ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)/ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
「契約書は法律の話」と思われがちですが、実は契約書こそが黒字経営のカギを握っていることをご存知ですか?
形式ばかりに目を向けて、「雛形通りに書いておけば安心」と思っていると、気づかないうちに黒字化を妨げる落とし穴にはまってしまうかもしれません。
この記事では、中小ベンチャー企業や個人事業主の方に向けて、「黒字経営」を実現するための契約書の考え方を、現場感を交えてお伝えします。
なぜ契約書が黒字化に影響するのか?
契約書はただの「法律書面」ではありません。
実際には、契約書には、
- お金がいつ入ってくるのか
- おかねがどのタイミングでどれくらい出ていくのか
- 万が一のときにどこまで責任を負うのか
といった「現金の動き(キャッシュフロー)」を左右する条項が定められているのです。
つまり、契約書は「黒字をつくる設計図」ともいえる存在なのです。
黒字化を支える契約書の3つの視点
契約書を「黒字化のツール」として見直す際、特に重視したいのは以下の3点です。
1.キャッシュイン(入金)タイミングの最適化
契約書で最初にチェックすべきは、「いつ入金されるか」です。
例えば、
- 「納品後30日払い」
- 「検収完了の翌月末払い」
といった条件では、売上が立っても現金が手元に入ってくるのが遅くなり、資金繰りが悪化しかねません。
一部でも「着手金」「前払い」を設定することで、安定したキャッシュインを確保し、黒字経営に近づきます。
2.キャッシュアウト(返金・損害賠償)のリスクを抑える
「薄利多売」や「人件費先行型」のビジネスでは、出ていくお金のコントロールが重要です。
たとえば、
- 契約不適合責任の範囲は適切か?損害賠償の上限がきちんと設定されているか?
- クレーム時の対応方法が明文化されているか?
- 自社側に落ち度のない追加作業についてきちんと費用を請求できるようになっているか?
などを見直すことで、想定外の支出=赤字の原因を事前に防ぐことができます。
3.ビジネスモデルに合った契約条件か?
契約書は、経営戦略と密接に関わっています。
たとえば、
- 高付加価値・少量受注型なら、手厚いアフターサポートを明記
- 大量販売・効率重視型なら、トラブル時の対応を最小限に設計
といったように、自社の戦略や方針と整合する契約内容であるかがポイントです。ここがズレると、どんなに頑張っても赤字体質から抜け出せません。
雛形をそのまま使うと黒字を逃す!?
よく見かける「契約書の雛形」。確かに便利です。
ですが、それをそのまま使ってしまうと…
- ビジネスに合っていない入金条件
- 不利なリスク負担
- 会社の理念とずれた条項
などがそのまま残り、利益を圧迫する要因になりかねません。
つまり、雛形任せの契約書は、黒字を逃す原因になるのです。
文言ひとつが黒字か赤字かを分ける
「たった1行の文言で黒字が変わるなんて大げさじゃない?」
そんなふうに思う方もいるかもしれません。
しかし、現実にはよくあります。
たとえば:
- 支払条件が「納品後30日以内」から「検収後60日以内」に変更されただけで、資金繰りが2ヶ月悪化
- 契約書に「損害賠償の上限を100万円まで」と明記しておいたことで、想定外の高額な損害賠償請求を回避
こうした違いが、年間の利益に直結します。
契約書は、「黒字化を左右するスイッチ」だといっても過言ではありません。
経営者が契約書に関わるべき理由
「契約書は専門家に任せているから安心」
そう思っていませんか?
確かに法的なチェックは専門家に任せるべきですが、黒字化の視点は経営者にしか持てません。
- この条件で利益は出るのか?
- 現金はいつ入ってくるのか?
- トラブルが起きたときに会社は守れるか?
これらは、まさに経営判断そのもので、経営者にしかできない仕事です。
まとめ:契約書は黒字化の経営ツール
契約書は、単なる形式やリスクヘッジの道具ではありません。
それは「お金の出入り」を管理し、黒字を支える経営ツールです。
雛形に頼るのではなく、「この契約条件で、うちの会社は黒字になれるのか?」という視点を持って、契約書を見直してみてください。
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