ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1. はじめに
最近「出向」という言葉をよく耳にします。
忙しい会社を応援したり、人材を融通したり──。
本来、出向は“助け合い”を前提にした制度です。
しかし、使い方を誤ると
名義貸し・偽装請負・労働者供給と評価される可能性があり、思わぬトラブルにつながります。
今回は、初心者向けに
出向の基本と、最低限押さえるべき法的ポイント
をシンプルにまとめます。
2. 出向とは?まず知っておきたい3つの基本
出向は、ざっくり言うと:
「社員の雇用は出向元に残したまま、一定期間だけ他社で働く仕組み」
次の3点が基本となります。
✔ 出向の3つの基本
1️⃣ 雇用は出向元に残る
給与の支払い・身分関係は出向元が維持します。
2️⃣ 仕事の指示は出向先が行う
出向先が日々の業務指示を行います。
ただし、出向元も基本的な服務規律に関する指導を残すのが一般的です。
3️⃣ 出向者本人の同意が必要
出向は人事上の協力制度であり、本人の理解と同意が前提となります。
3. 出向してよいケース・注意が必要なケース
出向は目的によって、
適切な運用かどうかが大きく分かれます。
✔ 出向が“適切”と判断されやすいケース
- 繁忙期の一時的な応援
- 災害・復旧対応など緊急の協力
- グループ会社間の人材交流
- 専門性のある人材を短期で貸し借りする場合
- 出向先でも安全管理が確保できる場合
いずれも、制度本来の趣旨である
「協力」「育成」「助け合い」に沿っています。
✔ 出向が“注意を要する”と判断されるケース
以下の場合は、リスクが高くなります。
- もっと稼ぎたいから他社名義で働く
- 働き方改革の時間規制を避けるため形式的に出向扱いにする
- 出向元の関与が薄く、実態として労働者派遣に近い
- 指揮命令が事実上どちらか一方に偏りすぎている
- 出向者が指揮命令系統を理解していない
こうしたケースは、行政判断として
「名義貸し」「偽装請負」「労働者供給」と評価される可能性があり、慎重な対応が必要
です。
契約書があっても、目的が不適切な場合は安全とは言えません。
4. 出向契約書で最低限整理するポイント
出向契約書は、特別に難しく書く必要はありません。
大切なのは、責任の分担を明確にしておくことです。
✔ 出向契約書に必ず入れたい5つの点
1️⃣ 目的
なぜ出向が必要なのか(応援・育成など)。
2️⃣ 期間
いつからいつまでか。延長の手続きも明記。
3️⃣ 給与・社会保険の負担
誰が何を負担するか(通常は出向元)。
4️⃣ 指揮命令権の所在
日々の業務指示は出向先。ただし出向元も服務規律の基本指導を行う。
5️⃣ 出向者本人の同意
内容を理解し、納得したうえで出向に参加することが大切です。
これだけでも、
「正しい出向として運用しています」と説明しやすくなります。
5. まとめ
- 出向は「助け合い」「応援」「育成」を目的とする制度
- 稼ぎ目的・規制逃れの出向はトラブルを招くリスクが高い
- 出向の3つの基本(雇用元・指揮命令・本人同意)が核
- 契約書では目的・期間・負担・指揮命令・同意の5点を整理する
- 出向は“人を貸す制度”ではなく責任関係を整理して協力する制度

【音声解説】
本記事の内容は、
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【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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