ビジネス法務

【契約書のトリセツ】ダメな契約書は「見た目」で9割わかる―表記の揺れ・アンバランス・見栄えが示す危険信号

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.その契約書、「中身」を読む前に違和感ありませんか?

契約書を渡されたとき、
こんな感覚を覚えたことはありませんか?

  • なんとなく読みにくい
  • 途中で言葉が変わっていて混乱する
  • 一部の条文だけ異様に長い
  • 見た目が雑で、読む気が失せる

多くの人は、
「まあ、細かいことは専門家に聞かないと分からないし…」
と、その違和感を飲み込んでしまいます。

ですが――
その“違和感”こそが、実は一番正確な危険センサーなのです。


2.ダメな契約書は「見た目」でほぼ見抜けます

ダメな契約書は、内容を精査する前に、見た目でほぼ判断できます。

具体的には、次の3点です。

  1. 表記の揺れが激しい
  2. 条文のバランスが不自然
  3. 書面としての見栄えが悪い

これは感覚論ではありません。
この仕事をはじめて通算で20年、
もしかすると数千単位の契約書を見てきた実体験からの「選球眼」です。


3.「一見ちゃんとしてそう」なのに危険な契約書

実務でよくあるのが、こんなケースです。

  • 表紙もあり、条番号も振ってある
  • それなりに長文で「ちゃんとしてそう」
  • でも、読んでいると妙に引っかかる

このタイプの契約書、
実は一番トラブルを生みやすいです。

理由はシンプルで、
「ちゃんとしている風」に見せることと
「ちゃんと設計されている」ことは、全く別だからです。


4.なぜ「見た目」に問題が出るのか?

① 表記の揺れが示すもの:切り貼り契約書の危険性

例えば、契約書の冒頭で、

「甲が乙に対し行う○○業務(以下『本件業務』という)」

と定義しているにもかかわらず、

  • 第3条:本件委託業務
  • 第10条:本業務
  • 第12条:当該業務
  • 第25条:本件業務

…と、呼び方がバラバラ。

これは典型的な「表記の揺れ」です。

なぜ起きるのか?

  • 複数のひな形を切り貼りしている
  • 全体を通した見直しをしていない
  • 専門家チェックが入っていない

何が危険なのか?

  • 契約書全体の一貫性が崩れる
  • 「結局、どれが同じ概念なの?」と解釈争いが起きる
  • 不利な解釈を押し付けられる余地が生まれる

表記の揺れ=設計思想がない契約書
と考えてほぼ間違いありません。


② アンバランスな条文が示すもの:リスク押し付けのサイン

次に多いのが、
条文の分量が極端にアンバランスな契約書です。

  • 他の条文:3〜4行
  • 損害賠償条項:30行
  • 契約不適合責任:やたら詳細
  • 違約金条項:異常に厳しい

こうした契約書からは、
強烈なメッセージが読み取れます。

「リスクは全部、相手に背負わせたい」

もちろん、
反社会的勢力条項や秘密保持条項のように
双方対等に規定すべき条文は例外です。

しかし、
利害が真正面から衝突する条項だけが異様に厚い場合、
その契約書はかなり警戒すべきです。


③ 見栄えの悪さが示すもの:やっつけ仕事の正体

最後は、見栄えです。

  • フォントが統一されていない
  • 明朝とゴシックが混在
  • 改行・インデントがぐちゃぐちゃ
  • 箇条書きの体裁が崩れている

これは単なる「美的問題」ではありません。

見栄えが悪い契約書の背景

  • 上司に言われて急造
  • ネットから拾ってきただけ
  • 誰もチェックしていない
  • 「とりあえず形にした」

つまり―
契約書として最も重要な「確認」との工程が省略されている
可能性が極めて高いのです。


5.「見た目」で避けられたはずのトラブル

実務の現場では、

  • 表記の揺れから解釈が割れ、紛争化
  • アンバランスな条文で一方的に責任追及
  • 雑な契約書ゆえに、いざという時に役に立たず社内外で炎上

こうしたケースを、何度も見てきました。

逆に言えば、
契約書の見た目をチェックするだけで、避けられたトラブルも非常に多い
ということです。


6.まとめ

今日のポイントを整理します。

  • 表記の揺れが多い契約書は危険
  • 条文がアンバランスな契約書は要注意
  • 見栄えの悪い契約書は、作り手の姿勢が透ける

契約書は、
トラブル対応マニュアルではなく、取引の設計図です。

設計図が雑なら、
完成する建物も危ういのは当然です。

実務を重ねるほど、
見た目が整った契約書ほど、中身も整理されている
という傾向を強く感じます。

逆もまた然りです。

だからこそ―
契約書は、内容以前に「読める」「理解できる」形であるべきと考えています。


【音声解説】

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【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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