ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.はじめに:その請求書、反射的に払っていませんか?
- 2.請求書は「請求の通知」であって、義務の証明ではない
- 3.実務でよくある「金額ズレ」パターン
- 4.「違うかも」と思ったら、すぐに確認・保留が鉄則
- 5.では、何をもとに判断すればいいの?
- 6.契約書がなくても、「証拠」は残っているはず
- 7.まとめ:請求書を“うのみにしない”習慣を
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.はじめに:その請求書、反射的に払っていませんか?
取引先から届いた請求書。
金額を見て、「あれ、見積もりより高い?」と違和感を覚えたけれど…
「相手に確認するのは気が引けるし」
「こちらの見落としだったかもしれないし」
「忙しいからとりあえず処理しよう」
そんなふうに、つい“なんとなく”支払ってしまうこと、ありませんか?
2.請求書は「請求の通知」であって、義務の証明ではない
まず知っておきたいのが、請求書は「支払ってください」という相手からの通知であって、
それ自体に「法的な支払い義務を証明する効力」はないということです。
もっと言えば、支払い義務が生じるかどうかは、
“契約や合意がどうなっていたか”によって判断されるのです。
つまり、請求書の金額が、
- 契約書や見積書と違っている
- 発注数や内容が変わっている
- 追加作業が含まれている
といったケースでは、必ずしもそのまま払う必要はありません。
3.実務でよくある「金額ズレ」パターン
では、どんなときに“ズレた請求書”が届くのでしょうか。
実務でありがちな例を見ていきましょう。
① 見積より高い金額で請求されている
見積書では「30,000円(税込・送料込)」と明記されていたのに、
請求書には「33,000円(税別・送料別)」と記載されている。
→ 金額条件が違う場合、請求内容の正当性は慎重に確認すべきです。
② 数量や納品内容が発注と異なる
こちらは10個発注した認識だったのに、
請求書には12個分の請求が記載されている。
→ 相手側の「念のため多めに納品しておきました」があったとしても、
合意のない追加請求は、原則として支払い義務が生じません。
③ 頼んでいない作業が加算されている
「軽微な修正をこちらで対応しておきました」と事後報告され、
その分の費用が上乗せされている。
→ 親切心かもしれませんが、勝手な追加作業の費用を支払う義務は原則ありません。
4.「違うかも」と思ったら、すぐに確認・保留が鉄則
請求書に違和感を覚えたら、
とにかく一度、支払い処理を止めて確認をとること。
なぜなら、支払ってしまうと「その金額を了承した」とみなされるリスクがあるからです。
5.では、何をもとに判断すればいいの?
答えはシンプルです。
請求書の金額が正しいかどうかは、契約内容や事前のやりとりに照らして確認する。
そのために確認すべきものは、以下のとおりです。
✅ チェックリスト
- 契約書に記載された金額・条件
- 見積書の内容(税・送料・オプション含む)
- 発注書や注文メールの記録
- 途中で変更があった場合、その了承を示すメールやチャットログ
6.契約書がなくても、「証拠」は残っているはず
「契約書は交わしていないんです」というケースも多いですが、
その場合でも、メール・チャット・注文書・見積書などの記録が契約の証拠になります。
要は、「こういう条件で発注した」ということを、説明できるかどうかがポイントです。
7.まとめ:請求書を“うのみにしない”習慣を
- 請求書は、あくまで請求者の主張
- 支払い義務があるかどうかは、契約内容が基準
- 違和感があれば、確認&保留が基本姿勢
- 契約書がなくても、やりとりの記録が“合意の証拠”になる
請求書は、単なる経理処理の書類ではありません。
その一通の紙に、ビジネスの合意が正しく反映されているか?
最後の砦として見直す習慣をつけていくようにしたいものです。

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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