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【契約書のトリセツ】“仲間だからOK”は通用しない!外注先への資料共有が契約違反になる!?

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


本シリーズ「契約書のトリセツ」では、契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。

「この資料、外注さんにも共有しておいて」

──プロジェクトの現場ではよくある光景ですが、
その一言が、契約違反につながるおそれがあるとしたら、どうしますか?

プロジェクトをチームで進める中では、社外メンバー(外注先や協力会社)と密に連携する場面が多くなります。
しかし、契約書の世界では「一緒に動いている仲間」=「契約の当事者」とは限りません。

今回は、「外注先や協力会社が“契約上は第三者”になるとはどういうことか」、
そして、資料の共有が違反になるリスクとその防ぎ方を、条文例を交えて解説します。


契約書の条文では、「第三者に開示してはならない」「第三者に損害を与えた場合」など、
さまざまな文脈で「第三者」という言葉が頻出します。
では、そもそも「第三者」とは誰のことを指すのでしょうか?

✅ 「第三者」は“契約の当事者以外”というのが基本

法務の実務上、一般に「第三者」とは──

その契約の当事者以外のすべての者(個人・法人・団体)

を指します。

契約当事者とは、契約書において「甲」「乙」などとして名指しされている者です。
そのため、たとえ実務上は深く関与している関係者(外注先・子会社・関連会社・プロジェクト協力者)であっても、
契約に名前が出ていなければ「第三者」として扱われるのが原則です。

✅ 用語としての「第三者」は、文脈により変動する

ただし、法律上の「第三者」という言葉は、文脈によって少しずつ意味が異なる場合があります。たとえば:

  • 民法の「第三者」(詐害行為取消しや二重譲渡)
  • 債権譲渡における「第三者」
  • 不法行為における「第三者への損害」
  • 秘密保持義務における「第三者への開示」禁止条項

このように、「誰を第三者とみなすか」は、契約書や法律の目的・趣旨によって変わることがあります。

本記事ではこのうち、秘密保持義務や情報の取り扱いに関する文脈における「第三者」を扱っています。

✅ 契約書では「第三者」の定義を明記することも

こうした曖昧さを防ぐために、契約書では次のように「第三者」の定義を明示しておくこともあります。

✅【定義条項の例】
「本契約における『第三者』とは、甲および乙以外のすべての個人・法人をいう。」

✅【応用例(関係会社・再委託先を含まない)】
「ただし、甲乙双方の親会社、子会社、関連会社、または再委託先であり、当該当事者が秘密保持義務を課している者は、第三者に含まれないものとする。」


秘密保持契約(NDA)や業務委託契約では、以下のような条文が定番です。

✅【秘密保持義務の基本例】
「乙は、甲の書面による事前承諾なく、本契約に関連して知り得た一切の情報を第三者に開示、漏洩、使用してはならない。」

この条文が入っている契約において、
乙(受注者)が社外の外注先に資料を渡した場合──
事前に甲(クライアント)の承諾がなければ契約違反になる可能性が高いです。


これは、契約トラブルの温床になりやすい誤解です。

「プロジェクトメンバーなんだから、資料共有くらい当たり前でしょ」

その感覚、現場ではよく分かります。
しかし、法的には、契約書に名前のない人は“部外者”=第三者です。

たとえば──

  • クライアント(甲)と元請け企業(乙)が業務委託契約を結んでいる
  • 乙が、外部のフリーランスや協力会社を巻き込んでプロジェクトを進めている

この場合、その社外の協力者(フリーランスや協力会社)は、甲にとって契約関係がない「第三者」とされます。


では、外注先や協力会社にも資料を共有できるようにするには?

その方法が、「再委託条項」です。

✅【条文例①:承諾制】
「乙は、本業務の全部または一部を第三者に再委託する場合には、事前に甲の書面による承諾を得るものとし、当該第三者に対しても本契約と同等の秘密保持義務を課すものとする。」

✅【条文例②:包括的に許容】
「乙は、乙が適切と認める第三者に本件業務を再委託できるものとし、当該第三者に対し本契約と同等の秘密保持義務を課すものとする。ただし、乙は再委託先の行為について甲に対して責任を負う。」

このように、「再委託がOKであること(「書面による承諾」等の前提条件の有無も)」+「秘密保持義務を課すこと」+「責任を負うこと」の3点セットを明記するのがポイントです。


次は、受け取る側──つまり外注先の立場から見てみましょう。

よくあるのが、元請けからの一言。

「これ、クライアントからもらったやつだけど、ちょっと確認しておいて」

──でも、ちょっと待ってください。
それ、本当に受け取ってもいいものですか?

✅ NDAなしでの資料受領は、原則NG

契約が整っていない状態で、
「クライアント資料」や「社外秘の技術情報」などを受け取ると、
のちのちトラブルの当事者にされるおそれがあります。

✅ 正しい対応は「受け取らないこと」

実務での原則は、はっきりしています。

✅「契約もNDAもないのに“秘密っぽい資料”を受け取るのは、トラブルへの片道切符」

渡されそうになったときは、こう返しましょう:

  • 「この資料、私が受け取っても問題ないものでしょうか?」
  • 「NDAを交わしてから受領しますね」
  • 「念のため、契約的にクリアになってから改めてお願いします」

✅ それでも受け取ってしまった場合のリスク回避行動

  • メールやチャットで「誰から・どの目的で」受け取ったかを記録に残す
  • 明らかにおかしいと感じたら、その場で開封・閲覧しない
  • 受領後すぐに「この資料について問題ないか確認したい」と申し出る

※ただし、このような対応が必要になる時点で、そもそも契約体制に問題があると考えるべきです。


✅ 「仲間だからOK」は、契約上では通用しない
✅ 外注先や協力会社が“第三者”になることを常に意識する
✅ 再委託条項や秘密保持義務で、情報共有のルールを明確にする
✅ 外注側も、「契約なしで資料は受け取らない」姿勢を持つ

仕事での関係性がどれだけフラットでも、契約当事者と第三者の「壁」があります。

仲間を守るためにも、まずは契約関係の交通整理を行う。
その意識が、プロジェクト全体の信頼を支える力になります。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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