ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.その契約書、「中身」を読む前に違和感ありませんか?
- 2.ダメな契約書は「見た目」でほぼ見抜けます
- 3.「一見ちゃんとしてそう」なのに危険な契約書
- 4.なぜ「見た目」に問題が出るのか?
- 5.「見た目」で避けられたはずのトラブル
- 6.まとめ
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.その契約書、「中身」を読む前に違和感ありませんか?
契約書を渡されたとき、
こんな感覚を覚えたことはありませんか?
- なんとなく読みにくい
- 途中で言葉が変わっていて混乱する
- 一部の条文だけ異様に長い
- 見た目が雑で、読む気が失せる
多くの人は、
「まあ、細かいことは専門家に聞かないと分からないし…」
と、その違和感を飲み込んでしまいます。
ですが――
その“違和感”こそが、実は一番正確な危険センサーなのです。
2.ダメな契約書は「見た目」でほぼ見抜けます
ダメな契約書は、内容を精査する前に、見た目でほぼ判断できます。
具体的には、次の3点です。
- 表記の揺れが激しい
- 条文のバランスが不自然
- 書面としての見栄えが悪い
これは感覚論ではありません。
この仕事をはじめて通算で20年、
もしかすると数千単位の契約書を見てきた実体験からの「選球眼」です。
3.「一見ちゃんとしてそう」なのに危険な契約書
実務でよくあるのが、こんなケースです。
- 表紙もあり、条番号も振ってある
- それなりに長文で「ちゃんとしてそう」
- でも、読んでいると妙に引っかかる
このタイプの契約書、
実は一番トラブルを生みやすいです。
理由はシンプルで、
「ちゃんとしている風」に見せることと
「ちゃんと設計されている」ことは、全く別だからです。
4.なぜ「見た目」に問題が出るのか?
① 表記の揺れが示すもの:切り貼り契約書の危険性
例えば、契約書の冒頭で、
「甲が乙に対し行う○○業務(以下『本件業務』という)」
と定義しているにもかかわらず、
- 第3条:本件委託業務
- 第10条:本業務
- 第12条:当該業務
- 第25条:本件業務
…と、呼び方がバラバラ。
これは典型的な「表記の揺れ」です。
なぜ起きるのか?
- 複数のひな形を切り貼りしている
- 全体を通した見直しをしていない
- 専門家チェックが入っていない
何が危険なのか?
- 契約書全体の一貫性が崩れる
- 「結局、どれが同じ概念なの?」と解釈争いが起きる
- 不利な解釈を押し付けられる余地が生まれる
表記の揺れ=設計思想がない契約書
と考えてほぼ間違いありません。
② アンバランスな条文が示すもの:リスク押し付けのサイン
次に多いのが、
条文の分量が極端にアンバランスな契約書です。
- 他の条文:3〜4行
- 損害賠償条項:30行
- 契約不適合責任:やたら詳細
- 違約金条項:異常に厳しい
こうした契約書からは、
強烈なメッセージが読み取れます。
「リスクは全部、相手に背負わせたい」
もちろん、
反社会的勢力条項や秘密保持条項のように
双方対等に規定すべき条文は例外です。
しかし、
利害が真正面から衝突する条項だけが異様に厚い場合、
その契約書はかなり警戒すべきです。
③ 見栄えの悪さが示すもの:やっつけ仕事の正体
最後は、見栄えです。
- フォントが統一されていない
- 明朝とゴシックが混在
- 改行・インデントがぐちゃぐちゃ
- 箇条書きの体裁が崩れている
これは単なる「美的問題」ではありません。
見栄えが悪い契約書の背景
- 上司に言われて急造
- ネットから拾ってきただけ
- 誰もチェックしていない
- 「とりあえず形にした」
つまり―
契約書として最も重要な「確認」との工程が省略されている
可能性が極めて高いのです。
5.「見た目」で避けられたはずのトラブル
実務の現場では、
- 表記の揺れから解釈が割れ、紛争化
- アンバランスな条文で一方的に責任追及
- 雑な契約書ゆえに、いざという時に役に立たず社内外で炎上
こうしたケースを、何度も見てきました。
逆に言えば、
契約書の見た目をチェックするだけで、避けられたトラブルも非常に多い
ということです。
6.まとめ
今日のポイントを整理します。
- 表記の揺れが多い契約書は危険
- 条文がアンバランスな契約書は要注意
- 見栄えの悪い契約書は、作り手の姿勢が透ける
契約書は、
トラブル対応マニュアルではなく、取引の設計図です。
設計図が雑なら、
完成する建物も危ういのは当然です。
実務を重ねるほど、
見た目が整った契約書ほど、中身も整理されている
という傾向を強く感じます。
逆もまた然りです。
だからこそ―
契約書は、内容以前に「読める」「理解できる」形であるべきと考えています。

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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