ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)/ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
契約書や社内のルール、取引先との取り決めなどを作るとき、私がいつも大切にしている考え方があります。
それは…
「原則だけで固めすぎるとガチガチになってしまう。でも、例外ばかり認めてしまうと、ルールがゆるゆるになってしまう」ということです。
この「ちょうどいいバランス」を見つけるのが、実はとても難しいんです。
この記事では、契約書や社内規程づくりに慣れていない方にもわかりやすく、「原則と例外」の上手な扱い方についてお話ししてみたいと思います。
原則は「ルールの柱」
まず、「原則」というのは、全体に共通するルールのこと。いわば会社としての方針、ルールの柱のようなものです。
たとえば、契約書によく出てくる「支払条件は、当月末締め翌月末現金振込」といったルールは、これは、すべての取引先に共通してお願いする基本ルール(原則)です。
また社内ルールでいうと、「交通費の精算は月末締めの翌月10日までに提出」といった決まりも原則です。
このように、みんなが同じ基準で動けるようにするのが「原則」の役割です。
例外は「ちょっとした柔軟性」
しまし、世の中そうきっちりとはいかないこともあります。
「月末に出張が重なっていて、10日までの精算が難しい」
「このお客さんだけは15日払いじゃないと厳しい」
そんなふうに、どうしてもルール通りには対応できない事情が出てくるのが現実です。
だからといって、毎回毎回例外を許してしまうと、「ルールを守らなくてもいいんだな」となってしまう。
ここが難しいところで、「柔軟に対応したいけど、ゆるすぎてもいけない」というジレンマが出てきます。
ゆるすぎるとルールが意味を失う
たとえば、ある会社で「経費精算は10日までに」と決まっているのに、毎月15日、20日とずれ込んでも許されてしまっているとしたら…
もう、「10日までに」というルールは形だけになってしまっています。
これでは、会社としての運営もスムーズにいきませんし、経理担当者にしわ寄せがいったり、ミスが起こったりします。
最悪の場合、振込が期日通りになされないなどのトラブルにつながることもあります。
ルールに従うことが前提なのに、それを守らなくてもいい雰囲気になってしまう。
これが「ルールのゆるみ=弛緩(しかん)」という状態です。
どうすればバランスよくルールを作れるか?
ここからは、私が契約書や社内ルールを作るときに気をつけている「バランスのとり方」を、いくつかご紹介します。
① 原則はシンプルに。例外は条件付きで。
まず、原則となるルールはできるだけシンプルで分かりやすく書きます。
そして、どうしても例外が必要な場合は、「こういうときに限ってOK」と条件をきちんと書いておくのがポイントです。
たとえば、契約書にこんなふうに書くことがあります。
代金は納品の翌月末までにお支払いください。
ただし、事前にご相談のうえ、特別な事情があると当社判断した場合には、特別の支払条件を認めることもあります。
このように、例外の「条件」を書いておくと、「じゃあ今回もOKだよね?」という勝手な解釈を防ぐことができます。
② なぜそのルールがあるのかを説明する
社内規程やチームのルールなどを作るときに大事なのが、「なぜこのルールがあるのか」をみんなにきちんと伝えることです。
「交通費精算は10日まで」ではなく、
「交通費の精算分を給与とまとめて振り込むためには、銀行への指示を20日までにする必要があるので、チェックに10日程度かかることを見込んで、交通費の精算は10日までとしてある」と伝える。
こうすることで、みんなが「なるほど、必要があって決まっているんだな」と納得しやすくなり、ルールが守られるようになります。
③ 定期的に見直す
一度作ったルールも、時代や働き方の変化に合わせて見直しが必要です。
「コロナ禍でリモートワークが増えたから、申請のやり方を変えよう(コロナ禍が落ち着いたからやり方を元に戻そう)」
「社員数が増えたから、ルールを少し細かくしたほうがいいかも」
こんなふうに、会社の状況に応じてルールを調整していくと、「原則と例外」のバランスも自然と保ちやすくなります。
ルール作りは、会社づくりと同じ
契約書や規程づくりというと、どうしても「法律の話」「専門家の仕事」という印象があるかもしれません。
でも実際は、以上見てきた通り、会社の方針をカタチにする作業ともいえるのではないでしょうか。
だからこそ、バランス感覚がとても大切になりますし、それは経営者や現場で実務を担当するの方にしかできない判断でもあります。
まとめ:「ちょうどいいルール」が会社を守る
繰り返しになりますが、「原則だけではガチガチ、例外ばかりではゆるゆる」です。
どちらかに偏らない、「ちょうどいいルール」を作ることが、会社を守り、社員を助け、トラブルを防ぐことにもつながります。
難しそうに思えるかもしれませんが、今回の内容を少しでもヒントにしていただければ嬉しいです。
「うちのルール、ちょっと見直してみようかな?」と思ったときは、いつでもお気軽にご相談ください。
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