ビジネス法務

【契約書のトリセツ】成功企業の契約書を読み解く:ビジネスの裏側は“条文”に書かれている!(2026年版)

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. はじめに

契約書と聞いて、どんな印象を持ちますか?

「トラブルを避けるために作るもの」
「面倒だけど必要な文書」
——そんな風に捉えている経営者の方も多いのではないでしょうか。もちろん、
そうした“守り”の役割も重要ですが、実は契約書にはもう一つの顔があります。

それは、「成功企業の儲かるビジネスモデルを読み解く手がかり」としての顔です。

本記事では、契約書を通じて“他社の稼ぎ方”を見抜き、自社に応用する考え方や実例を、わかりやすく解説します。


契約書は、取引に関する「合意事項」を文書化したものです。
ですが、その条文の一つひとつをよく読んでみると、企業がどのように売上を立て、
どうやってリスクを回避しているか、その“戦略”が透けて見えることがあります。

たとえば、以下のような項目にはビジネスの構造が如実に表れます:

  • いつ、いくら、誰から料金を受け取るか(収益モデル)
  • どこまでが提供範囲か(業務スコープの線引き)
  • 支払方法や条件(キャッシュフローの工夫)
  • 解約やクレーム対応(リスクヘッジ)
  • 追加費用の発生条件(アップセルの仕掛け)

契約書は、単なる“約束の文書”ではなく、「企業の意図」や「商売の仕掛け」が詰まった経営戦略の写し鏡なのです。


ある日、私の元に中小ベンチャー企業の社長からこんなご相談がありました。

「他社の契約書を見ていたら、“うまいやり方”を見つけました。これをうちでも真似したいのですが、どうカスタマイズすれば良いですか?」

通常のご相談では「こういう事業を始めたいのですが、契約書はどう作るべきか?」という“発想→文書”という流れです。

しかし、このケースは“契約書→ビジネスモデル”という逆のアプローチ。

その契約書には、ある商品にサービスを「乗っけて」付加価値を出す、
という収益モデルが仕込まれていました。
実際にその企業では、既存の設備と人員だけで即日スタート可能で、
結果として客単価はおよそ2倍!に跳ね上がったのです。

しかも、特別な設備投資も人員増強も必要ありませんでした。
きっかけは、たまたま目にした一枚の契約書。それを自社の強みに合わせて“読み替え”たことがすべての始まりでした。


このように、契約書にはビジネスの“型”が表れています。具体的に、どのような視点で読み解けばよいのか、以下の5つのポイントを紹介します。

① 売上をどう立てているか(収益モデル)

  • 「納品時支払い」ではなく「成果達成時支払い」
  • 月額固定制か、従量課金制か
  • 初期費用+保守費用という設計か

② 顧客との“距離感”の取り方

  • 責任範囲をどこまで明確にしているか
  • サポートの範囲や回数を制限しているか
  • クレーム時の対応方法や手順が明記されているか

③ 契約期間と更新の自動化

  • 自動更新を前提とした設計か
  • 更新を「顧客の申出制」にして継続率を上げているか

④ 解約と返金のハードル

  • クーリングオフや中途解約時の精算方法
  • 解約手続きに手間がかかるような仕組みになっていないか

⑤ アップセル・クロスセルの余地

  • 条文の中に「オプションサービス」「追加契約」などの導線があるか
  • 契約書で“次の取引”への伏線を張っているか

これらの設計は、単なるリスク管理ではなく、“経営の選択”の結果であることが多いのです。


私自身、20年以上にわたって数百社の契約書を見てきました。すると、条文を読んだだけで、

  • この会社は短期回収重視だな
  • 自動更新で継続率を上げてるな
  • サポートに力を入れて差別化してるな

といった「戦略」が見えてくるようになります。

とくに、契約書に書かれた料金体系、役務の範囲、責任分担の仕方などには、その企業の“設計思想”が詰まっています。

つまり、契約書は読み解ける人にとっては、他社の知見を吸収できる教材にもなり得るのです。


もちろん、他社の契約書をまるごと手に入れることは困難です。ただし、以下のような方法で“ヒント”を集めることは可能です。

✔ サービスを実際に利用してみる

ベンチマークしている他社の製品やサービスを購入し、送られてくる注文書・同意書・利用規約などを入手。

✔ 公開規約の分析

SaaSや通販、サブスク型サービスでは、サイト上に「利用規約」「契約条項」が掲載されているケースが多数あります。

✔ 業界団体や商工会議所のサンプルを読む

中小企業庁や業界団体が配布する“標準契約書”にも、業界特有の儲けの仕掛けが盛り込まれている場合があります。

📌 注意点:そのまま流用せず、必ず「自社に合った形にカスタマイズ」すること。法令や消費者保護のルールを無視すれば、トラブルの原因になります。


近年、契約実務をめぐる環境も大きく変化しています。以下は、特に中小ベンチャー企業が注意すべきトピックです。

◎ フリーランス保護新法の施行(2024年)

  • 取引条件の明示
  • 給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払
  • 一方的なキャンセルや不当な変更の禁止
  • 上記について、きちんと実行されているか、当局(公正取引員会)が業種を問わず目を光らせている印象

◎ 電子契約の活用が広まる

  • 2020年代以降、電子契約サービス(クラウドサイン等)の導入が急増
  • 利便性だけでなく、証拠力・改ざん防止の観点でも契約管理が変わってきています

◎ 消費者契約法/景品表示法など

  • BtoCでビジネスを展開する場合、契約条項が「無効」とされる可能性も
  • 特定商取引法などとの整合性も要チェック

これらの動きに対応するには、単に他社のマネをするだけでなく、
「今の法律に合っているか」を自社で再構成する視点が不可欠です。


経営者の皆さまには、「契約書=法務担当が管理するもの」という印象をお持ちの方も多いかもしれません。

しかし実は、契約書こそ「経営者が積極的に読み解き、活用すべきツール」なのです。

ビジネスモデル、収益構造、顧客管理、取引継続性……これらすべてが、契約書には集約されています。だからこそ、契約書をきっかけに「自社の儲け方を見直す」ことができるのです。


契約書は、他社の稼ぎ方を学び、自社のモデルに活かすための“教科書”にもなり得ます。

  • 儲かっている企業の“収益構造”は、契約条項に表れる
  • 自社でも応用できる仕組みはないか、読み取る力を養う
  • ただの模倣ではなく、法令に適合させたカスタマイズが必要

契約書に強い経営者は、ビジネスにも強い。

そんな視点を持って、今日から契約書に興味をもっていただければ幸いです。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
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上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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