ビジネス法務コーディネーター®大森靖之です。
日頃は、ビジネス契約書専門(特にIT系に強い)の行政書士として、中小・ベンチャー企業様の成長発展のお手伝いをしております。
1.はじめに
ここのところ「他者と提携したいのだけれど契約書巻いてくれる?」といったご依頼が多くなってきています。
この流れについては以前からあって、NPO法人さいたま起業家協議会の「起業コラム」方で解説記事を執筆したことがあります。
【さいたま起業家協議会 起業コラム】
「他社と提携するときの賢い契約書の使い方」
↑「起業コラム」の記事をご覧になるには、こちらをクリックしてください。
基本的なところは執筆当時(2019年11月)と変わっていませんが、コロナ禍を経てちょっと変わってきたかな?と個人的に感じる部分がありますので、本記事ではそのことについて綴ってみます。
2.同業種間での提携の相談が増えてきている
コロナ前は異業種提携がほとんどでしたが、ここ最近は「同業種提携」の相談が増えてきているように感じていています。
新しい価値の提供が求められる世相の中、同業種でも「文化」の違う企業同士が組んで、様々な知見を取り入れていこうという流れが根幹にあるものと思われます。
しかしながら、この「文化」というのが曲者で、交わり合うことでよい方向に作用することがあれば、当然悪い方向に行ってしまうこともあります。
次いで、Tweetしたこちら。
「コロナ明けを狙って一気に攻めたい、一社だけではヒト・モノ・カネ・情報のリソースが限られていて、風呂敷を広げられないから、どこかと組んで解決したい」
といった発想からのご相談もしばしばいただきます。
経営者同士では話がトントン拍子で進むものの、実際、契約書を巻いて、実務を現場に落とすと、なかなかうまく提携が進まないケースも発生します。それはやはり上述の「文化」が影響しているものと思われます。
今まで、ある意味「ライバル」だった会社と組むというのは、現場の社員さんから見れば、受け入れがたい部分も当然あるものと推測されます。
3.あくまで契約!
この記事での文脈における「提携」「コラボ」は、
「契約書を巻く」=他社と取引をする
というのが前提です。合併や事業譲渡と異なり、自社の「器」が大きくなるわけではありません。
「取引」の意味をあらためて確認してみますと…
【取引】
『三省堂国語辞典』(第8版)
売り買いして、お金と品物をやりとりすること。売買。
とあるとおり、お互いに経済的なメリット、さらに踏み込めば「お互いに儲かる話」でないと、続かないし、そもそも契約書の取り交わしに至らないというのが、契約書の専門家としての現場レベルで実感です。
ですので、真新しく聞こえる「提携」「コラボ」の話を、
「この話は伝統的な契約書のどれが一番マッチするのだろう」
と見極め、冷静にあるべき契約スキームを提案する、というのが契約書の専門家として重要な姿勢だと考えております。
3.「伝統的な契約書」とは?
上記の「伝統的な契約書」とは、同業種提携の場合、以下が多いです。
①業務委託契約書
商品やサービスメニューを充実させるため、自社リソースで賄いきれない部分を長期継続的に
同業者に委託する
②賃貸借契約書
自社で余っているリソース(オフィスや工場・作業場の余っている場所や工作機械など)を
同業者に貸す
③代理店契約書
同業者に販売チャネルの一部を担ってもらう
④フランチャズ契約書
自社の商標や経営ノウハウ等を他社にライセンスする
⑤秘密保持契約書
経営者レベルで、お互いの企業秘密やノウハウ等を開示し、次の展開を議論する
最後の⑤を除き、「お金のやりとりが生じる取引関係」となっていることがお分かりかと思います。
4.さいごに
同業者との「提携」や「コラボ」を検討する際には、上記をご参考にしていただければ幸いです。
とはいえ。
上記の「伝統的な契約書」①~⑤に該当しないケースもままありますし。①~⑤が混じっている形態もあったりもしますので、判断に迷われた際には、お気軽にご相談いただければと思います(ご連絡先は右側のバナーに記載しております)。
5.音声解説
stand.fm「契約書に強くなる!ラジオ」では上記についての音声解説をしております。
文字だけでは表現できない微妙なニュアンスを気取らずにお伝えできるのが音声配信の魅力です。
「ながら視聴」でも知識を得ていただけるようにお話ししておりますので、一度お聴きいただければ幸いです。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。
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