ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)/ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
「AIで契約書を作れる時代になった」
「完璧な内容にしておけば安心だ」
そんなふうに感じている経営者の方も多いのではないでしょうか?
たしかに、生成AI(ジェネレーティブAI)の進化で、
「自社にとって完璧な契約書」がすぐに作れるようになりました。
でも実は、この「完璧な契約書」が、
中小ベンチャー企業の現実には合わないことが多いのです。
この記事では、なぜ“完璧”がうまくいかないのか、
そしてこれからの時代に必要な「契約書の人間的なチューニング」について、やさしく解説します。
中小企業の取引は「信頼関係」が土台になっている
中小企業、特にベンチャー企業の取引では、
経営者同士の信頼関係がスタートラインとなることが多いです。
「この人とならやっていけそう」
「少し不安だけど、人柄に賭けてみたい」
そういう「人と人の感覚」で商談が進むことも珍しくありません。
つまり、契約書よりも先に「信頼」があるのです。
この現実に、「完璧すぎる契約書」を持ち込んでしまうと、
それはかえって信頼を壊す火種になってしまいます。
完璧な契約書=一方的な契約書=使えない契約書
生成AIで「完璧な契約書を作って」と頼めば、
当然のように、自社にとって有利な条項をずらっと並べてくれます。
- 万が一のトラブルは全部相手の責任
- 納期が遅れても相手のせい
- その他リスクも全部相手に押しつけ
一見、完璧に見えるかもしれません。
でも、これは相手からすれば「一方的に不合理な内容の契約書」です。
「こんなに自分に負担ばかりかけられるのか…」
と感じれば、たとえ信頼していた相手でも契約には至りません。
つまり、
「完璧な契約書」は、信頼と商談を壊すリスクがある。
ということです。
その契約書、本当に「自社の実力」に合っていますか?
もう一つ、大事な視点があります。
生成AIが作る「完璧な契約書」は、
自社の立場や信用力、実績を「無視して」作られているということ。
たとえば、創業2年目のベンチャー企業が、
まるで上場企業のような契約条件を相手に押しつけたとしたら——
「うちは、そこまでの対応力もないのに…」
「信用はまだまだこれからなのに…」
そんな実力とかけ離れた契約条件では、
相手の不信感を買うだけでなく、自分たちの信用にも傷がつきかねません。
ですので、
契約書は「自社の実力」や「取引実態」に合わせてチューニングする必要がある。
ということも忘れてはいけません。
契約書に必要なのは「人間の感覚による調整」
ここまでをまとめると、
生成AIで契約書を作る際には、本記事執筆時点では、以下の3つのバランス調整が不可欠になります。
✅ 相手との信頼関係への配慮
✅ 双方のリスクの分け合い
✅ 自社の実力や信用力に見合った内容
これらは、AIには判断できません。過去のデータは持っていても、「今この関係性で、どこまで求めるべきか」という
空気感や感情的な温度までは読み取れないからです。
だからこそ、最後は人間が「整える」必要があるのです。
契約書に不慣れでも大丈夫。まずはAIで試してみてください
「うちでAIなんて使いこなせるかな…」
「契約書って、そもそも何から見ればいいのか分からない…」
そんな不安を感じている方も、安心してください。
まずは、生成AIで契約書をたたき台として作ってみてください。
そのうえで、内容を読んでみて「ここ、これでいいのかな?」と思ったら…
お気軽にご相談ください。
実際、弊所にはこうした
「AIで契約書を作ってみたんですが、少し不安で…」というご相談がとても多く寄せられています。
契約書に不慣れな方でも大丈夫。
「人間のチューニング」の部分、ぜひ一緒にサポートさせていただきます。
まとめ:AIの強みと、人の感覚をうまく組み合わせよう
✍️ これからの契約書の作り方のポイント
- 生成AIで、たたき台を作る(効率的!)
- 人間の感覚で調整する(相手・信頼・自社の実力を考慮)
- 不安な場合は、専門家に相談する
この流れが、これからの契約書づくりのスタンダードになっていくのではと考えています。
おわりに:契約書も“等身大の自分たちらしさ”が大事
生成AIの活用が進む一方で、契約書はやっぱり「人と人との信頼の証」。
だからこそ、自社らしい、相手との関係性に合った契約書が求められます。
「完璧」にこだわりすぎず、
「ちゃんとした約束を、きちんと交わす」という原点に立ち返って、
信頼ある契約書づくり、ぜひ一緒に進めていきましょう。
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