ビジネス法務

【契約書のトリセツ】請求書が届いたら、必ず払わなきゃいけないの?

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。

取引先から届いた請求書。
金額を見て、「あれ、見積もりより高い?」と違和感を覚えたけれど…

「相手に確認するのは気が引けるし」
「こちらの見落としだったかもしれないし」
「忙しいからとりあえず処理しよう」

そんなふうに、つい“なんとなく”支払ってしまうこと、ありませんか?

まず知っておきたいのが、請求書は「支払ってください」という相手からの通知であって、
それ自体に「法的な支払い義務を証明する効力」はないということです。

もっと言えば、支払い義務が生じるかどうかは、“契約や合意がどうなっていたか”によって判断されるのです。

つまり、請求書の金額が、

  • 契約書や見積書と違っている
  • 発注数や内容が変わっている
  • 追加作業が含まれている

といったケースでは、必ずしもそのまま払う必要はありません。

では、どんなときに“ズレた請求書”が届くのでしょうか。
実務でありがちな例を見ていきましょう。

① 見積より高い金額で請求されている

見積書では「30,000円(税込・送料込)」と明記されていたのに、
請求書には「33,000円(税別・送料別)」と記載されている。

→ 金額条件が違う場合、請求内容の正当性は慎重に確認すべきです。

② 数量や納品内容が発注と異なる

こちらは10個発注した認識だったのに、
請求書には12個分の請求が記載されている。

→ 相手側の「念のため多めに納品しておきました」があったとしても、
合意のない追加請求は、原則として支払い義務が生じません。

③ 頼んでいない作業が加算されている

「軽微な修正をこちらで対応しておきました」と事後報告され、
その分の費用が上乗せされている。

→ 親切心かもしれませんが、勝手な追加作業の費用を支払う義務は原則ありません。

請求書に違和感を覚えたら、
とにかく一度、支払い処理を止めて確認をとること。

なぜなら、支払ってしまうと「その金額を了承した」とみなされるリスクがあるからです。

答えはシンプルです。

請求書の金額が正しいかどうかは、契約内容や事前のやりとりに照らして確認する。

そのために確認すべきものは、以下のとおりです。

✅ チェックリスト

  • 契約書に記載された金額・条件
  • 見積書の内容(税・送料・オプション含む)
  • 発注書や注文メールの記録
  • 途中で変更があった場合、その了承を示すメールやチャットログ

「契約書は交わしていないんです」というケースも多いですが、
その場合でも、メール・チャット・注文書・見積書などの記録が契約の証拠になります。

要は、「こういう条件で発注した」ということを、説明できるかどうかがポイントです。

  • 請求書は、あくまで請求者の主張
  • 支払い義務があるかどうかは、契約内容が基準
  • 違和感があれば、確認&保留が基本姿勢
  • 契約書がなくても、やりとりの記録が“合意の証拠”になる

請求書は、単なる経理処理の書類ではありません。
その一通の紙に、ビジネスの合意が正しく反映されているか?
最後の砦として見直す習慣をつけていくようにしたいものです。

音声配信アプリ「stand.fm」にて、『契約書に強くなるラジオ』を配信中です。
本記事のテーマは、「誰かにシェアしたくなる法律知識」シリーズとして、音声でも公開しています。
▽音声をお聴きになるには、以下をクリックください(音声配信アプリstand.fmへ)。

足下を固め、自分自身を守り、そして、「成し遂げたいこと」や「夢」の実現に近づけるための契約知識について、このブログや、音声配信「契約書に強くなる!ラジオ」でお伝えしていきますので、今後ともご期待、ご支援いただければ幸いです。

「こんなことに困っている!」など、契約書に関するご質問がありましたら、ブログ等で可能な限りお応えしますので、上記「お問い合わせ」より、お気軽にお寄せください。
また、商工会議所などの公的機関や、起業支援機関(あるいは各種専門学校)のご担当者で、
「契約知識」に関するセミナー等の開催をご検討されている方
講師やセミナー企画等の対応も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

最後まで、お読みくださりありがとうございました。

【契約書のトリセツ】“タダ提案”は卒業!提案フェーズをディレクション契約で守る方法前のページ

【契約書のトリセツ】委任状って何? 〜「丸投げ」の中身を言葉にするということ〜次のページ

関連記事

  1. ビジネス法務

    【行政書士】開業してから見えた“リアル”と、小さな積み重ねの大切さ

    ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約…

  2. ビジネス法務

    【契約書実務ノート】行政書士と契約書業務

    ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約…

  3. ビジネス法務

    契約書が不利だと思ったら?相手に修正してもらう交渉のコツとマナー

    ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約…

  4. ラジオ

    「契約書に強くなる!ラジオ」2023年12月

    ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。ビジネス契約書専門の行…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ご連絡先

行政書士大森法務事務所
home@omoripartners.com
048-814-1241
〒330-0062
埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1-B1
▼契約書類作成
▼セミナー講師依頼
(契約書、ビジネス法務、コンプライアンス)
▼台本作成
(研修動画、ナレーション、ラジオ番組)

stand.fm「契約書に強くなる!ラジオ」【週2回(水・日)更新】
X(旧Twitter)
FM川口「ちょいワルMonday」【毎月第2第4月曜日19:00~生放送】
2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
PAGE TOP