ビジネス法務

その会社、本当に存在してる?架空法人との契約トラブルを防ぐポイント【保存版チェックリスト付】

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


「新規取引先との商談でトントン拍子で話が進んだ」
「社名も名刺もちゃんとしていたし、ホームページもある」
——そんな場合でも、まさかの「存在しない会社(=架空の法人)」と契約してしまうケースがあります。

これは決して都市伝説でも物珍しい話でもありません。
実際、私のところにも定期的に「気づいたら架空法人と契約してしまっていた!」という話が寄せられてきます。


特に若手の営業パーソンが陥りがちなケースをいくつかご紹介します。

ケース1:知人紹介で安心しきってしまった

紹介者の信用だけで判断し、登記確認などの基本調査を怠ってしまったパターン。

ケース2:急ぎの商談で「とりあえず契約」してしまった

先方から急かされたり、営業予算のノルマに追われている時など、スピード重視で契約を優先し、法人の実在確認を後回しにした結果、トラブルに発展。

ケース3:それっぽい会社名・名刺・Webサイトで信じてしまった

社名が有名企業に似ていたり、ホームページが見やすいだけで「ちゃんとした会社」と錯覚してしまう例もあります。


事例1:営業先の「株式会社〇〇」──実は登記されていない団体だった

契約後、代金未払いで調査をしたところ、法人格がなかった。個人事業主による詐称で、法人番号もなし。
教訓: 名刺や請求書の形式だけで信用しない。

事例2:HPもあるし取引先も有名企業──と思い込んでいたが…

バーチャルオフィスを本店とする“見せかけ法人”で、代表者名も偽名。成果物も納品されず逃亡。
教訓: Webサイトやロゴの信用だけで判断しない。有名企業と本当に取引しているかは契約書や帳簿を自分の目で確かめてみるまでは分からない。

事例3:契約書には法人名記載、でも実際の口座は個人名義だった

契約時は法人名だったが、振込先は個人口座。後に「法人化していなかった」と判明。
教訓: 振込口座と法人情報が一致しているかを確認する。


一見すると当然のように思えるかもしれませんが、なぜ架空の法人との契約がこれほどまでに危険で、避けるべきことなのでしょうか?その理由をここで改めて整理しておきます。

1.法的責任を問う相手がいない

法人には「法人格(法的に認められた存在)」があることで、契約に関する義務や責任が生じます。
架空法人にはこの法人格がないため、契約違反や損害が発生しても、そもそも法的責任を問える主体が存在しません。

2.金銭トラブルの回収が極めて困難

契約を履行しない、報酬が支払われないといった場合でも、相手が存在しなければ請求のしようがありません。
法的手段に訴えるにしても、訴える法人が実在しないため、強制執行や差押えといった法的手段も使えません。

3.二次被害の可能性もある

一度契約したことを利用されて「●●社さんも取引してますよ」と他社をだます道具にされるリスクもあります。
これは皆さんの会社の信用を悪用されるという意味で、極めて重大です。


チェックポイント要注意の兆候
名刺に登記簿上の本店所在地が記載されていないそもそも法人格がない可能性
振込先が「個人名義」契約主体と異なる=後々の回収リスク大
法人番号が見つからない架空または登記前の可能性
住所がバーチャルオフィス実体のない会社の可能性
Webサイトの会社情報が曖昧“外観作り”の可能性

✅ 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得する

会社の正式名称・所在地・代表者・資本金などが記載されており、法務局やオンラインで取得できます。

✅ 国税庁「法人番号公表サイト」を使う

法人番号公表サイトでは会社名(商号)や所在地を入力すれば、実在する法人かどうかが即座に確認可能です。
無料で利用できるので、知っておくと便利です。


■ なぜ見極めが重要なのか?

  • 個人事業主として営業している相手に、法人との契約書を交わすと無効になる可能性も
  • 「株式会社〇〇」と名乗っていても、登記されていなければ法律に抵触する可能性大(会社法、不正競争防止法など)

【参考】会社法第7条、第8条(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第7条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

第8条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

■ どうやって確認する?

  • 法人番号公表サイトに登録がなければ、法人格は未取得
  • 名刺・請求書・契約書の記載内容と登記情報が一致しているかを確認

  1. 相手の社名を法人番号公表サイトで検索
  2. 登記簿謄本の取得(とくに大きな金額が動く契約前)
  3. 名刺や会社案内に記載されている情報とネット情報を照合

この3ステップで、ほとんどの“架空法人リスク”は防げます。


契約書を交わすことは、ビジネスのスタートラインに立つということです。
取引先の実在確認は、営業活動におけるイロハの「イ」。
契約トラブルを未然に防ぐだけでなく、皆さんの会社やあなた自身の信用を守ることにもつながります。

ぜひ、「法人番号の確認」や「登記情報のチェック」を習慣にするようにしてください。

確認項目確認内容・方法
法人番号の確認国税庁の「法人番号公表サイト」で検索し、該当法人が存在するか確認する
法人番号公表サイト
登記簿の確認登記情報提供サービスまたは法務局で登記簿を取得し、
正式名称・所在地・代表者名をチェック
書類の表記確認契約書・請求書・名刺の会社名が一貫しているか、不自然な表記がないか確認
ウェブサイトの確認会社概要ページや「特定商取引法に基づく表記」で法人情報の記載をチェック
法人格の確認依頼「法人番号を教えていただけますか?」と自然に質問し、正当な反応かを確認

⚠ 注意すべき兆候(赤信号)

  • 「株式会社」と名乗っているのに法人番号が見つからない
  • 契約書に個人の印鑑しか押されていない
  • 名刺や請求書の情報がバラバラで整合性がない
  • ウェブサイトに会社所在地や代表者情報の記載がない
  • 契約書に法人名が書かれているのに個人が署名している

✅ ワンポイント

「株式会社」と書かれていても、登記されていなければ“実体のない会社”です。
トラブルの多くは「相手が誰か」を見誤ることから始まります。
一手間かけて、確かな相手かどうかをチェックしてから契約しましょう。

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