ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)のほか、コミュニティFM局の構成作家兼パーソナリティとしての活動もさせていただいております。
目次
- 1.起業コラム
- 2.中小企業の契約現場では、“決まっていないけど動き出す”ことが多い
- 3.「甲乙協議のうえ決定する」を“武器”にする3つのポイント
- 4.ただし、“なあなあ契約”にはしない
- 5.まとめ:決まっていないことを“書かない”より、“協議する意思”を書いておく
1.起業コラム
NPO法人さいたま起業家協議会の起業コラムに
「『甲乙協議のうえ決定する』ってどういう意味?~実務で困らない解釈と対応例」
をテーマに寄稿しております。
特に
・これから起業しようと検討中の方
・起業して間もない方
のご参考になれば幸いです。
上記「起業コラム」をご覧になるには、以下の画像をクリックしてください。

以下、こちらのコラムについての補足です。
2.中小企業の契約現場では、“決まっていないけど動き出す”ことが多い
私が契約書作成をご支援するなかでよく感じるのは、
中小ベンチャー企業の契約実務は、大企業とは違うということです。
- トップ同士の信頼関係を前提に話が進む
- 社内に明確な判断基準がなく、まずは走り出すケースが多い
- 現場の裁量や感覚で“柔軟に調整していく”ことが重視される
そういった取引実態のなかでは、「すべてを契約書に網羅してからでないと動けない」という硬直的な契約は、むしろ現場を縛ってしまいます。
そんなときに意味を持つのが──
「まだ決まっていないことがある」と認識し、
後で協議するという“合意の枠組み”を残しておくこと。
つまり、「協議のうえ決定する」は、“未決定を可視化しつつ、柔軟な着地を目指す”ためのツールとして活用できるのです。
3.「甲乙協議のうえ決定する」を“武器”にする3つのポイント
① 柔軟な取引関係の維持
ビジネスの現場では、後から条件が変わることは日常茶飯事。
そんなとき、「協議できる」と条文化されていれば、交渉の糸口が残ります。
中小企業同士の取引では、形式よりも柔軟な関係性のほうが重視されることも多く、「協議のうえ決定する」はその柔らかい接続点になります。
② 継続的な関係性の“安全弁”
「ひとまず取引を始めたいけど、細かい条件はまだ決めきれない」──そんなときに、
いったん「協議条項」として棚上げしておけば、将来の調整がしやすくなります。
これは、中長期的な取引の多いBtoBビジネスにおいて“継続のための保険”になります。
③ 経営者間の信頼を裏切らない“配慮の文言”
「一方的に決めた条文ではない」「お互い話し合える関係性を前提にしている」
──そんなメッセージを契約書に込められるのも、協議条項の役割です。
実際、経営トップ同士で握った話が、社内で正しく運用されずに混乱が生じることは少なくありません。
「協議する前提」があるだけで、現場がその“余白”をうまく使えるようになります。
4.ただし、“なあなあ契約”にはしない
もちろん、「協議のうえ決定する」ばかりに頼るのは危険です。
- 期限がない
- 協議する主体が不明確
- 協議が決裂した場合の対応が書かれていない
──そんな“丸投げ条項”では、トラブルが起きても処理できません。
だからこそ、最低限、以下のような設計は必要です:
- 協議の期限を入れる(例:「○月末までに協議する」)
- 協議不調時の対応を定める(例:「従前の条件を継続」など)
- 協議の前提条件や評価軸を示す(例:「仕様変更はコスト見直しを前提」)
「設計された曖昧さ」こそが、実務にフィットする契約の鍵になります。
5.まとめ:決まっていないことを“書かない”より、“協議する意思”を書いておく
契約書を前にして「まだ決まっていないから書けない」という場面、きっと誰しも経験があるはずです。
でも、だからといって書かずに済ませると、あとで言った言わないの世界に引き戻されてしまう。
だからこそ──
「決まっていないことがある」ことを受け止めたうえで、
どうやって決めていくかを“合意”として残しておく。
それが、「協議のうえ決定する」という条文の本質であり、
中小ベンチャー企業にとって、実態に即した信頼ベースの契約設計だと私は考えています。
参考記事
ご質問受付中!
足下を固め、自分自身を守り、そして、「成し遂げたいこと」や「夢」の実現に近づけるための契約知識について、このブログや、音声配信「契約書に強くなる!ラジオ」でお伝えしていきますので、今後ともご期待、ご支援いただければ幸いです。
「こんなことに困っている!」など、契約書に関するご質問がありましたら、ブログ等で可能な限りお応えしますので、上記「お問い合わせ」より、お気軽にお寄せください。
また、商工会議所などの公的機関や、起業支援機関(あるいは各種専門学校)のご担当者で、
「契約知識」に関するセミナー等の開催をご検討されている方
講師やセミナー企画等の対応も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
最後まで、お読みくださりありがとうございました。










この記事へのコメントはありません。