ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書って、ちょっとだけ“大人の怖さ”を知る入口かも

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.はじめに

新社会人として社会の第一歩を踏み出した皆さまへ。
日々の業務において「契約書」という存在に、少なからず接する機会が訪れているのではないでしょうか。

今回は、そんな皆さまに向けて、あえてこのようなテーマを掲げます。

契約書って、ちょっとだけ“大人の怖さ”を知る入口かもしれない

そう感じたことがあるなら、それはきっと「責任と向き合う力」が育ち始めている証拠です。

契約書というと、ビジネスの最前線や重要な取引に関わる専門的なものだと思われがちです。
しかし実際には、多くの方が社会に出て最初に出会う契約書は、「入社時誓約書」かもしれません。

入社手続きの際に目を通すこの書類には、
会社との信頼関係を築くための基本的な約束が、簡潔かつ明確な言葉で書かれています。

その内容を知ることで、契約書の本質を少しだけ垣間見ることができます。

入社時誓約書(サンプル)

📄 入社時誓約書(サンプル)

令和○年○月○日
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 様

私は、株式会社〇〇〇〇に入社するにあたり、貴社の従業員としての自覚と責任を持ち、業務を誠実に遂行することを前提に、下記の事項について誓約いたします。

1.貴社の就業規則、服務規律その他すべての社内規程を十分に理解し、これを遵守して行動いたします。

2.業務上知り得た一切の機密情報(顧客情報、取引先情報、技術情報、経営情報その他非公開の情報)を、在職中および退職後においても、第三者に漏洩せず、適切に管理・保持いたします。

3.貴社または取引先の**名誉、信用を損なう行為(信用失墜行為)**を行いません。これには、業務外の私的行為であっても、会社の社会的評価に悪影響を及ぼすおそれのある行為を含みます。

4.出社義務・業務遂行義務等について、正当な事由(病気、災害、家族の緊急事態など社会通念上やむを得ない事情)なく怠ることはいたしません。

5.貴社の設備・物品・文書等を私的に使用せず、また破損・紛失しないよう注意し、適切に取扱います。

6.業務上の不正行為や義務違反等が発覚した場合、貴社の懲戒規程に基づく懲戒処分(けん責・減給・出勤停止・諭旨解雇・懲戒解雇など)を受けることがあることを理解し、誠実に対応いたします。

7.私の行為によって貴社または第三者に損害を与えた場合、内容および過失の程度に応じて、損害賠償責任を負うことがあることを理解いたします。

上記の各項目に違反し、貴社に損害や混乱を生じさせた場合には、貴社が定める手続に従って誠意をもって対応いたします。

以上

住所:
氏名:〇〇〇〇(自署)

※この誓約書は教育目的で作成されたサンプルです。実務で使用する場合は、社内規程との整合や、懲戒・損害賠償条項の法的適合性を確認してください。


この短い誓約書の中にも、社会に出てはじめて触れる言葉がたくさん出てきます。

  • 「機密情報」
  • 「信用失墜行為」
  • 「正当な事由」
  • 「懲戒処分」
  • 「損害賠償責任」

こうした言葉は、日常会話ではあまり使わないだけに、
少し“重く”“冷たく”“厳しい”印象を与えるかもしれません。

ですが、これらはすべて、誤解なく共通理解を持つための“ビジネス上の共通言語”です。

💡用語解説:意味を知ると、見え方が変わる

用語概要
機密情報社外に漏れてはいけない情報。顧客データ、技術、価格、内部方針など。
信用失墜行為会社の信頼を損なう行為。SNSの不用意な投稿なども含むことがある。
正当な事由社会通念上やむを得ないと認められる理由(例:病気、災害)。
懲戒処分ルール違反に対する処分。けん責から懲戒解雇まで段階あり。
損害賠償責任故意や重大な過失で損害を与えた場合に発生する補償責任。

契約書に出てくる言葉は、私たちに感情や“圧”をぶつけてくるものではありません。
たとえば、「懲戒処分」や「損害賠償責任」といった言葉に緊張感を覚えるのは自然な反応です。
ですが、それは意味が曖昧なままに読んでいるからにすぎません。

これらはむしろ、感情を交えず、解釈にブレのない“共通認識”を明確にするための法律用語です。

ビジネスの現場では、「そんなつもりじゃなかった」「言った・言わない」といった食い違いが、
大きな問題へと発展するリスクがあります。
だからこそ、契約書には誰が読んでも同じ意味にたどり着ける表現が求められているのです。


もしも契約書の中に、知らない言葉や不安を覚える表現があったとしたら、
まずは一度、自分で意味を調べてみてください。

  • Googleで検索してみる
  • 生成AIに聞いてみる
  • 信頼できる先輩や上司に尋ねてみる

たったそれだけで、「怖さ」は「理解」へと変わり、
契約書があなたにとっての“味方”へと姿を変えていくはずです。


契約書には、私たちがまだ見ぬ現実と責任が静かに記されています。
それを「怖い」と感じる感受性は、むしろ大切にすべきものです。

そしてその“怖さ”を少しずつ理解に変えていくことが、
やがて自信や誇りにつながっていくはずです。

入社時誓約書は、
あなたが「社会の一員として生きる」ことを、自分の手で引き受ける最初の紙かもしれません。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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