ビジネス法務

【NDAのトリセツ】「秘密保持契約(NDA)」ってなに?やさしく解説します!

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

秘密保持契約(NDA)は、
ビジネスの最初に結ばれることが多い一方で、
「とりあえず雛形で」「前回と同じ内容で」
と、深く考えられないまま使われがちな契約でもあります。

しかし、NDAは単なる形式的な書類ではなく、
その後の取引や情報の扱い方を左右する重要な土台です。

この「NDAのトリセツ」シリーズでは、
一般論にとどまらず、実務の現場で本当に考えるべきポイントを、
一つずつ整理していきます。


1. はじめに:最近よく聞く「NDA」ってなんのこと?

ビジネスの場でよく出てくる「NDA」って知っていますか?
これは「秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)」のことです。

かんたんに言うと、

「これから話す大事なことを、他の人にバラさないでね」

という約束をするための契約です。

新しい商品やサービスのアイデアを話すとき、
お互いにまだ公表していない情報を共有することがありますよね。

そんなときに「この情報はナイショにしようね」と約束するのが、このNDAです。

このNDA、見た目はシンプルで「とりあえずサインしておこうか」と思いがちですが…
じつはとても大切で、慎重に中身を見なければいけない契約書です!

なぜかというと、NDAをきちんと理解せずに結んでしまうと、
あとから自分の会社のアイデアが使えなくなったり、大きな損をしてしまうこともあるからです。


理由①:話し合いの前に取り交わすのがビジネスマナー(当たり前)になったから

ビジネスの話をする前に「まずはNDAを結びましょう」という流れがよくあります。
でも、「とりあえず形式だけ」と思って内容をよく見ないのはとても危険です。

理由②:お金の話が出てこないから安心しがち

NDAは、お金の話が書いてないことが多いです。
だから「お金が絡まない=安全」と思ってしまうこともあります。

でも実際には、そのあと大きなお金につながるようなアイデアや情報が関係してくるのです。


「NDAを交わしてから打ち合わせをしたけど、結局その話はなくなった」
「でも、そのときに出したアイデアを相手が勝手に使って特許をとってしまった」

そんなトラブルが現実に起きています。

たとえば、こんなケースを想像してみてください。

あなたの会社では、半年かけて新しいアプリを開発してきました。
まだ公開はしていないけれど、「これがヒットすれば売上が伸びるぞ!」という自信作です。

そんなとき、大手企業から「ちょっと一緒にお話ししませんか?」というお誘いが。
そこで、「まずはNDA(秘密保持契約)を結んでください」と言われて、よく読まずにサインしてしまいます。

そのあと、自社のアプリの内容を説明したところ、
実はその契約書には、

「話し合いの中で出てきた情報はすべて相手の“秘密情報”として扱う」

という内容が含まれていたのです。

するとどうなるか?

・その会社の許可がないと、自分の会社のアプリがリリースできなくなる
・「その情報はうちの秘密だ」と言われ、使うことを止められる

──こんなことが、実際に起きてしまうのです。

つまり、「自分が元々持っていたアイデア」や「自社で開発したもの」まで、
相手の秘密情報として縛られてしまうような書き方がされていることがあるのです。


中小ベンチャー企業や個人事業主にとって、大手企業からのオファーはうれしいものです。
「有名な会社と仕事できるなんて!」とワクワクしてしまう気持ち、よく分かります。

でも、相手はとても経験豊富で、契約書に詳しいプロがたくさんいます。

そのため、こちらがよく分からずにサインしてしまうと、
知らないうちに不合理な条件を受け入れてしまうことがあるのです。

たとえば──

  • アイデアの権利を全部相手にあげてしまうような内容
  • 相手と話したことをもとに作った商品が出せなくなるような制限
  • 契約が終わってから何年も行動が縛られてしまう

こんなことが書かれていることもあります。


5. NDAでチェックしておきたいポイント5つ

NDAをサインする前に、最低限ここだけはチェックしておきましょう!

✅ ナイショにする情報の範囲はどうなってる?

「何でもかんでも秘密情報」になっていないか注意!
自分が元々持っていたアイデアや、会話中に思いついたことまで相手の秘密にされていませんか?

✅ 情報の使い方はちゃんと決まってる?

「この情報は〇〇のためにしか使っちゃダメ」と目的がハッキリ書かれているか。
ぼんやりした表現はNGです。

✅ 誰がどこまで責任を持つのか?

相手が情報を他の社員や外部スタッフに見せる場合、ちゃんと責任を取ってくれるようになっているか?

✅ 情報の持ち帰り方や返し方は決まってる?

話が終わったあと、その情報をどう扱うかも重要です。
「データを消す」「書類を返す」といった内容が書かれているかチェック!

✅ いつまでナイショにするの?

契約が終わってからも、ずーっと秘密にしなきゃいけないような契約は注意です!
5年も10年も縛られるのは大変です。


NDAには「いくら払う」「何日までに納品する」みたいな直接的なお金の話は出てきません。
でも、「将来このアイデアで儲けるかもしれない」ことを考えると…

・特許が出せなくなった
・商品化ができなくなった
・他社と同じアイデアが使えなくなった

これらは、何百万円、何千万円、場合によっては何億円の損失になることもあり得ます。

だから、「お金が関係ない契約」とは決して言えないのです。


秘密保持契約(NDA)に限らず、契約絡みは、
「なんとなくサインして終わり」ではなく、
今後の自社のビジネスを守るための大事なセレモニーです。

大手企業とのやり取り、初めての商談、新しい商品・サービスの相談──
そういったタイミングで出てくるNDAこそ、事前にしっかり中身を確認することが必要です。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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