ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)のほか、コミュニティFM局の構成作家兼パーソナリティとしての活動もさせていただいております。
📚 書籍情報
書名:『エフェクチュエーション~優れた起業家が実践する「5つの原則」』
著者:吉田満梨・中村隆太
出版社:ダイヤモンド社
発売:2023年
「先が読めない時代」に必要なのは、予測ではなく“創造”する力
「先のことなんて、何もわからない」
そんな実感を抱えている方に、ぜひ読んでほしい一冊があります。
それが、『エフェクチュエーション ~優れた起業家が実践する「5つの原則」』(吉田満梨/中村隆太 著、ダイヤモンド社)です。
この本では、世界中の優れた起業家たちが共通して実践している「思考パターン」を、「エフェクチュエーション(Effectuation)」という理論に基づいて紹介しています。
そしてこの思考法は、起業家だけでなく、会社員やフリーランス、さらには学生や家庭人の日常にも応用できる「生きる力」そのものだと感じさせてくれる内容でした。
著者紹介:実務家と研究者、異なる視点が融合
本書の著者は2名。
- 吉田満梨さん(神戸大学大学院 経営学研究科 准教授)
- 中村隆太さん(サイボウズ執行役員ほか、複数の組織で活躍)
アカデミックとビジネスの両面からエフェクチュエーションを語ることで、理論だけでなく「実践可能な知恵」として読者に届けてくれます。
エフェクチュエーションとは?予測ではなく、あるもので始める意思決定法
エフェクチュエーションとは、2008年に米・バージニア大学のサラス・サラスバシー教授が提唱した、不確実な環境下で成果を上げている起業家に共通する意思決定の論理です。
従来のビジネス戦略では、「将来を予測 → 目標を立て → 計画を練って行動する」という流れ(これを「コーゼーション」と言います)が主流でした。
しかしエフェクチュエーションでは、それとは逆に「今あるものから始めて未来を作る」アプローチをとります。
たとえるなら「冷蔵庫にあるもので何を作れるか?」
エフェクチュエーションの考え方は、料理の例で理解しやすくなります。
- エフェクチュエーション型:冷蔵庫にある材料で何が作れるかを考える
- コーゼーション型:パスタを作りたいから、その材料を買いに行く
VUCA(ブーカ)と呼ばれる変化と不確実性の高い時代においては、理想から逆算するよりも、「今持っているもの」で即座に動く方が現実的かつ強い、というのが本書の主張です。
実際の事例:偶然の“失敗”から生まれたヒット商品
本書では、エフェクチュエーション的アプローチから生まれた成功例として、次のような事例が紹介されています。
スリーエム社「ポスト・イット」
本来は強力な接着剤を開発するはずが、「よくくっつくけどすぐ剥がれる」という中途半端な接着剤が完成。
これを「失敗」とせず、「何度も貼ってはがせる」という強みとして製品化したのが「ポスト・イット」です。
浪花屋製菓「柿の種」
金型のミスで偶然できた変な形のあられを、そのまま販売したところ「柿の種に似ていて面白い」と人気に。顧客の声をきっかけにロングセラー商品となりました。
このように、予測どおりに進めるのではなく、「偶然や失敗を活かす姿勢」こそがエフェクチュエーションの神髄です。
エフェクチュエーション「5つの行動原則」とは?
それでは、実際にどのような思考と行動がエフェクチュエーションの核となるのでしょうか。
本書で紹介されている5つの原則を見ていきましょう。
①「手中の鳥」の原則(Bird in Hand Principle)
すでに手元にあるものから始めよ
- 自分が「何者で」「何を知っていて」「誰と繋がっているか」を棚卸し
- 資源の少なさではなく、自分の強みやネットワークに基づいて可能性を広げていく
🔍 自分に問いかけたい3つの質問
- 自分は何者か?(特徴・価値観・スキル)
- 自分は何を知っているか?(知識・経験)
- 自分は誰を知っているか?(人脈・つながり)
②「許容可能な損失」の原則(Affordable Loss Principle)
どれだけ得られるかではなく、どこまで失ってもいいかで判断する
- 大きなリターンを期待するのではなく、「これくらいの損なら許せる」というラインを決めてチャレンジする
- スタートアップや副業、投資にも有効な考え方
③「クレイジーキルト」の原則(Crazy Quilt Principle)
多様な人と協力しながら未来を縫い合わせていく
- 名前の通り、色も形もバラバラな布を縫い合わせたパッチワークのように
- 顧客、取引先、行政など、多様なステークホルダーと共に価値をつくる
- 完璧な計画より、柔軟な共創関係を重視
④「レモネード」の原則(Lemonade Principle)
予期せぬ出来事を、機会として活かす
- トラブルや想定外の事態を「チャンス」として利用
- 「レモンを掴まされたら、レモネードを作れ」の精神で、禍を転じて福とする
⑤「飛行中のパイロット」の原則(Pilot in the Plane Principle)
未来は自分の行動で創るもの
- 環境の変化を「待つ」のではなく、自分の舵取りで未来を形づくる
- 「人のせい」や「世の中のせい」にしない思考法が力強い
起業家だけでなく、私たち一人ひとりに役立つ思考法
「エフェクチュエーション」というと、専門的なビジネス書に見えるかもしれませんが、実際に読んでみると内容はとても実用的です。
- キャリアに悩んだとき
- 新しいことを始めたいとき
- 失敗が怖くて動けないとき
そんなタイミングで、「今あるものでまず一歩踏み出す」というこの考え方は大きな勇気をくれるはずです。
まとめ:未来は“読む”ものではなく、“創る”もの
VUCAの時代、将来は予測困難であることが前提です。
そんな時代に必要なのは、「理想的な未来を目指して計画通りに動く」ことではなく、自分の手持ちのカードで今すぐ動き出し、未来を創っていく力です。
『エフェクチュエーション』は、その第一歩となるマインドセットを与えてくれる、実践的かつ刺激的な一冊でした。
「考えすぎて動けない」人こそ、ぜひ読んでみてください。
ラジオ番組でも紹介!(FM KawagichiちょいワルMonday)
本書について、私が出演しているラジオ番組(FM KawagichiちょいワルMonday)でも紹介させていただきました!
▽音声をお聴きになるには、以下をクリックください(音声配信アプリstand.fmへ)。
最後まで、お読みくださりありがとうございました!
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