ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに──契約の形態によって「スタンス」は変わる
契約書と一口にいっても、「法人間契約」「個人間契約」「法人・個人間契約」では作成時の注意点が大きく異なります。
本記事では、主に中小ベンチャー企業の経営者や経営幹部の方向けに、それぞれの違いと実務のポイントをわかりやすく解説します。
個人間契約とは?──典型契約が中心
個人間契約の特徴
個人間の契約は、民法で定められている「典型契約」が中心です。たとえば、
- 売買契約
- 賃貸借契約
- 消費貸借契約(お金の貸し借り)
といった取引が多く、市販の契約書ひな形を参考にすれば、基本的な契約であれば対応できることが多いです。
注意が必要なケース(不動産取引など)
ただし、不動産(土地・建物・駐車場)の売買・賃貸借契約などでは、条件が複雑になりがちです。特に、
- 特定条件での解約
- 境界未確定地の売買
- リフォーム・リノベーション可否に関する取り決め
といった場合、市販ひな形ではカバーしきれないことが多く、専門家のチェックが欠かせません。
法人・個人間契約とは?──消費者保護の視点が重要
個人(消費者)の保護とは?
法人と個人の契約では、消費者を守る法律(消費者契約法、特定商取引法)が適用される場合があります。あまりに法人側に有利な条項は無効とされるリスクもあるため、十分な注意が必要です。
トラブルを防ぐ契約書作成のポイント
- 個人に過度な負担を強いる条項は避ける
- 契約内容をきちんと説明し、証拠も残す
- 理解できるわかりやすい言葉で作成する
法人側の立場でも「相手に配慮する」という姿勢が不可欠です。
法人間契約とは?──継続的取引を前提に考える
基本契約と個別契約の関係
法人間では、単発取引よりも継続的取引を前提に契約するケースが一般的です。多くの場合、
- 取引基本契約(共通ルールを決める)
- 個別契約(注文書や発注メール)
の2段構えで運用されます。
市販書式だけでは不十分な理由
法人間契約では、
- 検収方法や納品リスク
- 知的財産権の取り扱い
- 契約不適合責任や損害賠償の範囲
- 業界特有の慣行
などに応じた細かな設計が必要です。市販のテンプレートだけでは不十分なことが多いため、実態に即したカスタマイズが不可欠です。
2025年現在の社会情勢・法改正に基づく注意点
電子契約・デジタル署名の普及
コロナ禍以降、電子契約がずいぶんと普及しました。適法に電子署名された契約書は原則、紙の契約書と同じ法的効力を持ちます。
消費者契約法・特定商取引法の改正動向
近年は、
- 過大な違約金条項の無効
- クーリングオフの拡大
- 誤認・強引な勧誘に対する取消権の強化
など、消費者保護の流れが一層強まっています。
下請法・独占禁止法との関係性
発注側企業による優越的地位の濫用が問題視され、取引条件の適正化が求められています。法人間契約でも、立場の強弱を踏まえたフェアな設計が重要になっています。
実務のヒント──中小ベンチャー企業が今すぐできる対応策
契約テンプレートを鵜呑みにしない
ネット上や市販のテンプレートは参考程度にとどめ、自社のビジネスに即した契約書を整備しましょう。
取引先との関係性に応じた設計を
- 継続取引なら基本契約+個別契約
- 単発取引でも書面化を徹底
相手との関係性に応じた契約運用を心がけることが大切です。
専門家を「事前に」使う重要性
トラブルが起こってからでは手遅れです。契約交渉・締結段階から専門家に相談し、未然にリスクを回避することが賢明です。
さいごに──契約書は“リスクを減らすためのチューニングツール”
契約書は、相手を縛るものではなく、取引を円滑に進めるためのチューニングツールです。
リスクを適切に分担し、無用なトラブルを未然に防ぐために、契約書は存在します。
もし、
- 契約書の作成・見直しに不安がある
- 新たな取引に備えたい
- 既存の契約内容を点検したい
といったお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。最適な契約戦略をご提案します。
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