、事情があって貸す必要がある場合は、最低限、次の3つを守りましょう。
✅ ポイント1:書面で約束を残す(念書・契約書)
口約束はトラブルのもと。
簡単なメモでも構わないので、「借りたこと」「返す期限」などを文書に残しておきましょう。
✅ ポイント2:できるだけ銀行振込で渡す
現金で手渡すと、証拠が何も残りません。
銀行振込であれば、通帳や履歴が「貸した証拠」になり得ることもあります。
✅ ポイント3:返済の期日・方法・利息を明記する
たとえば「令和○年○月○日までに、○○銀行に振込で返済」「利息はなし」など、具体的な条件を書いておくと後々のトラブルを防げます。
5. 念書とは?契約書とは何が違うの?
📌 念書(借用書)
- 借りた人が「借りました」と一筆書く
- 借主が一人で作成・署名した体裁をとるのが通常
- 内容は簡易的
- 証拠力があるケースが通常
📌 契約書
- 貸す人・借りる人の両者で取り交わす
- 条文がややフォーマル
- お互いの認識を一致させやすい
- 紛争時の証拠としてより強力
| 比較項目 | 念書 | 契約書 |
|---|---|---|
| 書く人 | 借主のみ | 貸主・借主の両方 |
| 内容の形式 | 簡易 | フォーマル |
| 法的効力 | あり | あり(より強い証拠力) |
| 調印方法 | 署名・できれば印鑑 | 両者の署名・押印 |
6. 念書を作るときの注意点【3つのポイント】
① 内容はできるだけ具体的に
- 借りた日
- 金額
- 返済期日
- 支払い方法(振込 or 現金)
- 利息の有無
「あとで揉めそうなポイント」は最初に明記しておくのがコツです。
② 借主の直筆署名が必要
本人が手書きで署名していることが大事です。
署名だけでも法的効力はありますが、印鑑(できれば実印、シャチハタはNG)も押してもらうと安心です。
③ 無理やり書かせた念書は無効になることも
念書は、あくまで自由な意思で書いてもらう必要があります。
怒鳴る・脅すなどして書かせたものは、裁判で無効とされる可能性もあります。
※以下のひな形はあくまで「サンプル」です。実情に即してアレンジしてご活用ください。もし、内容にご不安がありましたら弊所までお気軽にご相談ください。【2025.12.21一部改訂】
📄 念書のひな形(ややカジュアル版)
念 書
私は、令和〇年〇月〇日、△△△△さんから金○○万円を借りました。
このお金は、令和〇年〇月〇日までに全額返済します。
返済方法は、銀行振込または現金手渡しとします。
利息はありません(または年利○%とします)。
令和〇年〇月〇日
借主署名:〇〇〇〇 印(できれば実印)
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
電話:090-××××-××××
📄 念書のひな形(フォーマル版)
念 書
私は、以下のとおり金銭を借り入れたことを認め、返済期限までに返済することをここに誓約いたします。
1.借入金額 金○○○,○○○円(○○万円)
2.借入日 令和○年○月○日
3.返済期限 令和○年○月○日
4.返済方法 指定口座への振込 または 現金手渡し
5.利息 なし(または年利○%)
令和○年○月○日
借主署名:〇〇〇〇 印(できれば実印)
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
📑 簡易な金銭消費貸借契約書(貸主・借主の双方で締結)
金銭消費貸借契約書
貸主(以下「甲」という)と、借主(以下「乙」という)は、以下の内容により金銭消費貸借契約を締結する。
第1条(貸付金額)
甲は乙に対し、金○○○,○○○円(○○万円)を貸し付ける。
第2条(貸付日・返済)
1.貸付日:令和○年○月○日
2.返済期日:令和○年○月○日
3.返済方法:甲指定の口座へ振込 または 現金手渡し
第3条(利息)
利息は年利○%とする(または、無利息とする)。
第4条(遅延損害金)
返済期日を過ぎた場合、年○%の遅延損害金を支払う。
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙が各1通を保有する。
令和○年○月○日
貸主(甲)
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:〇〇〇〇(署名・印)
借主(乙)
住所:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
氏名:〇〇〇〇(署名・印)
7. さいごに:信頼しているからこその書面!
お金の貸し借りは、信頼関係に基づくものです。
でも、その信頼を壊さないためにも「約束をきちんと書面化して凍結保存しておくこと」がとても大切です。
- 個人間でも「口約束」はトラブルのもと
- 最低限、念書で証拠を残す
- できれば契約書を取り交わす
- 銀行振込で証拠を残す
書面を交わすことで、あなたと相手との信頼関係を守ることにもつながります。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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