ビジネス法務

【契約書のトリセツ】経営者やフリーランスが、業務委託契約書を自作・切り貼りする時に絶対見直すべき3つのポイント

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.業務委託契約書、ひな形を組み合わせて作っていませんか?

業務委託契約書について、
次のような作り方をしている方は少なくありません。

  • ネットで見つけた雛形をベースにする
  • 過去に使った契約書を流用する
  • 取引先から提示された契約書を参考にする

そして、それらを
少しずつ切り貼りしながら、自分なりに整える。

この方法自体が、
直ちに間違っているわけではありません。

実際、私のところにご相談に来られる
経営者やフリーランスの方の多くも、
「一度は自分で作ってみた業務委託契約書」をお持ちです。

ただし――
業務委託契約書は、当事者の立場や責任の配分が条文ごとに細かく影響するため、
切り貼りで作成すると整合性が崩れやすい契約書でもあります。


2.業務委託契約書を自作・切り貼りする際は、次の3点を必ず見直してください。

  1. 表記の揺れがないか
  2. 甲乙(当事者の立場)を取り違えていないか
  3. 条文全体のバランスが崩れていないか

この3点を意識するだけで、
「とりあえず形にした契約書」から
「実務で使える契約書」へ一段階引き上げることが可能
です。


3.業務委託契約書で特に起きやすいズレ

業務委託契約書は、

  • 発注者
  • 受注者

という立場の違いが、
条文の細かな表現や責任の置き方にまで影響する契約書です。

そのため、切り貼りで作成すると、

  • 同じ業務を指しているのに呼び方が条文ごとに異なる
  • ある条文だけ、発注者と受注者の立場が逆転している
  • 責任や免責に関する条項だけが極端に長くなっている

といったズレが生じやすくなります。

作成している本人にとっては
「意味は通じるから問題ない」と感じられても、
読む側には違和感として伝わることが少なくありません。


4.業務委託契約書は「情報整理」と「凍結保存」の書面

業務委託契約書の役割は、
単に「業務を委託する/受託する」ことを書くだけではありません。

  • 業務内容
  • 報酬や支払条件
  • 責任の範囲
  • トラブル発生時の整理方法

これまでの商談でやり取りしてきた内容を整理し、
あとから解釈が揺れない形で固定する(いわば凍結保存する)
それが、業務委託契約書の本質です。

だからこそ、

  • 用語の使い方が統一されていない
  • 当事者の立場が途中で入れ替わっている
  • 一部の条項だけが過度に主張している

こうした契約書は、
契約書全体の信頼性を下げてしまう要因になり得ます。


5.業務委託契約書を自作する際の3つのチェックポイント

① 表記の揺れをなくす

たとえば、第1条で、

甲は乙に対し、〇〇に関する業務(以下「本件業務」という)を委託する。

と定義した場合、
契約書全体を通じて必ず「本件業務」に統一します。

切り貼りを行っていると、

  • 本件業務
  • 本業務
  • 本件委託業務

といった表記の揺れが生じやすくなります。

Wordの検索・置換機能や、
文章チェックツールを活用することで、
こうしたミスは比較的容易に防ぐことができます。

② 甲乙(当事者の立場)を取り違えない

業務委託契約書の雛形には、

  • 発注者側に有利なもの
  • 受注者側に有利なもの

という性格の違いがあります。

これを意識せずに条文だけを取り込むと、
結果として、自身の想定とは異なる条件が入り込んでしまう
ということが起こり得ます。

実務上は、

  • 契約書のタイトル横に
    「発注者有利」「受注者有利」とメモしておく
  • 甲・乙がどちらの立場かを必ず確認する

といったシンプルな方法でも、
取り違えを防ぐ効果があります。

③ 条文全体のバランスを見る

業務委託契約書では、

  • 契約不適合責任
  • 免責
  • 損害賠償

といった条項が、
内容的に長くなりやすい傾向があります。

ただし、

  • 他の条文は数行程度
  • 特定の条項だけが極端に長い

という状態になると、
どうしてもその部分が目立ちます。

さらに、
あまりにも一方当事者(自社)に有利な内容となっている場合、
相手方の心証に影響し、契約条件そのもの以前に
「この契約で進めて大丈夫か」という不安を与えてしまうこともあります。

実務上は、
その結果として
契約条件の交渉に入る前に、契約自体がまとまらなくなる(いわゆる“おじゃんになる”)
ケースも少なくありません。

秘密保持、個人情報、反社会的勢力排除など、
合理的な理由がある場合は問題ありませんが、
一方当事者のみが有利になる条項だけが過度に厚い場合には、
契約書全体のバランスを一度見直してみることも重要です。


6.まとめ

業務委託契約書を自作・切り貼りする際に
特に意識していただきたいのは、

  • 用語の統一
  • 当事者の立場の一貫性
  • 条文全体のバランス

この3点です。

契約書は、
商談の結果を整理し、将来のトラブルを防ぐための設計図
でもあります。

バランス感覚や見た目の整合性は、
そのまま、
信頼性・交渉の進みやすさ・ビジネス全体の動き
に直結します。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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