ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. はじめに
- 2. 問題は「ひな形」ではなく「空欄」
- 3. ポイント①契約の「範囲」が空欄だと何が起きるのか
- 4. ポイント②契約期間が空欄だと何が問題か
- 5. ポイント③金額が書かれていない契約書の危険性
- 6. 実務の視点:数字を間違えたらどうするか
- 7. ひな形は「考えなくていい道具」ではない
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
契約書のひな形は、とても便利です。
インターネットで探せばすぐに手に入りますし、
「とりあえずこれを使っておけば大丈夫だろう」と思っている方も多いと思います。
ただ、行政書士として、またセミナー講師として、
すでに締結済みの契約書,
つまり、ハンコが押され、サインも入っている契約書を確認していると、
「これは、あまり契約書を結んだ意味がないかもしれないな……」
と感じる場面に出会うことがあります。
原因は、だいたい決まっています。
ひな形そのものではなく、「空欄のまま締結されている」ことです。
2. 問題は「ひな形」ではなく「空欄」
先に結論をお伝えします。
契約書のひな形は悪者ではありません。
しかし、範囲・期間・金額が空欄のままでは、
契約書としての意味が大きく弱くなります。
実務でよく見かけるのは、次の3点が抜け落ちている契約書です。
- 契約の範囲が不明確
- 契約期間が書かれていない
- 金額が記載されていない
以下、それぞれについて見ていきましょう。
3. ポイント①契約の「範囲」が空欄だと何が起きるのか
特にフリーランスやクリエイターの方に多いのが、このケースです。
契約の範囲が曖昧なために、
- 追加作業まで「契約の範囲内」と言われる
- 本来は別料金にしたかった業務も含まれてしまう
- 結果として、想定外のタダ働きになる
という事態が起こります。
「契約を結んだから安心」と思っていたのに、
実際にはどこまでが契約の対象なのか分からない状態です。
「全部は書ききれない」という場合でも、
- 別紙
- 別表
- 業務内容一覧
といった形で、契約の範囲を補足する方法はいくらでもあります。
業務委託契約では特に、
この「範囲の明確化」がトラブル防止の要になります。
4. ポイント②契約期間が空欄だと何が問題か
次に多いのが、契約期間が書かれていないケースです。
契約期間は、
- 納期の基準
- 報酬が発生する期間
- 契約がいつから始まったのか
を判断するための、重要な情報です。
にもかかわらず、
- 契約期間が未記入
- 締結日が空欄
という契約書は、実務上かなり見かけます。
こうした状態だと、
- いつまで業務を続ける義務があるのか
- いつまで支払いが発生するのか
が曖昧になり、
想定していなかったトラブルに発展しやすくなります。
日付に関する数字は、
「あとで入れよう」ではなく、必ず埋めておく。
それだけでもリスクは大きく下がります。
5. ポイント③金額が書かれていない契約書の危険性
最後は、金額です。
笑い話のようですが、
金額が書かれていないまま締結されている契約書は、実際に多く存在します。
背景として考えられるのは、
- 先行発注を急いでいた
- 金額確定前に署名だけ済ませた
- 後で記入するつもりだった
といった事情でしょう。
しかし、
金額が書かれていない契約書は、
契約書としての機能が十分に果たせないケースも多いと感じています。
また、
- 税込か税抜か
- 振込手数料についての扱い
についても明記しておかないと、
支払い段階で大きな認識のズレが生じます。
6. 実務の視点:数字を間違えたらどうするか
期間や金額など、
数字を間違えた場合の対応も重要です。
訂正印で対応する方法もありますが、
実務上は、
数字の誤りが見つかった場合は、
可能であれば契約書を作り直す
方が、安全なケースが多いと感じています。
桁の違い、日付のズレは、
後から最も揉めやすいポイントだからです。
7. ひな形は「考えなくていい道具」ではない
契約書のひな形は、
「そのまま使えば安心」ではありません。
考えるべきポイントを、見落とさないためのツールです。
範囲・期間・金額。
この3つに空欄を残さないこと。
それだけでも、
トラブルを招きやすいポイントは整理できます。

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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