ビジネス法務

【契約書のトリセツ】LINEでも発注になるの?

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


はじめに

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。

「LINEで『ちょっとお願い!』と送っただけで契約になるの?」
ビジネスの現場では、メールやLINEなどチャットツールを通じたやり取りが当たり前になっています。

特にフリーランスや個人事業主との取引では、契約書を交わさずLINEで済ませてしまうこともあります。
でも、それは法的に有効なのか? 後からトラブルになったときどう扱われるのか?

本記事では、民法の原則とフリーランス保護法の観点から整理していきます。


1. LINEでの発注は契約になる?

民法の原則では、契約は「申込み」と「承諾」が合致すれば成立します。
つまり、必ずしも紙の契約書がなくても、口頭・メール・LINEのやり取りで契約は成立し得るのです。

たとえば、

  • 発注者:「この資料、来週までに仕上げてください。3万円で」
  • 受注者:「承知しました。引き受けます」

このように、条件が明確にやり取りされていればLINEでも契約が成立します。
ただし、やり取りが曖昧だったり証拠が残っていない場合は、契約成立を証明できないリスクがあります。


2. フリーランス保護法との関係

2024年11月に施行されたフリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注側に次の義務が課されています。

  • 業務内容・報酬額・納期などを 書面または電磁的方法で明示する義務
  • 報酬の支払期日を 原則60日以内 とするルール
  • 不当な報酬減額や一方的キャンセルの禁止

ここでいう「電磁的方法」にはメールやチャット(LINEを含むと解される)が含まれます
したがって、LINEによる発注も要件を満たすケースがあります。
ただし、法務実務の観点からは「契約書や請書を交付する方がより確実」であることを忘れてはいけません。

参考:フリーランス保護法特設サイト(公正取引委員会)


3. LINE発注で最低限書いておくべき5つの事項

LINEで依頼する場合、以下の事項は必ず明記しておくことが望ましいです。

  1. 仕事内容(業務範囲)
     例:「デザイン3案」「記事2000字」など具体的に
  2. 納期
     例:「◯月◯日まで」「第3週金曜まで」
  3. 報酬額
     税込か税抜かも明確に
  4. 支払時期・方法
     例:「翌月末振込」「銀行振込」
  5. 修正の範囲
     例:「修正は2回まで」など条件を明示

これらが揃っていれば、後から「そんな条件は聞いていない」「そんなことを言ってない」といったボタンの掛け違いが少なくなるものと思われます。


4. 証拠性を高める工夫

LINEは便利ですが、削除や検索性の低さから証拠として弱いことがあります。
実務上は次の工夫をしておくと安心です。

  • スクリーンショットを保存
  • 重要なやり取りはメールに転送して残す
  • 最終的に契約書や請書にまとめる

これにより、発注の存在や条件をしっかり証拠化できます。


5. 実務で気をつけたいポイント

  • 「発注」なのか「雑談やお願い」なのか境目があいまいになりやすい
  • 追加依頼や修正依頼が積み重なると「最終成果物」が不明確になる
  • 法人取引では、社内稟議や承認を経ていないLINE依頼がトラブルの火種になることも

LINEでのやり取りは補助的な手段と考え、最終的には書面・メールで条件を整理するのがベストです。


まとめ

  • LINEでのやり取りでも、条件が明確であれば契約は成立する
  • フリーランス保護法の観点からは「電磁的方法」として有効と解されるが、契約書や請書で補強するのが望ましい
  • 依頼時は 仕事内容・納期・報酬額・支払方法・修正範囲 の5点を明記する
  • スクショ・メール転送・契約書化で証拠性を高めることが実務上不可欠

依頼する側もされる側も、安心できる明文化と記録の確保を意識しましょう。

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