契約書

「この限りでない」は難しい【2026年版】

※本記事は、実務でのご相談内容や契約実務の変化を踏まえ、
 2025年12月31日に加筆修正した【2026年版】です。

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


弊所で契約書を作成のお手伝いをさせていただいた場合には、
ご依頼者様への説明のためと「読み合わせ」を行うのですが、
契約書や法律に出てくる

「この限りでない」

という言い回しが、難しいということに気がつきました。
これは、セミナー講師の仕事をする際も感じています。

【2025.4.23追加】
本記事につきまして、検索エンジン経由でたくさんのアクセスをいただいております。
アクセスありがとうございます。

「専門的な内容になっているので、もう少しサクッと分かるようにしてくれないか?」
という読者の皆さまの声にお応えして、「エッセンシャル版」も掲載しております。あわせてご参照ください。


「この限りでない」法律や契約書では、以下のように使われています。

直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。

民法734条(近親者間の婚姻の禁止)

民法の中でも有名な条文かと思われます。
「近親婚」は原則NG。「いとこ」同士なら4親等離れているから結婚できる。
↑これは原則で、養子と養方の傍系は「この限りでない」

本物件の引渡前に、本物件が滅失したときは、買主は、この契約を解除することができる。ただし、売主の責に帰すことのできない事由によって滅失したときは、この限りでない。

契約書によくある条文

本物件(ここでは「建物」としましょう。)の引き渡し前に、
建物が消滅してなくなってしまった時には、買主は、この契約を解除することができる。
↑これは原則で、「売主の責任だ!!」と言えない理由
(この前後の契約条件とも照らし合わせて考えないといけないので、
ケースバイケースではあるが、一般的には例えば、地震等の不可抗力)
によって、建物が消滅してなくなってしまった時には「この限りでない」

「この限りでない」は上記のように使われています。

ちなみに、この記事を書く際、
「e-GOV」という法令サイトの民法にて「この限りでない」で検索をかけてみたところ、
「152箇所」表示されました。民法は全部で1050条あるので、
単純計算で約15%の条文で使われていることになります。結構な頻度かと思います。

私たち、法律系の専門家にとっては「ごく当たり前」。
しかし「この限りでない」。

私たち法律系の専門家でも日常会話で使うことは希なのではないでしょうか?

法律に不慣れなご依頼者様側にとっては難しい言い回しと感じるのも頷けます。

少々は無しは逸れますが、
専門家とご依頼者様との間のボタンの掛け違いや、
心が離れてしまう原因が、
「使う言葉のギャップ」にあるのではないか?と思うことが多々あり、
法律用語や契約書特有の言い回しについては、
元々のテイストを失わない範囲で、
易しい言葉に言い換えるように努力はしています。


さて、「この限りでない」の正体です。こういう時に頼りになるのがこちらの本。

契約用語使い分け辞典』日本組織内弁護士協会監修(新日本法規)
日頃から契約書を作成する方、お手元に一冊あると、
自分が作成した契約書に自信がもてるようになります。

タイトルそのままで、法律用語や契約書特有の言い回しについて、事細かに解説されている本。
おそらく、私自身、一番開く本です。

この限りでない」について、このように解説されています。

「この限りでない」は、ある事項について、その前に出てくる規定の全部又は一部の適用を除外する場合に用いられる表現です。「この限りではない」と表現されることもあります。
【中略】
このように、ただし書きの末尾に使用されるのが一般的です。

『契約用語使い分け時点』日本組織内弁護士協会監修(新日本法規)

「この限りでない」について、よくご質問をいただくのが、

「この」って何を指すの??

何を指すというよりも、条文の前半部分で述べられている「原則」についての「例外」が示されています。
原則は○○○だけど、△△△のケースではこれがあてはまらない
こんな感じで「捉える」と少しは分かりやすくなるんじゃないかと思われます。

あるいは、『法律用語辞典(第5版)』(有斐閣)の「この限りでない」
の項目にはこんなくだりがあります。

この-かぎりで-ない【このかぎりでない】
【略】…通常は「ただし書」の終わりに使われる。なお、この言葉は、消極的にある規定を打ち消したり除外したりすことに意味があり、積極的にある内容を規定しているものではない。

『法律用語辞典(第5版)』(有斐閣)

とはいえ、「誤解」を生む原因になってはいけないので、
私自身はあまり使わないようにしています。

「法律的な言い回しが多い伝統的な表現よりも、読みやすい契約書の方がいい!」

というオーダーが多いという背景もあります。

例えば、上述の契約書によくある条文では、例えば、以下のようにリライトします。

本物件の引渡前に、本物件が滅失したときは、買主は、この契約を解除することができる。ただし、売主の責に帰すことのできない事由によって滅失したときは、買主は、この契約を解除することはできない

契約書によくある条文

「この限りでない」以外にも、「契約書の表現としては正しいのに誤解を生む原因となり得る独特な表現」はいくつもあります。
また機会を見つけて、私なりのリライト方法について、拙いながらも解説させていただく機会を作っていきたいと考えております。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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