契約書

契約書は誰が出すのが「マナー」なのか?【2026年版】

※本記事は、実務でのご相談内容や取引環境の変化を踏まえ、
2025年12月30日に内容を見直し、加筆修正した【2026年版】です。

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次


1.契約書は「どちらが出すのがマナー」なのか?

「ビジネスにおいて契約書が重要なことは論を俟たない。
では、売主(お金を受け取る側)、買主(お金を支払う側)、
どちらから契約書を出すのが“マナー”なのでしょうか?

このようなご質問を、実務の現場でしばしばいただきます。

果たして、
契約書を出す側について、
いわゆる「マナー」のようなものは存在するのでしょうか。


2.契約書を出す「マナー」は存在しない

まず、この問いに対する答えを整理しておきます。

契約書をどちらが出すべきか、という意味での
「マナー」は存在しません。

その理由は、
契約実務の大前提となる
「契約自由の原則」にあります。


3.契約自由の原則とは何か

契約自由の原則とは、簡単に言えば、

契約をするかどうか、
誰と契約するか、
どのような内容で契約するか、
どのような方式で契約するかは、
原則として当事者の自由に委ねられている

という法律(民法)の根本原則です。

つまり、

  • 売主が契約書を出さなければならない
  • 買主が出すのが礼儀である

といったルールは、
法律上も、実務上も存在しません。

そのため、
このようなご質問をいただいた場合、
私は多くの場合、

「立場やマナーを気にする必要はありませんよ」

とお答えしています。


4.「マナー」を気にしすぎて動けなくなるケース

実務では、

  • 相手の方が事業規模が大きい
  • 元請・下請の関係にある
  • こちらが仕事を“もらっている”立場

といった事情から、

「こちらから契約書を出すのは失礼ではないか」
「生意気だと思われないか」

と、
契約書を出すこと自体をためらってしまうケースがあります。

しかし、
ここで受け身に回ってしまうことこそが、
契約実務における最大のリスク
です。


5.契約書は「先制攻撃」が圧倒的に有利

契約書は、
先に出した側が圧倒的に有利です。

私は中学・高校時代にソフトテニスをしていましたが、
よくこんな例え話をします。

テニスでは、
サーブを打つ側が試合の主導権を握りやすい。

ビジネスにおいても、
契約書を先に出した側が商談の主導権を握ります。

野球やサッカーでも同じです。
先制点を取った側が、
試合を有利に進めやすい。

ビジネスにおいても、「先制攻撃」は極めて重要です。

私自身の経験則になりますが、実務の感覚としては、
7〜9割程度は
最初に出された契約書(原案)をベースに妥結

しているように思います。

完全に「原案通り」でなくとも、
原案(ドラフト・たたき台)を起点として
交渉が進むケースがほとんどです。


6.「誰が出すか」より「誰が土俵を作るか」

そもそも、
契約書の原案とは、
作る側に有利な条件で設計されるものです。

相手から先に契約書を出されてしまった場合、

  • 不利な条件を修正する
  • 五分五分の条件に戻す

のが精一杯で、
テニスで言うところの
「リターンエース」は、
契約交渉ではほとんど期待できません。

だからこそ、

「先に契約書を出す」
=土俵そのものと、
そこで適用されるルールを決める行為

だと考える必要があります。

実務で時折、

「今回は相手から契約書が出てきたので、
こちらでコストをかけて契約書を作らずに済みました。
ラッキーでした。」

というお話を耳にします。

しかし、
ここまでお読みいただいた方であれば、
これがいかに危険な発想か
ご理解いただけるはずです。

契約書は、
お互いの利害が一致した
「妥協点」を文章に落としたものでもあります。

受け身の姿勢で契約交渉に臨むことだけは、
ぜひ避けてください。

土俵を作り、ルールを決める。
ここにこそ、収益性を高めるための肝があります。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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