ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書って必要?創業時のはじめての契約書+業務委託契約書ひな形つき(2026年版)

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


これから事業を始める方にとって、最初の関心は「どうやって仕事を取るか」という“攻めの部分”に向きがちです。
SNSでの発信や知人からの紹介などを経て、初めての案件を受注できたときの喜びは、何ものにも代えがたいものです。

しかし、その“はじめての受注”こそ、契約書の必要性を意識すべきタイミングです。

「契約書なんて、大企業同士の話でしょ」
「個人事業主のうちは、書面がなくても信頼で大丈夫」

そう思われるかもしれません。
ですが実際には、仕事を正式に受けた後のトラブルこそ、契約書の有無で大きく明暗が分かれるのです。


以下のような事例は、創業初期の方からよく伺うものです。

  • 指示どおりに納品したのに「思っていたものと違う」と言われ、再修正が続いた
  • 修正の回数制限を決めていなかったため、結果的に大幅な工数が発生
  • 納品後に連絡が取れなくなり、報酬が支払われない
  • 「成果が出なかったから報酬は出せない」と一方的に支払いを拒否された

いずれも、業務の内容・範囲・報酬条件などを契約書で明確にしておけば、未然に防げた可能性のある事例です。


契約書とは、形式的な文書ではありません。
それは、「お互いの理解と期待をすり合わせ、安心して取引を進めるための合意事項」を文字にしたものです。

特にフリーランスや個人事業主として仕事を請ける場合には、以下のような内容を明確にしておくことが、自身を守るための重要なステップとなります。

  • 報酬額と支払条件
  • 業務の範囲と成果物の定義
  • 納品期限と手段
  • 修正対応の上限
  • 著作権や秘密保持の取り決め

実務上、契約書を取り交わすことを「契約を巻く」と表現する場合があります。

ただし、契約書さえあればすべてのトラブルが防げるわけではありません
契約書はあくまでもリスクを低減する手段のひとつです。

しかし、契約書作成のプロセスを通して、

  • 相手が契約書の内容を真摯に確認してくれるか
  • 条件調整の場面で誠実に対応してくれるか
  • 文書化を軽んじていないか

といった、相手の姿勢や信頼性をある程度見極めることが可能になります。

つまり、契約書の作成は報酬を守るだけでなく、
「安心して取引を進められる相手かどうか」を確かめる機会でもあるのです。


業務委託契約書とは、業務単位で発注者から業務を受託する際に締結する契約書です。

たとえば以下のようなケースで必要とされます:

  • Webサイトやロゴの制作を受注した
  • 記事執筆やコンテンツ制作を請け負った
  • SNS運用や広告業務を委託された
  • システム開発を部分的に担当することになった

いずれも、雇用関係ではなく、「一定の業務を一定の対価で受託する」関係である点が特徴です。


以下は、業務委託契約と雇用契約との主な違いを整理したものです。

項目業務委託契約(請負側)雇用契約(労働者側)
指揮命令原則なし(業務の進め方は自由)あり(労働時間や手法に制限)
報酬成果物に対して支払い働いた時間に対して給与支給
社会保険原則として加入対象外会社が手続・保険料負担あり
労働法の適用なし(民法ベース)あり(労基法等が適用される)

以下は、はじめて業務を受託する個人事業主やフリーランスの方でも使いやすい、簡易な雛形です。必要に応じて修正回数や著作権に関する条項を追加することをおすすめします。
最低限の取決めとなっておりますので、必要に応じて専門家に相談する等しながら、条件を整える必要があります。

📄 業務委託契約書(簡易ひな形)

業務委託契約書

〇〇(以下「甲」という)と、△△(以下「乙」という)は、以下のとおり業務委託契約を締結する。

第1条(業務内容)
甲は乙に対し、以下の業務を委託し、乙はこれを受託する。
・ホームページ制作業務一式 等

第2条(報酬)
甲は乙に対し、業務完了後、報酬として金○○円(税込)を支払う。

第3条(納期)
乙は、令和○年○月○日までに本業務を完了し、電子メールにて納品する。

第4条(秘密保持)
乙は、業務上知り得た甲の秘密情報を第三者に漏洩してはならない。

第5条(契約期間)
本契約の有効期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとする。

第6条(その他)
本契約に定めのない事項については、甲乙協議のうえ誠意をもって解決する。

以上、本契約の成立を証するため、甲乙は本書2通を作成し、署名・押印のうえ各自1通を保有する。

近年の創業支援セミナーでは、「マーケティング」「営業活動」「SNS活用」など、集客や受注に向けた内容が充実しています。
一方で、「仕事を受けた後」の実務――特に契約、納品、代金回収に関する基礎知識は、意外と見落とされがちです。

創業初期のトラブルには、「契約書がなかった」「内容を正しく理解していなかった」という要因が少なからず関わっています。

本記事の内容は、こうした“契約書を巻くまで”を含めた実践的支援として、創業セミナーの仕上げパートに組み込んでいただくことが可能です。

「契約書は難しそう」と敬遠されがちなテーマだからこそ、
実例や雛形を交えて、わかりやすく伝える機会が求められています。

【過去の事例】
さいたま市産業創造財団様主催「SAITAMAオンライン起業塾
▼アンケート結果から
・これから起業します。契約書が重要であることがよくわかりました。
・創業支援事例をたくさん知っている先生なので、具体的なエピソードが多く勉強になりました。
・商談においては契約書がキモになることを肝に銘じます。
ほか多数

弊所では、商工会・商工会議所、創業支援機関での「契約書の読み方・作り方」や「よくあるトラブルの未然防止」をテーマとしたセミナーや講義のご依頼を随時お受け付けしております。
ご関心のあるご担当者様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


【ご質問受付中】

「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【契約書のトリセツ】中小ベンチャー企業の契約書は「人の問題」をどう整理するかがカギです前のページ

【契約書のトリセツ】印紙の消印ってなに?実務での疑問をわかりやすく解説!(2026年版)次のページ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ご連絡先

行政書士大森法務事務所
home@omoripartners.com
048-814-1241
〒330-0062
埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1-B1
▼契約書類作成
▼セミナー講師依頼
(契約書、ビジネス法務、コンプライアンス)
▼台本作成
(研修動画、ナレーション、ラジオ番組)

stand.fm『契約書に強くなる!ラジオ』【週2回(水・日)更新】
FM川口『ちょいワルMonday200』【毎月第2第4月曜日19:00~生放送】
2026年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
PAGE TOP