ビジネス法務

【契約書のトリセツ】渡した備品“誰のモノ”貸与品トラブルと契約書

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. はじめに

「ちょっと貸しただけなのに、返ってこない」
「壊されたけど、修理代はどっちが払うの?」

そんな“貸与品トラブル”、実はどの業種でも起きています。

パソコン、撮影機材、展示資材、制服、試作機…。
貸与品(たいよひん)は、製造・IT・デザイン・教育など、
あらゆる取引現場で登場します。

でも、ルールを決めておかないと「渡した=あげた」と誤解されることも。
今日はそんな「貸与品トラブル」を、契約の視点からやさしく整理してみましょう。


2.「貸す」と「譲る」はまったく違う

貸与品とは、所有権は自分(貸主)に残したまま、相手に一時的に使わせるもの。

でも、書面でルールを決めていないと、
「え、それってもうウチの備品ですよね?」なんて誤解をされてしまうことがあります。

トラブルが起こるのは、信頼が壊れたからではなく――
信頼の形を決めていなかったから。

だからこそ、契約書で「貸すとき」「使うとき」「返すとき」を整理しておく。
たったそれだけで、誤解の芽をつぶすことができます。


3.トラブルを防ぐ5つの視点

貸与品の取り扱いを契約書で明確にしておくなら、
次の5点を押さえておくと安心です👇

1️⃣ 貸与の目的と使用範囲を明確にする
 業務目的を限定し、転用・転貸・譲渡を禁止。

2️⃣ 保管・管理方法を定める
 「善良な管理者の注意」をもって扱う旨を明記。

3️⃣ 破損・紛失時の補償ルールを決める
 修理や代替の費用負担をあらかじめ定めておく。

4️⃣ 返還の期限と方法を明示する
 契約終了時や返還請求があったときの対応を明文化。

5️⃣ 貸与品リストを別紙で添付する
 品名・型番・数量・状態を一覧化しておく。

これらを整えておくだけで、
「うちはこう思ってたんですけど…」というトラブルは激減します。


4.契約書に書いておくと安心な条文

実務で使いやすい形にまとめると、たとえばこんな条文になります👇

🔖参考条文

(貸与品の貸与及び使用)
甲は、乙に対し、別紙貸与品リスト記載の物品(以下「貸与品」という。)を貸与する。
乙は、貸与品を本契約に基づく業務遂行目的にのみ使用し、これを第三者に譲渡・転貸・担保提供してはならない。

(管理及び損害)
乙は、貸与品を善良なる管理者の注意をもって保管・使用しなければならない。
貸与品の滅失・損傷が乙の責に帰すべき事由による場合、乙は甲の指示に従い修理または代替を行い、その費用を負担する。

(返還)
乙は、契約終了または甲からの返還請求があったときは、遅滞なく貸与品を原状に復して返還するものとする。
返還費用は乙の負担とする。

この条文の目的は、“責任を押しつけること”ではなく、
「どちらが、どの段階で、何を守るか」を見える化すること。

「壊した・返さない」という事実の前に、
“どんな約束だったのか”を明確にしておくことで、感情的な衝突を防ぎやすくなります。

※上記の条文は一般的な例示であり、実際の契約条件・取引内容・業種に応じて修正・特約を設ける必要があります。
特に金額・保険・消耗品の扱いなどは、事業内容に合わせて具体的に定めることをおすすめします。


5.信頼を“言葉で守る”という発想

契約書は「信じていないから作る」ものだと思われがちですが、
本当はその逆です。

信頼を長く保つために作る。
それが契約書の真の役割です。

感覚的に理解していることを、
お互いに確認し合える“共通言語”にしておく。
貸与品条項は、そのための最低限のルールブックです。

モノの管理ではなく、関係の管理
そこにこそ、ビジネス法務の価値があります。


6.まとめ

貸与品は“形のある信頼”。
だからこそ、感覚ではなくルールで守ることが大切です。

  • 使用目的を限定しておく
  • 所有権と責任を明確にしておく
  • 返還のルールを決めておく

この3つを押さえておくだけで、トラブルの多くは防げます。

「ちょっと貸しただけなのに…」
――そう思う前に、契約で信頼を可視化しておく
それが、現代のビジネス法務の基本姿勢です。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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