ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。
目次
- 1.話し合いで解決すれば、契約書はいらない?
- 2.話し合いは必要。ただし“ルールがない話し合い”は危険
- 3.「話し合い万能主義」が生むズレ
- 4.声の大きさと力関係で結果が決まる
- 5. “言った・言わない”で話し合いが止まる
- 6.お金を払う側が強くなる構造
- 7.契約書は“裁判のため”だけではない
- 8.まとめ|契約書は「自分を守るための交渉ツール」
- 🔎 参考記事
本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。
1.話し合いで解決すれば、契約書はいらない?
契約書なんてなくても、最終的には話し合えばいい。
そう思ったことは、ありませんか?
日本では昔から、「話し合いで解決するべきだ」という価値観が強く、
- 契約書は形式的なもの
- 揉めたら協議すればいい
こう考える方も、今でも一定数いらっしゃいます。
では本当に、「話し合い」があれば契約書は不要なのでしょうか。
2.話し合いは必要。ただし“ルールがない話し合い”は危険
話し合い自体は重要です。むしろビジネスでは必ず発生します。
ただし、ルールがない状態での話し合いは、極めて危険です。
契約書とは、その「話し合いの土台となるルールブック」です。
これがあるかどうかで、交渉の質は大きく変わります。
3.「話し合い万能主義」が生むズレ
実務では、こんな場面がよくあります。
- 「契約書はあとでいいから、まずは進めよう」
- 「細かいことは後で話し合えばいい」
- 「信頼関係があるから大丈夫」
一見、合理的にも見えますよね。
ただ、この状態でトラブルが起きるとどうなるか。
結局、 すべて“その場の話し合い”で決めることになります。
そしてここで問題になるのが、「話し合い=公平」ではないという現実です。
4.声の大きさと力関係で結果が決まる
契約書がない場合、何が起きるか。
それは、力関係で結論が決まるということです。
例えば、
- 元請け vs 下請け
- 発注側 vs 受注側
この関係では、どうしても強い側の意見が通りやすくなります。
さらに言えば、
- 声が大きい人
- 押しが強い人
こういった要素でも結果が左右されます。
これらはもはや「話し合い」ではなく、実質的には力の勝負です。
だからこそ、立場が弱い側ほど契約書が必要なのです。
契約書があるだけで、議論のスタートラインが「ルールベース」になります。
5. “言った・言わない”で話し合いが止まる
もう一つ、よくあるのが 「言った・言わない」で話が止まるパターンです。
契約書がない状態で話し合いをすると、
- そんな約束はしていない
- 私はそう聞いていない
といったやり取りが発生します。
つまり、そもそも前提が共有されていないのです。
この状態では、話し合いは前に進みません。
一方で契約書があれば、「ここに書いてあります」この一言で、前提が揃います。
口約束だけでは、話し合いのスタートラインすら共有できない。
ここに大きなリスクがあります。
6.お金を払う側が強くなる構造
もう一つ、現場でよく起きるのが「お金を払う側が強い」という現実です。
例えば、100万円の商品を販売したが、相手がなかなか支払わない。
「払いたいんだけど今は厳しい」と言われ続ける。
こうなると、
- 回収したい
- でも関係は壊したくない
という板挟みになります。
最終的に、「じゃあ、もう85万円でもいいです……」
といった判断を迫られるケースもあります。
これは実質的に、値引きを強制されているのと同じです。
契約書があると、「契約では100万円と定めています」と、
明確な根拠を持って主張できるようになります。
もちろん、契約書があれば100%回収できるわけではありません。
しかし、交渉の土台が“感情”ではなく“ルール”になるこの差は非常に大きいです。
7.契約書は“裁判のため”だけではない
契約書というと、「裁判の証拠になるもの」というイメージが強いかもしれません。
もちろん、それも重要です。
ただ、実務ではそれ以上に重要なのが、話し合いの場での“交渉材料”になることです。
実際の流れはこうです。
- 1.まず当事者間で話し合い
- 2.それでも解決しない場合に法的手続
つまり、ほとんどの問題は“話し合いの段階”で決まるのです。
例えば、相手が話し合いに応じない場合。
契約書の該当条項を引用して、書面で通知するという方法もあります。
契約書があるからこそ、主張に根拠を持たせることができるという点が重要です。
ただし、こうした書面対応や手続については、
無理に自己判断せず、専門家に相談することをおすすめします。
8.まとめ|契約書は「自分を守るための交渉ツール」
今回のポイントをまとめます。
- 話し合いは重要
- しかし、ルールのない話し合いは危険
- 力関係や声の大きさで結果が決まりやすい
- 「言った・言わない」で話が止まる
- お金を払う側が強くなる構造がある
だからこそ、契約書は“交渉を有利に進めるためのツール”となり得ます。
また、日々の取引実務の中で発生する、
- 値引き交渉
- クレーム対応
- 支払い条件
こうした場面での 自分を守るための“ルールブック”としても機能します。
契約書は、遠い世界の話ではありません。
むしろ、 日々の商談や取引実務を支える現場の武器です。
ぜひ一度、お手元の契約書を見直してみてください。
「これは自分を守ってくれる内容になっているか?」
この視点があるだけでも、見え方が大きく変わるはずです。

【音声解説】
本記事の内容は、
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▽ 音声はこちら(stand.fm)
🔎 参考記事
ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。
【執筆者】
ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
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