ビジネス法務

遺言って“いごん”?それとも“ゆいごん”?その違いを読み解く。

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。


はじめに

「遺言(いごん)」と「遺言(ゆいごん)」、
同じ漢字なのに読み方が違う――どちらが正しいの?と感じたことはありませんか。

実は、「いごん」は法律上の読み方
そして「ゆいごん」は日常語としての読み方なのです。

この記事では、遺言の基本的な意味と読み方の違いを整理しながら、
“法の言葉”と“人の言葉”のちょうど中間点を見つめていきます。


目次

  1. 遺言とはなにか?
  2. 法律上の正式な読み方「いごん」
  3. 日常会話での読み方「ゆいごん」
  4. 使い分けのポイント
  5. 読み方が異なる他の法律用語
  6. まとめ

1. 遺言とはなにか?

遺言とは、自分の死後に財産や意思をどう扱うかを法的に残すための制度です。

たとえば、

  • どの財産を誰に相続させるか
  • 遺産分割の割合
  • 誰を後見人や遺言執行者にするか

といったことを、法的効力をもつ文書として明確に残せます。

遺言の主な方式は次の3つです。

  • 自筆証書遺言:全文・日付・署名を自筆で書く方式
  • 公正証書遺言:公証人が関与し、公証役場で作成する方式
  • 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま、存在だけを公証人が証明する方式

これらの方式を守らなければ、遺言が無効となる可能性もあります。
つまり「遺言」は単なる“想いの手紙”ではなく、
厳格な要件を備えた法的文書なのです。


2. 法律上の読み方「いごん」

法律の世界では、「遺言」は いごん と読みます。
契約書・相続書類・登記書類など、法的効力を伴う文書では「いごん」と読まれるのが通例です。


3. 日常会話での読み方「ゆいごん」

一方で、一般の会話や文学作品では「ゆいごん」と読むのが自然です。

たとえば――

「父のゆいごんを守りたい」
「ゆいごんの言葉に涙した」

このように、人の感情や想いを伝える文脈では「ゆいごん」が多く使われます。


4. 使い分けのポイント

使用場面適切な読み方備考
民法・裁判所・公証役場などいごん法的効力のある正式文書や手続ではこちらを使用
会話・文学・ニュースなどゆいごん想いやメッセージを表すときに自然

💡 実務ワンポイント
契約書や遺言書の作成支援など「書面を扱う場面」ではいごん
講演・講話・日常会話など「心情を伝える場面」ではゆいごん
――この切り替えが自然です。


5. 読み方が異なる他の法律用語(正確版)

「遺言(いごん/ゆいごん)」のように、
法令用語と日常用語で読み方や使い方にズレがある言葉はいくつかあります。
ただし、法律上の読み方以外は「誤読」や「慣用読み」に分類される場合が多い点に注意しましょう。

用語法律上の正式な読み他の読み方・慣用備考
遺言いごんゆいごん両方認められるが、法令上は「いごん」
相殺そうさい(※「そうさつ」は誤読)「債権と債務を差し引く」行為。辞書・法令上はすべて「そうさい」
弁済べんさい返済(へんさい)法令上は「べんさい」が正式。ただし市民語では「返済(へんさい)」が広く定着
更正こうせい(※「かいせい」と混同されやすい)「改正」とは別字
保証人ほしょうにん(※「ほしょうじん」は誤読)法律用語では「人」は「にん」と読むことが多い

こうした読み方の違いを知っておくことで、
法律文書の正確性が高まり、専門家とのやり取りもよりスムーズになります。


まとめ

「遺言」は、

  • 法律的には“いごん”
  • 日常的には“ゆいごん”

と読み分けられます。

そして「相殺」「弁済」など、読み間違いやすい法律用語も存在します。
こうした違いを意識してみると、
法的な書類への理解が深まるものと思われます。

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