ビジネス法務

【契約書のトリセツ】「今すぐ契約書にサインしてください」と言われたとき、どうする?正しい契約対応

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


ビジネスの現場では、次のような場面に出くわすことがあります。

「今すぐ契約書にサインしてください」
「この場で、今日中に、契約書にハンコをください」

特に営業や発注のタイミングで、こうした“今すぐサイン”を迫られることは珍しくありません。

でも、そこで慌ててサインしてしまうのは、とても危険です。

なぜなら、“その場”でのサインを迫る行為は、一方的に不利な契約条件を押しつけるための常套手段になっていることが多いからです。


たとえば、こう答えるとどうでしょうか。

「契約内容に問題がないか確認しますので、少しお時間をください。
取り急ぎ、今の時点で決まっている内容(数量・金額・納期など)については、書面をまとめて発注はしておきます。
細かい契約条件については、もう少し詰めさせてください」

このように「今できること」と「今はまだできないこと」を切り分けて、冷静に対応することが大切です。


即時サインを迫られた契約書の中には、よく見ると相手にだけ有利な免責条項などが盛り込まれていることがあります。

たとえば、あなたが発注する側で、契約書に次のような文言があったとしましょう。

  • 「当社は納品後の不具合について、一切責任を負いません」
  • 「遅延・不良等が発生した場合も、損害賠償責任は負いません」

これでは、相手にどんな落ち度があっても、あなたが損をして終わるだけです。

実際、「納品された機器に初期不良があっても、免責条項が邪魔をして無償修理もしてもらえなかった…」
というケースを何度も見てきました。


「その場でサインしてください」と迫る相手には、何か理由があります。
たとえば、

  • 社内で早く実績を作りたい(営業側の都合)
  • 契約条件をよく読まれたくない(不利な内容を隠したい)
  • 契約書に問題があっても責任を取りたくない(法務ではなく営業が説明)

そんな思惑が隠れていることもあります。

あるいは、単純に「契約書の中身を理解していない営業パーソンが、
上から“早く契約を取ってこい”と指示されているだけ」ということもあります。

だからこそ、「なぜそんなに急いでいるのか?」を冷静に尋ねることが大切です。


どうしても納期や業務の都合で急ぐ場合は、無理に不利な条件での契約書を交わす必要はありません。

まずは、次のような手段で最低限の約束を文書化しましょう。

● 注文書(発注書)

  • 金額・納期・数量など「決まっている項目」のみ書いておく
  • 「発注した」という証拠になる

● 覚書(予備的合意書、レターオブインテント、LOI)

  • 契約書が整うまでの“仮の合意”として活用
  • 細かい条件は後日詰める前提で、双方の意志を確認できる
  • ただし「仮」のままとしておかないように注意!!

「その場でサインしないとダメなんです!」という相手の強引さに、違和感を覚えることがあるかもしれません。

その違和感、大切にしてください

契約内容をちゃんと確認させてくれない相手、
事情を話しても聞く耳を持たない相手とは、無理に取引しないという経営判断も必要です。

「今すぐサインしてください」という言葉に押されてしまいそうになったときこそ、
ひと呼吸おいて、「なぜ急ぐのか?」を見極める目を持つようにしましょう。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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