1.はじめに
ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。
ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。
代表的な契約トラブルに「代金(報酬)の回収ができない」「相手から支払ってもらえない」があります。
これまで様々な事例をみてきましたが、ある「方程式」を活用すれば、かなりの確率でそれを避けることができるように感じております。本稿ではそんなことをまとめてみたいと思います。
2.支払ってもらえない原因
支払ってもらえない原因はシンプルです。
「入金確認をマメにやっていない」
「請求書に支払期限が書かれていない」
契約トラブルでは「当たり前なことが普通にできていない」というケースが多いのです。
3.支払ってもらうための方程式
その「方程式」
結論から先に申し上げれば、
①請求書にハッキリと支払期限を書く
②支払期限が過ぎたら速攻で催促する
です。
「方程式」と申し上げたので、たいそうなものを想像されていた読者の皆さん、スミマセンm(_ _)m
「支払う側」の気持ちを想像してみてください。
支払わないのではなく「支払えない」ケースがほとんどなのです。
つまり、資金繰りに困っていて、会社の口座に現金がない。その場合、どこから支払っていくでしょうか?
おそらく、
・支払期限が過ぎたら即座に督促がなされる
・入金されるまで督促が繰り返しなされる
こういう取引先(要するにウルサいところ)から支払っていくのではないでしょうか。
資金繰りに困っていなくとも、担当者が「振込をウッカリ忘れていた」ということはままあることです。これも支払期限が過ぎて即連絡をすれば何事もなく解決するところ、後に引っ張れば引っ張るほど、請求書を紛失してしまったり、誤ってシュレッダーにかけてしまったり、「支払い済み」としてファイリングされてしまったり…と支払う側のヒューマンエラーの可能性が高まります。
また、支払ってもらう側も請求した事実を忘れてしまっていたり…
本来の支払期限から半年後、1年後に「やっぱり支払ってください」というのは、結果的に支払ってもらえたとしても、その後の取引でのわだかまりや誤解を生む遠因になりかねません。
4.心理的ハードルがある場合は契約書を根拠に
契約書に関するセミナーの講師をやっておりますと、上記のようなご説明をすると、
「請求書に支払期限を書きづらい」
「支払期限を過ぎても督促しづらい」
このようなご意見が寄せられることがあります。
これは、取引前に契約書を取り交わすことによって、その心理的なハードルを下げることができます。
契約書には、支払条件の項目がありますので、
「契約書にはいついつまでにお支払いいただくことになっております」
「契約書でお約束した期日までに入金がないので、ご連絡差し上げました」
と、あくまでクールに言い切ること。
ここで、もたついていると、支払う側が期日までに入金しないのが悪いのに、足下を見られて、支払が後回しにされてしまう、…いつまでも支払ってもらえず泣き寝入り…となってしまいます。
債権回収の現場では「初動」がとても重要です。
支払う側も納得した上で契約書にサインしているわけですから、クールにドライに対処すべきです。
上記からお分かりのように、債権回収の現場では、契約書は強い根拠になります。
契約書がない取引で、支払う側から「何を根拠に今日までに入金しろと言っているの?」と質問された場合、どう答えるのでしょうか。
理路整然と説明したとしても、その相手から「そんなことに合意した覚えはない」と開き直られてしまったら…ということが、現実には多いのです。
5.契約書のない取引の危険性
「契約書のない取引の危険性」は、取引相手に何らかの「本来はあまりやりたくない」アクションととる場合に表面化します。
例えば、
・入金の督促をする
・期日までの納品を催促する
・クレームを入れる
などです。
これらのケースにおいて、
「いや、その期日までに入金するとは合意していない」
「納期については約束していない」
「そのクレームは受け入れられない」
と、簡単に開き直られてしまう余地があるのです。
言い替えれば「端から脇が甘い」というところにあります。
6.音声解説
stand.fm「契約書に強くなる!ラジオ」では上記についての音声解説をしております。
文字だけでは表現できない微妙なニュアンスを気取らずにお伝えできるのが音声配信の魅力です。
「ながら視聴」でも知識を得ていただけるようにお話ししておりますので、一度お聴きいただければ幸いです。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
この記事へのコメントはありません。