ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1. 別紙、綴じてないけど…これ大丈夫?
- 2.綴じていなくても、ただちに無効ではない
- 3.なぜこの問題が後から噴き出すのか
- 4.問われているのは「ホチキス」ではない
- 5.押印後に別紙の添付忘れに気づいた場合の“現実的な対応”
- 【実務の小技】別紙に「ページ番号」を振る
- 6.別紙問題の正体は「合意の説明力」
- 🔎 参考記事
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. 別紙、綴じてないけど…これ大丈夫?
契約書を確認していて、ふと不安になることがあります。
- 契約書本体はある
- 別紙(仕様書・別表・業務内容詳細)はある
- でも―物理的に綴じていない
すでに押印も終わっている。
「この別紙、契約の一部って言えるの?」
「後から“それは契約外です”と言われない?」
日頃、総務の方、経理の方、そして社長からも、
実務で非常によく受ける質問です。
2.綴じていなくても、ただちに無効ではない
結論から言うと、
契約書の別紙を綴じていなくても、
それだけで契約が無効になるわけではありません。
ただし…
物理的に綴じていない場合、
その別紙が「契約締結時点のものだ」と証明するための
証拠力は、綴じている場合に比べて弱くなる可能性があります。
そのため、後述するような形で、
合意の内容や別紙の真正性を補完しておくことが重要になります。
3.なぜこの問題が後から噴き出すのか
実務では、次のような流れで問題が起きることが少なくありません。
- 契約書は、電子ファイル(Word/PDF)でやり取りしているが
「契約書本体」「別紙(仕様書)」 が それぞれ別ファイル になっている - 契約書本文には「別紙○○」と記載されている
しかし、その別紙は
・内容を詰め切れていない
・まだ作成途中
という状態だった - 先行して発注をかける必要があり、契約書本体のみで押印する判断がなされた
別紙の内容を確定させないまま社内稟議にかけ、
結果として 別紙は未添付のまま契約締結
その後、お互いに別紙の存在を忘れたまま業務が進行
問題なのは、
誰かが悪意を持っていたわけではないという点です。
- 忙しかった
- 急いでいた
- 先に進めることを優先した
その積み重ねが、
後からややこしい形で表面化します。
4.問われているのは「ホチキス」ではない
ここが一番大切なところです。
契約書の別紙問題で問われているのは、
- 綴じているか
- 割印があるか
といった形式ではありません。
本質は、この2点です。
① その別紙が「どの契約書の一部か」特定できるか
つまり、
「この別紙は、どの契約に紐づくものか?」
を第三者にも説明できるか、という点です。
チェックポイントは例えば:
- 契約書本文に
「本契約には別紙第1号を含む」
「別紙第1号に定める仕様に従う」
といった明示があるか - 別紙に
「タイトル」
「日付」
「案件名」
が記載されているか - 他の契約・別案件と取り違えの余地がないか
② その別紙の内容について「双方が合意していた」と言えるか
もう一つが、合意の実態です。
実務上は、次のようなものが
「合意の証拠」として評価されます。
- 押印前に別紙を送っているメール
- 「この内容でお願いします」という返信
- 打ち合わせ議事録
- 見積書・発注書と別紙の内容が一致している
- 別紙の内容を前提に業務が進んでいる事実
👉 第三者にその別紙で双方が合意していたと合理的に説明できるか
ここが最大のポイントです。
5.押印後に別紙の添付忘れに気づいた場合の“現実的な対応”
❌ やってはいけない対応
- 「まあ大丈夫だろう」と放置
- トラブルが起きてから考える
- 相手に無断で別紙を差し替える(or契約書に綴じ込む)
これが一番危険です。
✔ 現実的で安全な対応策
押印後に
「別紙、綴じてないかも」と気づいた場合、
次のいずれかを検討します。
① 「契約の前提資料」を整理しておく
まず最初に取り組みやすく、
かつ実務上もっとも効果が出やすいのがこの対応です。
- 見積書
- 発注書
- 請求書
これらの内容と、
別紙(仕様書・業務内容)の内容をできる限り一致させておくことで、
「当初から、この内容を前提に合意していた」
という説明が、非常にしやすくなります。
とくに、
契約締結後すぐに発行されている資料ほど、
合意内容を裏づける証拠としての価値が高くなる傾向があります。
② 「別紙の」確認書・合意書を作成する
より確実に整理したい場合は、
別紙の位置づけを明文化した確認書・合意書を作成します。
「本契約には、以下の別紙を含む」
といった点を、
後追いでもよいので書面で確認する方法です。
※具体的な書き方や文面については、
別途まとめて解説します。
③ メール等で合意の再確認を残す
書面作成までは難しい場合でも、
メール等で合意内容を再確認しておくことは有効です。
簡易的ではありますが、
やり取りの内容次第では、
後から強い証拠として評価されることもあります。
※実務で使いやすい文面例については、
こちらも別途整理して紹介します。
【実務の小技】別紙に「ページ番号」を振る
綴じていない別紙が複数枚にわたる場合、
ページ番号を振っておくだけでも、証拠力は大きく変わります。
例えば、
- 各ページの下部に
「1/5」「2/5」といった通し番号を入れる - 可能であれば、
各ページに担当者のイニシャル(サイン)や
小さな印鑑(検印)を押しておく
これだけでも、
- ページの抜き取り
- 後からの差し替え
といった疑いを、事実上かなり防ぐことができます。
別紙を綴じていない場合、
問題になるのは「契約に含まれるかどうか」だけでなく、
「その別紙が本物かどうか」を争われる場面も少なくありません。
だからこそ、
こうした小さな工夫が、後から効いてきます。
6.別紙問題の正体は「合意の説明力」
「別紙を綴じていない=アウト」
という話ではありません。
本当に問われるのは、
- その別紙がどの契約の一部か
- その内容について双方が合意していたか
- それを説明できる材料があるか
という点です。
契約書は、
紙の体裁を整えるためのものではなく、
取引の解像度を上げるためのツール。
別紙は、その解像度が
もっとも試される場所だと言えるでしょう。
🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。

【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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