ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約に書いてないけど守るべき?──“法令>契約”の二層構造を追う!

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1. はじめに

「契約に書いてないから、やってもいいでしょ?」
―そんな一言、聞いたことはありませんか?

しかし実際には、契約書よりも“上にあるルール”が存在します。
それが「法令 > 契約」という原則です。

契約の世界は“自由”が基本ですが、その自由には“限界”があります。
今日は、法律と契約の関係を「二層構造」として整理しながら、
契約実務でどんな考え方をすればよいのか、わかりやすく解説します。


2. 契約は「話し合いで決める自由なルール」

契約書とは、当事者どうしが約束を言葉にしたもの。
「納期」「報酬」「支払方法」など、合意すれば自由に決めて構いません。

この「自由に決めていい」という考え方は、民法の任意規定に基づいています。

任意規定とは――

「特に決めていなければ、こう扱うよ」という“初期設定ルール”。

つまり、話し合って合意すれば変更してOK。
民法は「話し合いを尊重する」自由な法律なのです。


3. でも、変えちゃいけないルールもある

一方で、どんなに合意しても変えられないルールも存在します。

たとえば:

  • 飲酒運転をしてはいけない
  • 最低賃金を下回ってはいけない
  • 税金を納めなければならない

これらを「契約でOKにした」としても、無効です。
社会全体の安全や公正を守るために定められた強行規定だからです。

「強行」という言葉には“強制力がある”という意味があり、
法律の中でも絶対に外せないルールを指します。

💡ちなみに、民法の中にも強行規定はあります。
たとえば
「公序良俗に反する契約は無効」
「契約のない保証契約は無効」
などがこれにあたります。
民法の中にも「自由に決められる部分」と「自由に決めてはいけない部分」が混在しています。
その線引きを理解しておくことが、契約実務の第一歩です。
すべてが自由に変えられるわけではありません。


4. 「矛盾」ではなく「二層構造」

ここで多くの人が思うのが、この疑問。

「自由って言うけど、結局ダメなこともあるんでしょ?」

たしかに、一見するとダブルスタンダードに見えます。
でも実は、矛盾しているのではなく、二層構造で支え合っているんです。

たとえるなら、建物のようなものです。

  • 1階(任意規定)…自由に動けるフロア。ビジネスや契約の“設計自由度”を担う。
  • 2階(強行規定)…社会全体の安全を支える天井・骨組みのような存在。

任意規定は“自由を使う層”。
強行規定は“自由を守る層”。

この二層構造があるからこそ、
私たちは安心して「自由な契約」ができるのです。


5. 「法令>契約」が意味すること

「契約に書いていないからOK」ではなく、
「法律で禁止されているなら、契約でもNG」。

契約の自由は“法の中での自由”。
つまり――

契約は、法の上に立つのではなく、法の中で成り立つ。

これが、「法令>契約」という原則です。

契約書に何を書こうと、
法令に反する内容は当然に無効となります。


6. 契約書に書いておきたい“予防線”

実務では、「書いてないなら自由」と誤解されやすいもの。
だからこそ、法令を前提にした約束を契約書に明文化しておくことが重要です。

これを「予防線」として入れておくことで、
トラブル時に“ルールの軸”を明確にできます。


7. 【条文例】法令遵守と信頼関係の維持

(法令遵守)
甲および乙は、本契約の履行にあたり、関係法令を遵守し、法令に違反する行為を行ってはならない。

(信頼関係の維持)
甲または乙が法令に違反した場合、または社会的信用を損なう行為をした場合、
相手方は催告なく本契約を解除できる。

この2条を入れておくだけで、
「契約にも、法律にも反している」という判断がしやすくなります。


8. まとめ

契約の自由と法律の制約――。
一見、矛盾しているように見える2つの関係は、
実は**自由を支える“二層構造”**として共存しています。

契約は、自由を形にするルール。
法令は、その自由を壊さないためのルール。

自由を守るために、ルールがある。
だからこそ、「契約に書いていないこと」にこそ、法令の存在を意識しておきたいですね。


【音声解説】

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【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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