ビジネス法務

【契約書のトリセツ】法的文書の基本は議事録から―金額・業務範囲・期間が定まると契約は締まる

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. 「雛形のない契約書は、どうやって作るのですか?」

よくいただく質問です。

契約書の作り方というと、条文の書き方や法律知識を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、私が企業の法務部に配属された新入社員当時、
最初に徹底的にやらされたのは契約書作成ではありませんでした。

議事録の作成です。

出る会議、出る会議、すべて議事録を書く。
何度も書き直し、何度も修正されました。

当時は理不尽に感じることもありましたが、後になって分かりました。

議事録こそが、法的文書作成の基礎訓練だったのです。


2. 議事録は「再現」ではなく「固定」

議事録は、会議を忠実に再現するものではありません。
それなら録音すれば済みます。

議事録の役割は、

会議で合意された内容を固定すること

です。

誰が、
何を、
いくらで、
いつまでに。

これが定まらなければ、次の行動に移れません。

そしてこの作業は、そのまま契約書作成と重なります。


3. 5W2Hは法的思考の骨格

議事録では5W2Hを押さえると言われます。

When
Where
Who
What
Why
How
How Much

これは文章作成のテクニックではありません。

法的責任を確定させるための思考フレームです。

その中でも、契約の骨格を形成するのが

金額
業務範囲
期間

です。


4. 三要素が契約の芯を決める

私自身の実務経験から申し上げると、
契約書の骨格を形成するのは

金額
業務範囲
期間

この三点に尽きると考えています。

会議の議事録でも、契約書の設計でも、
最終的に確認しているのはこの三点です。

いくらで、
何を、
いつまで。

この三点が具体的な数字や仕様として定まっていれば、
契約は自然と締まります。

逆にここが曖昧であれば、
どれほど条文を整えても、どこかぼんやりした印象が残ります。

文章は整っていても、
取引そのものが十分に確定していないからです。


5. 金額(How Much)― 経済的責任を固定する

金額は単なる数字ではありません。

  • 総額はいくらか
  • 税込か税別か
  • 支払時期はいつか
  • 分割か一括か

これが明確であれば、キャッシュフローが見通せます。

曖昧であれば、支払条件をめぐる紛争が生じやすくなります。

契約書は将来の金銭の動きを確定させる文書です。
金額が定まらなければ、経済的責任も定まりません。


6.業務範囲(What)― 責任の輪郭を描く

契約における紛争の多くは、業務範囲の認識の違いから生じます。

「そこまでやるとは思わなかった」

この言葉は、サービス契約だけでなく、売買契約でも起こります。

サービス取引の場合

  • どこまで実施するのか
  • 成果物は何か
  • 修正回数は何回か
  • 保守は含むのか

商品取引(売買)の場合

  • 型番・品番は何か
  • 数量はいくつか
  • 品質基準は何か
  • 仕様はどこに定めるのか

業務範囲とは、

何を、どの仕様で納めれば履行完了といえるのか

を定めることです。

ここが明確であれば、履行の完了を判断できます。
曖昧であれば、解釈の幅が生じます。


7. 期間(When)― 責任の持続時間を決める

期間も重要です。

  • 契約期間はいつからいつまでか
  • 履行期限は何日か
  • 自動更新はあるか
  • 解約予告期間は何日前か

同じ業務でも、
短期契約と長期契約では事業上の意味が異なります。

期間とは、責任が続く長さを確定する要素です。

ここが曖昧であれば、終了時期や更新条件をめぐる争いが生じやすくなります。


8. 議事録が契約力を鍛える理由

議事録を書くという行為は、

曖昧な議論を具体化する訓練です。

  • 数字にする
  • 日付にする
  • 仕様を明確にする

この積み重ねが、契約設計力を育てます。

議事録の精度が高い人は、契約書も締まります。

逆に、議事録がぼんやりしていれば、契約書もぼんやりします。


9. まとめ

良い法的文書を作れる人は、
条文を暗記している人ではないと思います。

金額を具体的に定められる人。
業務範囲を明確に区切れる人。
期間を確定できる人。

この三点を固められる人です。

また、
金額・業務範囲・期間を明確にできなければ、
雛形の空欄さえ正確に埋めることはできません。

契約書の作成とは、取引を具体化することだからです。

そしてその基礎中の基礎が、議事録です。

議事録で

  • 数字を確定する
  • 範囲を限定する
  • 期限を明示する

この訓練を積んでいなければ、
契約書は形だけ整えられても機能しません。

契約書ドラフティングの第一歩は、
良い議事録を書くこと。

そこに、法的文書作成の土台が詰まっているのです。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


🔎 参考記事

ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


【ご質問受付中】

「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。

また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【契約書のトリセツ】規程と規定の違いから考える「言葉の解像度」前のページ

関連記事

  1. ビジネス法務

    【契約書のトリセツ】契約のやめ方

    1. はじめに「すみません、来月…

  2. ラジオ

    「契約書に強くなる!ラジオ」2025年2月

    ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。ビジネス契約書専門の行…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ご連絡先

行政書士大森法務事務所
home@omoripartners.com
048-814-1241
〒330-0062
埼玉県さいたま市浦和区仲町2-5-1-B1
▼契約書類作成
▼セミナー講師依頼
(契約書、ビジネス法務、コンプライアンス)
▼台本作成
(研修動画、ナレーション、ラジオ番組)

stand.fm『契約書に強くなる!ラジオ』【週2回(水・日)更新】
FM川口『ちょいワルMonday200』【毎月第2第4月曜日19:00~生放送】
2026年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728 
PAGE TOP