※本記事は、実務でのご相談内容や取引環境の変化を踏まえ、
2025年12月30日に内容を見直し、加筆修正した【2026年版】です。
ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.契約書は「どちらが出すのがマナー」なのか?
- 2.契約書を出す「マナー」は存在しない
- 3.契約自由の原則とは何か
- 4.「マナー」を気にしすぎて動けなくなるケース
- 5.契約書は「先制攻撃」が圧倒的に有利
- 6.「誰が出すか」より「誰が土俵を作るか」
1.契約書は「どちらが出すのがマナー」なのか?
「ビジネスにおいて契約書が重要なことは論を俟たない。
では、売主(お金を受け取る側)、買主(お金を支払う側)、
どちらから契約書を出すのが“マナー”なのでしょうか?」
このようなご質問を、実務の現場でしばしばいただきます。
果たして、
契約書を出す側について、
いわゆる「マナー」のようなものは存在するのでしょうか。
2.契約書を出す「マナー」は存在しない
まず、この問いに対する答えを整理しておきます。
契約書をどちらが出すべきか、という意味での
「マナー」は存在しません。
その理由は、
契約実務の大前提となる
「契約自由の原則」にあります。
3.契約自由の原則とは何か
契約自由の原則とは、簡単に言えば、
契約をするかどうか、
誰と契約するか、
どのような内容で契約するか、
どのような方式で契約するかは、
原則として当事者の自由に委ねられている
という法律(民法)の根本原則です。
つまり、
- 売主が契約書を出さなければならない
- 買主が出すのが礼儀である
といったルールは、
法律上も、実務上も存在しません。
そのため、
このようなご質問をいただいた場合、
私は多くの場合、
「立場やマナーを気にする必要はありませんよ」
とお答えしています。
4.「マナー」を気にしすぎて動けなくなるケース
実務では、
- 相手の方が事業規模が大きい
- 元請・下請の関係にある
- こちらが仕事を“もらっている”立場
といった事情から、
「こちらから契約書を出すのは失礼ではないか」
「生意気だと思われないか」
と、
契約書を出すこと自体をためらってしまうケースがあります。
しかし、
ここで受け身に回ってしまうことこそが、
契約実務における最大のリスクです。
5.契約書は「先制攻撃」が圧倒的に有利
契約書は、
先に出した側が圧倒的に有利です。
私は中学・高校時代にソフトテニスをしていましたが、
よくこんな例え話をします。
テニスでは、
サーブを打つ側が試合の主導権を握りやすい。ビジネスにおいても、
契約書を先に出した側が商談の主導権を握ります。
野球やサッカーでも同じです。
先制点を取った側が、
試合を有利に進めやすい。
ビジネスにおいても、「先制攻撃」は極めて重要です。
私自身の経験則になりますが、実務の感覚としては、
7〜9割程度は
最初に出された契約書(原案)をベースに妥結
しているように思います。
完全に「原案通り」でなくとも、
原案(ドラフト・たたき台)を起点として
交渉が進むケースがほとんどです。
6.「誰が出すか」より「誰が土俵を作るか」
そもそも、
契約書の原案とは、
作る側に有利な条件で設計されるものです。
相手から先に契約書を出されてしまった場合、
- 不利な条件を修正する
- 五分五分の条件に戻す
のが精一杯で、
テニスで言うところの
「リターンエース」は、
契約交渉ではほとんど期待できません。
だからこそ、
「先に契約書を出す」
=土俵そのものと、
そこで適用されるルールを決める行為
だと考える必要があります。
実務で時折、
「今回は相手から契約書が出てきたので、
こちらでコストをかけて契約書を作らずに済みました。
ラッキーでした。」
というお話を耳にします。
しかし、
ここまでお読みいただいた方であれば、
これがいかに危険な発想か、
ご理解いただけるはずです。
契約書は、
お互いの利害が一致した
「妥協点」を文章に落としたものでもあります。
受け身の姿勢で契約交渉に臨むことだけは、
ぜひ避けてください。
土俵を作り、ルールを決める。
ここにこそ、収益性を高めるための肝があります。

【音声解説】
本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。
【ご質問受付中】
「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
本ブログや音声配信(『契約書に強くなる!ラジオ』)で取り上げます。
また、契約書の作成・見直し、契約実務の整理、
セミナー・講座のご相談(オンライン可)にも対応しています。
上部の「問い合わせフォーム」よりご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










この記事へのコメントはありません。