ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.はじめに
- 2.なぜ「別紙」がトラブルの火種になるのか?
- 3.「別紙による」という表現の正しい扱い方
- 4.実務でありがちな「別紙迷子」のパターンと対策
- 5.そもそも「別紙」を使わずに済む方法もある
- 6.チェックリスト:「別紙」に関する契約書チェック
- 7.まとめ:別紙も契約書の“本文”です
- 🔎 参考記事
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.はじめに
契約書の中でよく見かける表現、「詳細は別紙による」。
シンプルで便利なこの一文ですが、いざ実務で見返すと──
「あれ? その“別紙”って、どこにあるの?」
そんな声が現場から上がること、ありませんか?
本記事では、「別紙による」と書いたものの、別紙の所在や内容が曖昧だったことでトラブルになったケースや、「別紙迷子」を防ぐための工夫について、契約書実務の視点から解説します。
2.なぜ「別紙」がトラブルの火種になるのか?
● ケース1:別紙が見つからない契約書
業務委託契約の中に「本業務の内容は別紙仕様書による」と記載。
ところが、その仕様書が契約書と一緒に保管されていなかったことで、内容の認識違いが発生。納品物の範囲で揉める事態に…。
▶原因:契約書と別紙が一体として保存されていなかったこと
● ケース2:Excelで送った“別紙”が書き換えられていた
価格表をExcelで送付し、「契約書の別紙として扱う」とメールで通知。
ところが後日、そのExcelが上書きされ、当初合意した単価と異なる内容に。書き換えられた日時が明確に残っておらず、証拠として使えない状況に。
▶原因:電子ファイルを「別紙扱い」していたが、管理体制が不十分だったこと
3.「別紙による」という表現の正しい扱い方
「別紙による」は便利な書き方ですが、管理の仕方次第でトラブルの元にもなります。以下の点を意識しておくことが大切です。
● 契約書と一体化して保管する
- 紙の場合:ホチキス留め+製本テープ+契印
- 電子契約の場合:PDFとして本文と結合、またはファイル名・保存場所を明示
● 別紙のタイトル・バージョン・日付を明記する
✗ 「別紙による」
〇 「別紙1『業務内容書(2025年5月15日版)』による」
● 別紙を後日差し替える可能性がある場合は、差し替えのルールを明記
「別紙の改訂は双方書面合意による」などとしておくと安心です。
4.実務でありがちな「別紙迷子」のパターンと対策
| よくある別紙 | トラブル例 | 防止策 |
|---|---|---|
| 仕様書 | 添付漏れで契約内容が不明に | 契約書と一体化・日付付きで管理 |
| 価格表 | 上書きされたExcelが証拠にならない | PDF化して契約締結時の状態を保存 |
| 作業工程表 | バージョンが複数存在し混乱 | 契約書にバージョンを明記し、履歴を保管 |
| 図面・設計図 | メール添付のみで保存されず | 契約時点で物理または電子で保管徹底 |
5.そもそも「別紙」を使わずに済む方法もある
必ずしも「別紙」に頼らなければいけないわけではありません。以下のような工夫で、リスクを減らせることもあります。
- 契約書本文に重要項目(業務内容・金額・納期など)を記載
- 別紙を使う場合も、本文中でファイル名・日付などを明確に
- 変更があり得る資料は、履歴付きで保存・管理できる環境(例:クラウド+版管理)
6.チェックリスト:「別紙」に関する契約書チェック
☑ 別紙は契約書と一体で保管されているか(紙なら契印、電子ならPDF結合)
☑ 別紙のタイトル・作成日・内容が明確か
☑ 誰が作成したものか明示されているか(署名・作成者名)
☑ バージョン管理ができているか
☑ 差し替え・改訂時のルールが契約書に明記されているか
7.まとめ:別紙も契約書の“本文”です
「別紙による」と書いたその瞬間、別紙も契約書の一部となります。
それなのに「どこにあるのか分からない」「書き換えられてしまった」では、契約全体の信頼性が揺らぎかねません。
これを機に、「別紙」の取り扱いを見直してみませんか?
契約書の細部の一つひとつが、将来のトラブルを防ぎます。
🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【2026.1.2追記】
本記事の続編として、
「契約書の別紙を綴じていない場合の実務対応」について
より詳しい解説をまとめた記事を公開しました。
押印後に別紙の存在に気づいたときの考え方や、
合意の証拠整理、実務で取るべき対応については
上記リンク先もぜひご参照ください。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
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