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【契約書のトリセツ】契約書に印紙は必要?印紙税で迷わないための基本ルールと実務チェックリスト(2026年版)

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.その契約書、印紙は「貼る?貼らない?」

契約書を作成し、内容も整い、
「これで大丈夫」と思ったその瞬間。

ふと、こんな疑問が頭をよぎったことはありませんか。

  • この契約書、印紙って必要だっけ?
  • とりあえず200円貼っておけば問題ない?
  • 電子契約なら印紙はいらないって聞いたけど本当?

契約書実務では、
内容そのものよりも「最後の処理」で迷う場面が少なくありません。
その代表例が、印紙税です。


2.印紙税は「タイトル」ではなく「中身」で決まる

印紙が必要かどうかは、書類の名前では決まりません。

  • 契約書
  • 覚書
  • 協定書
  • 申込書

どのような名称であっても、
権利義務の発生や内容が記載されていれば、課税文書に該当する可能性があります。

印紙税法では、
書類の「形式」ではなく、実態が判断基準です。


3.「とりあえず200円貼っておけば免責される」という危険な誤解

実務の現場で、非常によく耳にするのが、次のような考え方です。

  • よく分からないけれど、とりあえず200円貼っておけば問題ない
  • 印紙さえ貼ってあれば、細かい区分は気にしなくていい
  • 多少ズレていても、貼っていれば免責されるはず

一見すると、
「慎重な対応」「安全側の判断」のようにも見えます。

しかし、この発想は、印紙税においては明確に誤りです。

印紙税で問題になるのは、
「印紙を貼ったかどうか」ではありません。

課税文書に対して、
正しい金額の印紙が貼られているかどうか(正しく納税されているか)

が問われます。

そのため、実務では次のようなケースが特に危険です。

  • 「200円で足りる」と思い込んでいる
  • 区分は意識しているものの最低額の印紙だけ貼っている
  • 『覚書』でたいした内容が書かれていないから印紙はいらないだろう

もし、本来必要な印紙税額を納めていなかったことが後から発覚すると…

印紙による納付の方法によって印紙税を納付することとなる課税文書の作成者が、その納付すべき印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合には、その納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(すなわち不納付税額の3倍)に相当する過怠税が徴収されることとなります。
『印紙税の手引(令和7年5月)』(国税庁)p.16

不納付額が大きくなればなるほど、
一件一件は少額であっても、複数の契約や取引が積み重なることで、
結果的に想定以上の金額になることもあります。
印紙税は後から指摘されることも多いため(税務調査の時など)、
日常的な取扱いこそ注意が必要です。


4.印紙税とは「文書に課される税金」

印紙とは、単なる紙ではありません。
印紙税法に基づき、一定の内容を持つ文書を作成した場合に課される税金です。

重要なのは、
印紙税は 「紙の文書(課税文書)」の作成 を前提としている点です。

電子契約など、電磁的記録として作成された契約は「課税文書」に該当せず、印紙税は課されません。


5.実務で迷いやすい4つの文書と判断ポイント(2026年1月現在)

① 第1号文書|金銭消費貸借・運送契約など

  • 金銭消費貸借契約書(主に金融機関からお金を借りる際に使用される契約類型)
  • 運送に関する契約書

金額に応じて印紙税額が変わります。


② 第2号文書|請負契約書(特に注意)

請負契約とは、「仕事の完成」を目的とする契約です。

  • システム開発
  • デザイン・制作業務
  • 建設・工事請負

成果物や完成義務がある契約は、
原則として第2号文書に該当します。

※契約書の名称が「業務委託契約書」「コンサルティング契約書」であっても、
内容が成果物完成型であれば、印紙税法上は請負契約と判断されることがあります。


③ 第7号文書|継続的取引基本契約書

いわゆる「基本契約書」が該当します。

実務上は、

  • 営業目的の取引であること
  • 継続的な取引関係を予定していること
  • 個別契約の前提となる基本合意であること

といった 取引態様全体 を踏まえて判断されます。

※契約期間が3か月超、または自動更新条項がある場合は、第7号文書に該当する可能性が高くなります。

税額は 一律4,000円 です。


④ 第17号文書|領収書(要注意)

領収書には、明確な非課税ラインがあります。

  • 5万円未満:印紙不要
  • 5万円以上:印紙必要

2014年の法改正により、現在の基準は「5万円以上」です。


6.チェックリスト|印紙税で迷わないための実務確認表

契約書チェック

  • □ 書類の名称ではなく中身を確認したか
  • □ 権利義務の発生が記載されているか
  • □ 請負か準委任かを整理したか
  • □ 継続的取引契約に該当しないか
  • □ 紙契約か電子契約かを確認したか

領収書チェック

  • □ 金額は5万円以上か
  • □ 消費税の処理を正しく分けているか
  • □ 売上代金に係る受取書か

7.参考情報:印紙税の歴史は古い

日本の印紙税は、
明治6年(1873年)、オランダの制度を参考に導入されたと言われています。

150年以上前の仕組みが、
今もなお契約実務に影響を与えていると考えると、
なかなか興味深い制度です。

参考文献:『税のタブー』三木義一(インターナショナル新書)


9.まとめ

印紙税は、

  • 契約内容を整理し
  • 契約類型を把握し
  • 金額を確認する

この3点を押さえれば、
過度に恐れる必要はありません。

一方で、
「とりあえず貼る」という判断が、
かえってリスクを高める場面もあります。

判断に迷った場合は、
国税庁『印紙税の手引』の最新版を確認する(ケースに応じて所轄税務署に相談する)
のが安全です。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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