契約書

「覚書」だと効力が弱い?「契約書>覚書」は都市伝説!【2026年版】

※本記事は、実務でのご相談事例や取引慣行の変化を踏まえ、
 2025年12月30日に内容を見直し、加筆修正した【2026年版】です。

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


1.タイトルを「覚書」にすると、効力は弱くなるのか?

「タイトルが『覚書』になっていれば、法律的な効力が薄いと聞いたのですが、
これって本当ですか?」
という主旨のご質問をいただくことがあります。

はたして本当に、
書面のタイトルが「覚書」だと、法的な効力は弱くなるのでしょうか。


2.「契約書」「覚書」に法的な優劣はない

先に結論を述べます。

契約書・覚書・協定書・誓約書といった表題によって、
法的効力に優劣はありません。

効力を決めるのは、
書面のタイトルではなく、
その書面に何が書かれているかです。


3.「覚書だから大丈夫」という危険な説明

実務では、次のような場面がよくあります。

  • 「正式な契約書ではなく、あくまで覚書です」
  • 「今回は軽い内容なので、覚書で」

こうした説明を聞くと、
心理的にハードルが下がり、
内容を十分に確認しないまま
署名・押印してしまいがちです。

しかし――
ここが一番危ないポイントです。


4.契約の効力は「表題」ではなく「合意内容」で決まる

法律上、契約とは

当事者間の合意によって成立するもの

です。

専門書でも、次のように整理されています。

表題は、自由で、実際、念書・覚書・誓約書・協定書・差入証などいろいろな表現が用いられる。それが法的に契約書であるかどうかは、表題ではなく、その書面に書かれた内容が契約書かどうかによる。契約当事者の合意、一定の契約条項を記載してあれば、契約書としての効力が認められる。
『契約書式実務全書(第3版))』大村=佐瀬=良永(ぎょうせい)p.80

念書とか覚書という表題で書かれた文書にも、実際には様々な目的のものがあるが、当事者間の権利義務に関する定めをしている限り、それは契約書である。
『契約書式実務全書(第3版))』大村=佐瀬=良永(ぎょうせい)p.81

つまり、

  • 当事者が合意している
  • 権利義務が定められている

この2点がそろっていれば、
表題が「覚書」であっても、立派な契約書です(効力は同じです)。


5. 覚書はどんな場面で使われるのか

実務上、「覚書」というタイトルが使われるのは、主に次のようなケースです。

  • 契約条項がA4・1枚程度に収まる場合
  • すでに基本契約(原契約)が存在し、
    • 一部条項を変更する
    • 条項を追加する
    • 契約期間を延長する
    • 金額を変更する

この場合、
原契約+覚書が併存する形になります。

管理の手間は増えますが、

  • 社内決裁フローを簡素化できる
  • 印紙税を抑えられる場合がある

といった理由から、
実務ではよく採用されます。


6. 誓約書・念書・差入証の違いと注意点

「覚書」とあわせて誤解されやすいのが、
「誓約書」「念書」「差入証」「借用証」といった書面です。

これらは、一般的な契約書のように
当事者双方が署名・押印する形式ではなく、
一方当事者のみが署名・押印して相手方に差し入れる

いわゆる「差入方式」で作成されることが多い書面です。

専門書でも、次のように整理されています。

本来、契約書は契約当事者が対等の立場で合意を定めたという形式をとるわけだが、当事者の一方だけが署名(記名)押印して、それを相手方に差し入れる場合には、表題を契約書とせずに、念書とか覚書、あるいは誓約書と書くことが多い(一方だけが作成したという形式の文書であって、双方の合意という契約書の形式にそぐわないからであろう。)。こうした差入れ方式でも、当事者間に合意が成立している以上は、契約書としての意味をもつ。
『契約書式実務全書(第3版))』大村=佐瀬=良永(ぎょうせい)p.81

つまり、

  • 表題が「誓約書」「念書」であること
  • 一方だけが署名・押印していること

これだけで
「契約ではない」「効力が弱い」とはなりません。

実務上は、
「一筆取る」という場面で使われることが多く、
心理的な抑止効果や履行を促す役割も期待されてきました。

現在では状況も変わっていますが、
差入方式の書面が、今なお実務で使われている
という点は押さえておく必要があります。

重要なのは、ここでもやはり、

表題や形式ではなく、
当事者間に合意があるかどうか

という一点です。


7.まとめ:「覚書=軽い」は危険な都市伝説

  • 表題が「覚書」でも、効力は弱くならない
  • 契約の重さを決めるのは、書面の中身
  • 内容を確認せずに押印すれば、自己責任になる

「覚書だから大丈夫」
これは、契約実務における典型的な都市伝説です。

守れない内容が書かれていれば、
損害賠償などの責任を問われる可能性もあります。

タイトルに惑わされず、
必ず「何が書いてあるか」を確認する

これが、
契約書と向き合う上での基本姿勢です。


【音声解説】

本記事の内容は、
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▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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