ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
「ハウツー本って、実は“すでにある程度できる人”が買うことが多い」
これはある編集者さんが話していた言葉です。
なるほど、たしかに…と私は思いました。
たとえばビジネス書。
まったくの初心者ではなく、実務の中で“壁”にぶつかった人や、成果をもっと上げたい人が、「再確認」や「ヒント探し」のために手に取ることが多いのです。
そして、それは…
契約書にもほぼ同じようなことが言えるのです。
契約書に本気になるのは、たいてい“痛い経験”のあと
契約書の重要性に気づくのは、
実際にトラブルを経験したあと、という方が本当に多いです。
たとえば…
- セールストークに流されて契約したら、返品できないバッタ物だった
- 「他社に販売してはならない」という条項のせいで販路が狭まり、思うように営業できなかった
- 「そんなつもりじゃなかったのに…」という思いを抱えながら、力関係に負けて結局泣き寝入りするしかなかった
そんな苦い経験を経て、初めて——
「次こそは契約書をちゃんと整えておこう」
「今度は自分にとって不利にならないように、きちんと確認したい」
という意識が芽生えます。
そして、弊所に契約書作成のご依頼をくださるというケースが多いのです。
契約書は、“わかってる人”がより深く使いこなすツール
契約書は、トラブルを避けるための“防御ツール”と思われがちですが、
実はもっと本質的な使い方があります。
それは——
✅ 事業をスムーズに回すための「共通ルール」
✅ 信頼関係を言語化する「翻訳ツール」
✅ チーム全体で共通認識を持つための「設計図」
たとえば、こういう視点で契約書に向き合う方がいます。
- 「この表現、現場のオペレーションにちゃんと合ってますか?」
- 「この条文、後任でも対応できますか?今だけの属人対応になってませんか?」
- 「これは“揉める余地”をあえて残してるんですよね?」
こういった声が出てくるとき、契約書は単なる法的書面から“ビジネスデザインの一部”に変わっていきます。
信頼関係があるからこそ、契約書が役に立つ
「うちは信頼関係でやってるから契約書なんて…」
そういう方もいらっしゃいます。
でも、だからこそ、こうお伝えしたいんです。
信頼関係があるからこそ、その信頼を言語化して可視化することが大切です。
契約書にまとめておくことで、
経営者だけではなく従業員や取引先にもその想いが伝わり、
組織やプロジェクト全体での共通理解と共通行動が可能になります。
※もちろん、契約書だけで信頼が築けるわけではありません。
でも、信頼を守るために“共通の土台”として契約書がある——そんなイメージです。
本当に必要なのは、起業初期の人たちかもしれない
契約書の相談に来られる方は、経験豊富な経営者が多いです。
けれども本当は——
これから起業する人、初めて契約を交わす人こそ、契約書をはじめとするビジネス法務に関する知識を知っていてほしいのです。
というのも、起業初期は…
- 「とりあえずテンプレートで」
- 「相手が用意してくれたからそのままで」
- 「断ったら悪い気がするし…」
といった理由で、契約内容をじっくり確認せずに進めてしまいがち。
けれど、このタイミングこそ、ビジネスの“土台”が決まる場面なのです。
あとから「しまった」と思っても、取り返しがつかないこともあります。
さいごに:契約書は“ちゃんと儲けるための道具”でもある
契約書というと、「万が一のトラブルを避けるための防御ツール」と思われがちです。
もちろんそれも大切ですが、それだけではありません。
✅ 条文を工夫すれば、業務の手間を減らせる
✅ 契約段階で線引きしておけば、後の調整コストが不要になる
✅ 信頼される契約提案ができれば、相手の本音を引き出せる
つまり、契約書をきちんと整えることで、ビジネスの生産性が上がるのです。
実は、「儲かっている会社」ほど契約にはしっかりコストをかけている
少し踏み込んだ話ですが——
実際に業績の良い会社、成長している会社ほど、契約まわりにしっかりお金と時間をかけています。
- 自社に合った契約書をつくるために専門家に依頼する
- 社内で契約管理の仕組みを整える
- 契約交渉でも「言うべきことはちゃんと言う」文化をつくる
これらはすべて、会社の持続的な利益を支える“インフラ”です。
逆に、契約を軽視してしまうと、
あとから信頼の揺らぎや予期せぬ損失につながることも少なくありません。
契約の整備は目立たないかもしれませんが、その静かな積み重ねこそが、信頼と利益の“両輪”を支えているのです。
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