ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. はじめに
- 2. なぜ非効率なルールが温存され続けるのか?
- 3. 「慣習」との闘い ― 気持ちの問題を乗り越える
- 4. 改定のプロセスは「共感」から始める
- 5. 「ルールはアップデートされるべき」という発想を広める
- 6. まとめ:ルールは「人」との対話で成り立っている
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
契約書や社内規程の見直しや新規作成に取り組む際、
「これは非効率だから変えよう」
「今の時代に合わないから削除しよう」
といった発想からスタートすることが多いかもしれません。
しかし、実務で契約書や社内ルールの見直しを数多く行ってきた経験から申し上げると、
「今が不合理である」という事実だけでは、ルールの見直し・改定はうまく進まないことがほとんどです。
むしろ、今ある仕組みがどうしてその形になったのか、
その「背景や経緯」を丁寧に確認することから始めることが、
実効性のある改定を実現するための第一歩です。
2. なぜ非効率なルールが温存され続けるのか?
社内ルールや契約条項に「なんでこんな手間のかかるフローになってるの?」というものがあるのは、
決して珍しいことではありません。
しかし、そのルールが作られた当時を振り返ってみると、以下のような合理的背景があることも多いのです。
- トラブルが頻発していたため、リスク回避のためにルールを強化した
- 人的リソースが限られていたため、運用上必要だった
- 経営層や取引先との力関係から、妥協せざるを得なかった
つまり、「今の非効率」は、かつての「最適解」であったということ。
この視点を持たずにルールの見直しを進めてしまうと、「なぜそれがあるのか分からないまま削除した結果、
大きなトラブルを呼び込む」という事態にもなりかねません。
3. 「慣習」との闘い ― 気持ちの問題を乗り越える
もう一つ厄介なのが、「慣習化したルール」の改定です。
これは法的根拠があるわけでもなく、明文化されているわけでもない。
それでも社内では「こうするのが当たり前」とされているルールです。
こうした慣習に手を入れるのは、
論理や正しさではなく、“気持ちの問題”との闘いになることが少なくありません。
たとえば…
- 「先輩たちがずっとやってきたから」
- 「今さら変えると、これまでのやり方を否定することになる」
- 「ここではあえて口には出さないけれど、ベテランの○○さんが何か言ってきそうで面倒なことになりそう」
このような、言語化されない抵抗感が根深く存在するため、改定が難航することも多々あります。
4. 改定のプロセスは「共感」から始める
そうした中で、契約書や社内規程を現場に浸透させるためには、
共感をベースにした丁寧なコミュニケーションが必要になります。
私は実務において、以下のような手順を踏むことを心がけています。
①経緯を確認する
まずは、ルールや慣習ができた背景を関係者からヒアリングし、
文書や記録があれば確認します。これにより、「そもそもなぜこのルールができたのか」を整理します。
②現状の課題を可視化する
次に、現状のルールによりどんな非効率やトラブルが起きているのかを整理し、現場の声を集めます。
③感情的な抵抗感を受け止める
「やり方を変えるのは不安」「これまでのやり方を否定されたくない」
といった感情にも耳を傾け、決して「頭ごなしに変える」のではなく、理解と納得を得ながら進めます。
④目的を共有する
「業務の効率化」「リスクの低減」「社員の負担軽減」といった改定の目的を明確にし、
ルール改定が「みんなのためになる」「会社の利益になる」という納得感のある説明をします。
5. 「ルールはアップデートされるべき」という発想を広める
多くの会社では、いったん作った契約書や社内規程が、
その後ずっと「放置」されるケースも珍しくありません。
しかし、ビジネスの環境も、会社の規模も、人も、日々変化しています。
だからこそ、ルールも変化に合わせて「アップデートされて当然」という文化を根付かせることが大切です。
そして、アップデートの際には「過去を否定する」のではなく、
「過去を尊重しつつ、次の最適解を模索する」ことが肝要です。
この姿勢こそが、社員の協力と信頼を得るための土台になるのです。
6. まとめ:ルールは「人」との対話で成り立っている
契約書も、社内規程も、最終的には「人」が使うものです。
だからこそ、人の気持ちや背景を理解する姿勢がなければ、
どんなに法的に正しくても、形だけのルールになってしまいます。
現状の仕組みやルールに違和感を覚えたら、それを作った経緯や背景にまで遡り、「当時の最適解」を理解する。
そして、そのうえで「今の最適解」をみんなを巻き込みながら探していく。
この丁寧なアプローチこそが、組織を前に進めるルール改定の鍵になるのではないでしょうか。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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