ビジネス法務

【契約書のトリセツ】契約書は縦書き?横書き?

ビジネス契約書専門の行政書士(特にIT&クリエイター系の契約書に強い)
ビジネス法務コーディネーター®の大森靖之です。

目次

本シリーズ「契約書のトリセツ」では、
契約書にまつわる基本的な知識や実務上の注意点を、
初心者の方にもやさしく、わかりやすく解説しています。
毎回ひとつのテーマを取り上げ、現場で役立つ視点をお届けします。


1.契約書は縦書きと横書き、どちらが正しいのでしょうか?

契約書についてご相談を受ける中で、意外と多いのがこの質問です。

  • 「縦書きの方が正式っぽいですよね?」
  • 「横書きだと軽く見えませんか?」

六法が縦書きであることもあり、
なんとなく「縦書きが正解なのでは」と感じる方も多いようです。

では、実務ではどう考えればよいのでしょうか。


2.縦書きでも横書きでも問題ありません。重要なのは中身です。

契約書は、縦書きでも横書きでも有効です。

これは民法にある「契約自由の原則」によるものです。
その中には「形式の自由」も含まれており、どのような書き方をしてもよいとされています。

つまり、「縦書きだから有効」「横書きだから無効」といったことはありません。
ここで大事なのは、契約書は見た目ではなく、ルールそのものだということです。


3.「縦書きの方がちゃんとして見える」という感覚

実務では、

  • 「縦書きの方が格式がある」
  • 「横書きだとカジュアルすぎる」

という印象を持たれることがあります。
確かに、縦書きには伝統的な雰囲気があります。
一方で、横書きは普段の書類に近いため、違和感なく読めるというメリットがあります。

ここで一度立ち止まって考えてみてください。
契約書は「見た目の印象」を競うものではありません。
あくまで、取引のルールを定めるものです。

どれだけ立派な見た目でも、内容が曖昧であれば意味がありません。


4.契約書は「取引の設計図」である

契約書の本質は、取引のルールを設計することです。
そしてこのルールは、原則として法律より優先されるという点が重要です。

だからこそ、縦書きか横書きかよりも、
何が書いてあるかの方が圧倒的に重要になります。


5.実務ではなぜ横書きが主流なのか

現場感覚としては、契約書のほとんどは横書きです。

理由はシンプルで、

  • 数字をそのまま書ける
  • アルファベット表記に強い
  • 普段の書類と同じで読みやすい

といった実務的な利便性です。

特に最近は、

  • 会社名がアルファベット
  • 商品が英数字表記
  • システム連携前提

といったケースが増えているため、横書きの方が自然です。

■ 実務あるある:雛形コピペで事故る「漢数字問題」

古い縦書きの雛形をそのままWordに貼り付けて、

  • 「金壱萬円也」
  • 「参拾万円」

といった表記を、そのまま残してしまうケースです。

横書き契約書では通常、

  • 10,000円
  • 300,000円

といった算用数字を使います。これを放置すると、

  • 読みづらい
  • 統一感がない
  • 修正漏れが起きやすい

といった問題が発生します。
さらに、レイアウト崩れも起きやすくなります。

雛形を使う際は、「中身だけでなく表記も整える」ことが重要です。

■最新事情:電子契約の普及で「横書き」が事実上の標準に

現在、契約実務は電子契約に移行しつつあります。

電子契約では、

  • PDFでの閲覧
  • PCやスマートフォンでの確認
  • スクロールして読む

といった前提になります。
このとき、縦書きはどうしても読みにくくなります。

一方で横書きは、

  • 自然にスクロールできる
  • 数字や英語もそのまま読める

という点で非常に相性が良いのです。
結果として、横書きが事実上のスタンダードになっているように思われます。

■ ワンポイント:紙で契約書を作るときの「綴じ方」

電子契約が主流とはいえ、紙で契約書を作る場面もまだあります。
その際に迷うのが「綴じ方」です。

基本はシンプルです。

  • 横書き → 左綴じ
  • 縦書き → 右綴じ

です。

製本(袋とじ)やホッチキス止めの際も同様です。

また、契約書のページをまたぐ部分には「契印(割印)」を押すことで、
改ざん防止の意味を持たせます。

なお、ここで一つ実務的な注意点があります。

ホッチキスは便利ですが、長期間保管していると金属部分が錆びて、紙を腐食させてしまう可能性があります。
特に長期保存が前提となる契約書では、こうした点も意識しておく必要があります。

その点、綴り紐を使ったいわゆる和綴じは、こうした劣化リスクがありません。
昔から使われてきた方法には、保存という観点でも合理性があるといえるでしょう。

こうした細かい実務も、意外と重要なポイントです。


6.まとめ

ここまで見てきたように、契約書は、縦書きでも横書きでも問題ありません。
実務では横書きが主流になっていますが、それはある種の時代背景によるものに過ぎません。
つまり、「どちらが正しいか」という問いに対する答えはシンプルで、どちらでもよい、ということになります。

ただ、ここで視点を一歩進めていただきたいのです。
契約書は、見た目の“書式”を整えるためのものではありません。
ビジネスの中で「何をルールとして定めるか」を言語化したものです。

どの形式で書くかではなく、どんな条件で取引を行い、どんなリスクをどう分け合うのか。
その中身こそが本質です。
契約書は単なる書類ではなく、取引を動かす「設計図」そのものです。

この視点を持つだけで、契約書の見え方は大きく変わります。
これまで「難しそう」と感じていたものが、
「自分のビジネスを守るためのツール」として捉えられるようになるはずです。

次に契約書を手に取るときは、書式に迷うのではなく、
「この設計図で本当に大丈夫か」という視点で、ぜひ落ち着いて読み進めてみてください。
それが、ビジネスを守る一番確かな一歩になります。


【音声解説】

本記事の内容は、
音声配信『契約書に強くなる!ラジオ』でも解説しています。
▽ 音声はこちら(stand.fm)


🔎 参考記事

ここで触れている内容について、こちらの記事でも別角度で解説しております。
ご関心があれば、あわせてご覧ください。


【執筆者】

ビジネス法務コーディネーター®/行政書士 大森 靖之
現場で実際に使える判断基準を前提に、契約実務を整理しています。


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「この場合はどう考える?」「ここが気になる」
といったご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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