ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)のほか、コミュニティFM局の構成作家兼パーソナリティとしての活動もさせていただいております。
1.基本契約書とは
年度末から新年度にかけてのこの時期は、契約書の取り交わしが多くなります。
とりわけ「基本契約書というゴッツい契約書が送られてきたのだけれど、どうしたらいいのか?」といったご相談も多くなります。
基本契約書とは…?
例えば、製造業者が原材料の仕入を行う場合のように、特定の当事者間において反復・継続的な取引を行う場合、個々の取引のたびに契約書を取り交わすのは非常に煩雑です。そこで、個々の取引に共通の取引条件等について契約書を交わしておくことにより、個別取引の際の事務処理の手間を省くことが取引社会で広く行われています。この共通事項についての契約を「基本契約」といいます。
『改訂版 契約用語使い分け辞典』日本組織内弁護士協会(新日本法規)p.241
「何度も何度も繰り返し受発注をするのに、いちいち契約書をプリントアウトして、製本して、ハンコを押して、郵送してとするのは面倒くさいでしょ?」
「なので、(多くの場合は取引開始時に)ゴッツい契約書を一本巻いておいて、個別の受発注時には、ペライチの個別契約書(「注文書」等のタイトルであることが多い)で済ませて効率的にやりましょう!」
ざっくりとこんな感じです。
基本契約書 ≓ 継続的な取引の基本となる契約書(4,000円の印紙を貼る契約書)
なところもあります。
ただ、契約の話と印紙(税金)の話は別物なので、イコールではないところに注意が必要です(念のため)。詳しくは上記リンク先(国税庁HP)をご参照ください。
2.個別契約書とは?
基本契約書の「対義語」である個別契約書は、通常、ペライチ程度の簡易的なものです。
基本契約の締結後、実際に個々の取引を行う際にその取引条件(具体的な発注内容や対価、納期等)を定めるものが「個別契約」です。個別契約は、個別契約書の締結によるほか、実際の取引においては発注書と請書のファックスによるやりとりなど、簡素化された方法によって行われています。
『改訂版 契約用語使い分け辞典』日本組織内弁護士協会(新日本法規)p.241
蛇足ではありますが、近ごろは上述「ファックスによる」の部分が「電子契約による」に徐々に置き換わってきています。
3.基本契約書取り交わし時の注意点
ゴッツい基本契約書。書かれていることも非常にシビアであるケースがほとんどです。
基本契約書取り交わし時の具体的注意点には、NPO法人さいたま起業家協議会の「起業コラム」に寄稿しておりますので、ご参照ください。
当該「起業コラム」をご覧になるには、以下の画像をクリックしてください
当該「起業コラム」でも解説しておりますが、
①損害賠償
②違約金
③契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)
④仕入先・取引先・販売先の制限・限定
⑤契約期間の縛り
⑥支払条件(支払サイトは適切か)
の箇所については、「落とし穴しか書かれてない」くらいの心持ちで目を皿にして読み込み、不利な条件であれば粘り強く改訂の交渉をする必要があります。
+基本契約書は「自動更新」となっていることが多く、一度、不利な内容を飲んでしまうと将来にわたって悪影響が残ってしまいます。
厳しいビジネス界においては「知らなかった」は通用せず、後の祭りになってしまいかねませんので、もし、基本契約書取り交わしの際に不安な点があれば、私どものような専門家に相談されることをおすすめします。
4.音声解説
stand.fm「契約書に強くなる!ラジオ」にて、上記について音声解説をしております。
文字だけでは表現できない微妙なニュアンスを気取らずにお伝えできるのが音声配信の魅力です。
「ながら視聴」でも知識を得ていただけるようにお話ししておりますので、一度お聴きいただければ幸いです(無料)。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
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