ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書は「速やかに」と「○営業日以内」でこんなに変わる!~「受入検査」条項の落とし穴とキャッシュフロー

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. はじめに

講師をつとめさせていただいたセミナーのアンケートの中で、印象的だったご意見がこちら。

「契約書の各条文が、誰にとって有利かどうかを説明してくれてとてもよかったです」

このようなご感想をいただき、私自身とても嬉しく思っています。
契約書は本当に奥が深く、解釈や影響が立場によって大きく異なること多いのです。

「売主(お金をもらう側)の立場か」「買主(お金を支払う側)」かによって、
まったく違う結果になることがあります。


ここで少し専門的な話をしましょう。
契約書や法律文書で頻出する言葉に、
直ちに
遅滞なく
速やかに
があります。
日常用語としては似たように感じるこれらの言葉。
実は法的には明確に違いがあります。

用語意味の強さ法的意味
直ちに強い即座に。時間的猶予なし
遅滞なく中程度合理的な理由がある場合のみ遅延が許される
速やかに弱いできるだけ早く。訓示的表現

【参考文献】
契約用語使い分け辞典』日本組織内弁護士協会監修(新日本法規)

この違いを理解していないと、契約実務で大きな誤解が生じることがあります。


たとえば売買契約書などでよく出てくる「受入検査」に関する条項。

売主側としては、

「直ちに」や「3営業日以内」に検査をしてもらいたい(早く請求書を出したい)

一方、買主側は、

「速やかに」にしておいて、検査を自分のペースで行いたい(支払いタイミングを遅らせたい)

このように、たった一言の違いがキャッシュフローを大きく左右するのです。


以下のように書き方一つで有利不利が分かれます。

・売主に有利な条文例:明確な期限と自動合格(みなし検収)のルールにより、売主は請求書を出しやすくなる

買主は、納入後3営業日以内(売主基準)に受入検査を行い、不合格があれば売主に通知する。当該通知がない場合、売主は受入検査に合格とみなすことができる。

・買主に有利な条文例:明確な期限がなく、買主が自分の都合で検査できる

買主は、納入の都度、速やかに受入検査を行う。

このように、条文中の細かい表現一つが売上や資金繰りに直結します。


上記具体例のように「3営業日以内」「速やかに」の選び方ひとつで、
・請求書をいつ発行できるか
・売上がいつ立つか
・入金のタイミングがどうなるか

が大きく変わります。

実際、弊所のクライアント企業において、売買契約書(自社雛形)の受入検査条項において、
「速やかに」となっていた条文を「7営業日以内」に変更し、
さらに不合格通知がなければ自動合格(みなし検収)とする条項を入れたことで、
キャッシュフローが安定した事例もあります。

契約書では「損害賠償」「違約金」「契約不適合責任」が花形と思われがちです。
しかし、実は、「検査」「納品」「請求」「支払」などの日常的な業務プロセスに絡む条項こそ重要であり、
企業経営において一番重要な「儲け」や「資金繰り」を改善するヒントが潜んでいたりするのです。


契約書を読むときは、以下の視点を持つと“プロっぽく”なります。

・条文がどちらの立場に有利かを考える
厳密に定めるか、あえてフワッとした表現にしていた方がよいのかを見極める
・上記「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」などの法律用語の意味を意識する

これだけでも、契約書の読み方が変わります!


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


【ご質問受付中】

「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

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上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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