契約書

「契約書に強くなる」には?(2025.12.30一部改訂)

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


1. 「契約書に強くなる!」というテーマについて

このブログのタイトルである
「契約書に強くなる!」
は、私が日々ご相談を受ける中で、
とても多くいただく次の言葉から生まれました。

「契約書に強くなるためのコツを教えてください」

では、
「契約書に強くなる」とは、
具体的にどういう状態を指すのでしょうか。


2. 「契約書に強い」とは、どういう状態か

私自身の20年以上におよぶ実務経験から言えば、
「契約書に強い」とは、
難解な法律用語を暗記している状態でも、
分厚い契約書を一瞬で読める状態でもありません。

むしろ、

  • 契約書の素案を自分の立場から組み立てて考えられる
  • 相手から提示された契約書を、感覚ではなく理由をもって解釈できる
  • その内容が自社(自分)にとって有利か不利かを整理できる
  • 必要に応じて、対案という形で条件を言語化できる

こうした状態こそが、
私の考える「契約書に強い」状態です。

その意味で、
契約書に強くなるとは、
契約書に書いてあることを、
自分でも納得しながら判断できるようになること

だと考えています。


3. 契約書が難しく感じられる本当の理由

契約書が難しいと感じられる最大の理由は、
条文そのものではなく、
ポジションによって正解が変わる」点にあります。

たとえば、
物品の売買契約における「受入検査」という条項。

一見すると、
どの立場でも同じように読めそうですが、
実際には、

  • 売主(お金をもらう側)
  • 買主(お金を払う側)

このどちらに立つかで、
望ましい条件は真逆になります。

売主にとっては、

  • 受入検査の期間を明確にしたい
  • 一定期間内に異議がなければ、検査完了とみなして早く請求したい

というニーズがあります。

一方、買主にとっては、

  • 検査のタイミングや基準はできるだけ柔軟にしたい
  • 支払いの判断を急がされないようにしたい

というニーズが生まれます。

同じ「受入検査」という条文でも、
どちらの立場で契約書を見るかによって、
意味もリスクもまったく変わる
のです。

【一般的な条文例】
第●条(受入検査)
買主は、売主が本件商品を納入する都度、受入検査を実施するものとする。

【売主(お金をもらう側)に有利な条文例】
第●条(受入検査)
1.買主は、売主が本件商品を納入する都度、受入検査を実施し、数量過不足または不合格品を発見したときは、5営業日以内に売主に通知するものとする。なお、当該期間内に買主から何らの通知がないときは、売主が納入した本件商品の受入検査は終了したものとみなす。
2.受入検査の対象、方法、合否の基準等検査に関する詳細事項は売主が定めるところによる。

【買主(お金を払う側)に有利な条文例】
買主は、売主が目的物を納入する都度、速やかに受入検査を実施し、数量過不足または不合格品を発見したときは、直ちに売主に通知するものとする。この場合、受入検査の対象、方法、合否の基準等検査に関する詳細事項は買主が定めるところによる。


4. 契約条件は「キャッシュフロー」に直結する

市販の契約書解説書では、こうした受入検査の条項が
簡単に流されていることも少なくありません。

しかし実務の現場では、
この条項ひとつで、

  • 請求できるタイミング
  • 入金の時期
  • キャッシュフローの安定性

が大きく左右されます。

ちゃんと仕事をしているのに、
なぜか手元にお金が残らない

そんなケースの原因をたどっていくと、
契約条件の設計に行き着くことも多いのです。

契約書は、単なる法的リスク管理の書類ではなく、
事業の流れやお金の動きを形にする設計図
でもあります。


5. 「契約書に強くなる」ための近道はあるのか

では、
契約書に強くなるための近道はあるのでしょうか。

結論から言えば、
魔法のような近道はありません。

ただし、
意識して続けるべきことは、
とてもシンプルです。

  • とにかく契約書に触れる機会を増やすこと
  • 一つひとつの契約書を、立場を意識して読み込むこと

これを繰り返す中で、
契約書を
「レゴブロックの集合体」
のように捉えられるようになります。

条文や条件を
ひとつひとつの「ブロック」として頭の中に蓄積し、
必要な場面で組み替えられるようになる。

そうなれば、契約書は「怖いもの」ではなく、
考えるための材料に変わっていきます。


6. このブログで伝えたいこと

このブログでは、
契約書の雛形や条文例を並べることよりも、

  • なぜその条文が必要なのか
  • どんな前提で読めばいいのか
  • 実務ではどう影響するのか

といった
判断に至るまでの考え方」を
丁寧に言語化することを大切にしています。

契約書について、
自分でも納得して判断できるようになるための視点を、
ブログと音声配信を通じて発信している。

それが、
この「契約書に強くなる!」シリーズの根っこです。

私自身も、
まだまだ学びの途中にいる一人として、
これからも現場で考え、悩みながら、
発信を続けていきたいと思っています。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


【ご質問受付中】

「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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