ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.契約書の「等」、なんとなく付けていませんか?
- 2.「等」は便利だが、意味を理解せずに使うと危険
- 3.「等」を入れたせいで、仕事の終わりが後味の悪いものになる
- 4.「等」には2つの使い方がある
- 5.条文で比較すると、「等」の怖さがよく分かる
- 6.「等」は“便利な逃げ道”ではなく、“意思表示の一文字”
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.契約書の「等」、なんとなく付けていませんか?
契約書を見ていると、
「○○等」「△△その他これに準ずるもの」
といった表現が、当たり前のように出てきます。
- なんとなく契約書っぽい
- 漏れがあると怖いから
- 念のため広めにしておきたい
こうした理由で、「等」という一文字を無意識に使っている方も多いのではないでしょうか。
しかしこの「等」、
使い方を誤ると、後々じわじわ効いてくる“地味だが厄介なトラブルの種”
にもなり得ます。
今回は、
契約書における「等」の正体と、使ってよい場面・注意すべき場面を、
具体的な条文例とともに整理していきます。
2.「等」は便利だが、意味を理解せずに使うと危険
結論から言うと、
- 「等」には明確な意味と役割がある
- 大きく分けて 2つの使い方がある
- どちらの使い方なのかを意識せずに使うと、トラブルの火種になる
ということです。
「契約書っぽいから」「よく見かけるから」という理由で使うのは、
正直おすすめできません。
3.「等」を入れたせいで、仕事の終わりが後味の悪いものになる
実務でよくあるのが、こんなケースです。
業務委託契約書の経費精算条項に、次のような記載がありました。
甲は乙に対し、本件業務の遂行に要した交通費、宿泊費等を支払うものとする。
業務自体は問題なく完了。
成果物も納品済み。
ところが最後に、乙(受託者)からこんな請求が来ます。
- 出張先での食事代
- 現地で利用したレンタカー代
- 打合せ用のカフェ代
甲(発注者)としては、
「え、交通費と宿泊費は払うつもりだけど、そこまでとは思っていなかった」
一方、乙としては、
「“等”って書いてありますよね?業務に必要だったので当然かと」
結果、法的な大揉めにはならないまでも、
- 支払う/支払わないの押し問答
- 気まずい空気
- 「次はもう頼まないかな…」という感情
こうした後味の悪い終わり方になってしまうことが少なくありません。
4.「等」には2つの使い方がある
契約書に出てくる「等」には、大きく分けて次の2パターンがあります。
① 省略のための「等」
まず一つ目は、単なる省略表現です。
例えば、契約書の定義条項でよくある形です。
条文例(定義のための「等」)
第○条(定義)
本契約において「秘密情報等」とは、本契約に関連して開示される、
技術情報、営業情報、個人情報その他一切の非公開情報をいう。
この場合の「等」は、
- 毎回すべて列挙するのが大変
- 以降の条文で簡潔に書きたい
という整理のための道具です。
重要なのは、
「等」が指す範囲を、定義条文の中で明確にしているか。
② 解釈に幅を持たせるための「等」
もう一つが、より注意が必要な使い方です。
それが、
将来起こりうる事態を想定し、解釈の余地を残すための「等」です。
条文例(解釈に幅を持たせる「等」)
甲は乙に対し、本件業務の遂行に必要な交通費、宿泊費等を支払うものとする。
この「等」は、
- 今は具体的に想定できないが
- 将来、似たような費用が発生する可能性がある
そうした場合に備えるためのものです。
ただしこの使い方は、
意識的に使わなければ“曖昧さ”だけが残るという問題があります。
5.条文で比較すると、「等」の怖さがよく分かる
では、「等」を使った場合・使わなかった場合を、条文で比較してみましょう。
① パターンA:「等」を使わない場合(範囲を限定)
甲は乙に対し、本件業務の遂行に要した交通費及び宿泊費を、実費にて支払うものとする。
この場合、
- 支払対象は 交通費と宿泊費のみ
- それ以外は原則対象外
解釈の余地はほとんどありません。
② パターンB:「等」を使う場合(範囲を広げる)
甲は乙に対し、本件業務の遂行に要した交通費、宿泊費等を、実費にて支払うものとする。
この場合、
- 交通費・宿泊費は確実
- それ以外も「業務遂行に必要であれば含まれる可能性」
が出てきます。
③ パターンC:「等」を使いつつ、範囲を限定する
「等」を使いたいが、無制限にはしたくない場合、
次のような書き方も考えられます。
甲は乙に対し、本件業務の遂行に要した交通費、宿泊費その他甲が事前に承認した費用を、実費にて支払うものとする。
この場合、
- 「等」は使っていないが
- 支払対象を事前承認制でコントロールできる
実務では、非常に使い勝手の良い設計です。
6.「等」は“便利な逃げ道”ではなく、“意思表示の一文字”
「等」は、
契約書をそれっぽく見せるための飾りではありません。
- 省略のために使うのか
- 解釈の幅を残すために使うのか
- その結果、どこまで許容するのか
こうした点を自分の中で整理した上で使う一文字です。
特に、
- 経費
- 費用負担
- 義務の範囲
といったお金や責任に直結する条文では、
「等」を入れる=覚悟を持つ、
くらいに考えてちょうど良いかもしれません。
契約書は、
仕事を気持ちよく終えるための設計図です。
その設計図に書かれた「たった一文字」が、
最後の印象を大きく左右することもあります。
ぜひ次に契約書を見るとき、
「この『等』、本当に必要かな?」
と、一度立ち止まってみてください。

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
【ご質問受付中】
「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。
また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










この記事へのコメントはありません。