ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
はじめに
入社して営業の現場に出ると、「契約書」や「覚書(おぼえがき)」、「仮発注書」といった言葉に出会うことがあると思います。
これらの言葉はなんとなく知っていても、
それぞれの違いや注意点を正しく理解しているか?と聞かれると、はっきり答えられない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、営業職として覚えておきたい契約書類の基本的な知識を、わかりやすく整理していきます。
契約書も覚書も「契約」としての力は同じです
まず覚えておいていただきたいのは、
「契約書」と「覚書」は、どちらも契約としての効力に違いはない
ということです。
タイトルのみでで判断はNG
文書の上部に「契約書」や「覚書」と書かれていると、
なんとなく「契約書のほうが強そう」「覚書は軽い約束っぽい」と感じるかもしれません。
しかし、法律の世界では、タイトルではなく中身(合意の内容)が大事です。
両社の合意内容がきちんと書かれていて、お互いの署名(または押印)があれば、
その文書は「契約」としてきちんと成立しています。
「覚書なら印紙はいらない」…それ、誤解です!
印紙(いんし)というのは、契約書に貼ることで税金を納める、いわゆる「収入印紙」のことです。
「覚書にしておけば、印紙を貼らなくていいんですよね?」という話を聞くことがありますが、
これは正しくありません。
✔ 印紙が必要かどうかは「中身」で決まります
たとえば、報酬金額や契約の内容(請負や業務委託など)が書かれていれば、
タイトルが「覚書」であっても、印紙を貼る必要がある場合があります。
つまり、
- 「タイトルで判断してはいけない」
- 「内容に注意が必要」
という点では、印紙の問題も同じです。
契約内容は「記憶」より「記録」で残すこと
営業の現場では、「この金額でやりましょう」「じゃあ、その納期でお願い」といった口頭のやり取りで進むこともあります。
でも、あとになって
- 「そんな話はしてない」
- 「言った・言わないで揉めている」
というケースも決して珍しくありません。
✔ 人の記憶はあいまいです
たとえば「3日前のお昼ごはん、何を食べたか」を思い出せますか?
私たちの記憶は、意外とあいまいで変わりやすいもの。
だからこそ、大事なことは“記録”として残すことが基本です。
契約も同じで、「記憶」ではなく「記録」に残す。これがトラブルを防ぐ一番の方法です。
覚書って、どんなときに使うの?
覚書は、次のような場面でよく使われます。
- すでに結んだ契約の一部を変更したいとき
- 契約書ほどではないけれど、きちんと合意を残しておきたいとき
✔ 契約書を全部作り直さなくてもいいケースに便利
たとえば、「納品日を1週間遅らせたい」といった、一部の変更だけを記録したいときに、
覚書が使われることが多いです。
中身さえしっかりしていれば、覚書も契約書と同じように有効な“契約文書”です。
「仮契約書」「仮発注書」は要注意!
営業現場では、「とりあえず仮で…」という言葉を使うことがあると思います。
しかし、「仮契約書」や「仮発注書」というタイトルの書類には注意が必要です。
✔ 内容によっては「正式な契約」と見なされることも
たとえば、「仮発注書」に
- 商品名や納期
- 金額や数量
- 発注者と受注者のサイン
が書かれていた場合。
それをもとに相手が準備を進めてしまっていたら、
たとえ「仮」と書いてあっても、「これは契約だ」と判断されてしまうケースがあります。
タイトルが“仮”でも、内容が“本気”なら、それは契約として扱われる可能性があるのです。
電子契約も、紙の契約と同様に有効です
最近では、契約書をPDFやクラウド上でやり取りする「電子契約」も広まっています。
✔ 電子契約でも、法的には問題ありません
電子契約も、電子署名などの仕組みがあれば、
紙の契約書と同じように法的に有効とされています。
営業職としては、
- お客様が電子契約に対応しているか
- サインする人の権限は正しいか
- 電子契約サービスの使い方を理解しているか
といった点に注意することが大切です。
まとめ|“タイトルより中身”
契約書、覚書、仮発注書……。いろんな名前の文書がありますが、
営業職にとって本当に大事なのは、「タイトル」ではなく「中身と合意」です。
✅ 入社1年目の営業職が知っていると差がつくポイント
- 契約書も覚書も、法的には同じ効力がある
- 印紙が必要かどうかは「タイトル」ではなく「内容」で判断される
- 大事な合意は必ず「記録」で残す(口約束は避ける)
- 覚書は、一部変更や補足の合意に便利な形式
- 仮契約書・仮発注書はトラブルのもと。取り扱いは慎重に
- 電子契約も正式な契約として有効。基本知識を押さえておく
まだ慣れないうちは、契約に関することに不安や疑問を感じることもあるかと思います。
でも、「知らないまま対応すること」が一番リスクにつながります。
迷ったときは、社内の法務部門や上司に確認を取りながら進めるのが、結果的に自分の評価や信頼にもつながります。
この記事が、営業としての一歩を支える“安心材料”になれば嬉しいです。
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